「親と子のメンタルヘルス」④ ~親のメンタルを守るには~

24/05/09まで

健康ライフ

放送日:2024/04/11

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ#家族

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24/05/09まで

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【出演者】
尾久:尾久裕紀(おぎゅう・ひろき)さん(大妻女子大学 教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

子育てで不安に襲われることもしばしば

――大妻女子大学教授、尾久裕紀さんに伺います。尾久さんは精神医学がご専門で、産業医として働く人のメンタル治療に携わり、また、大学と付属の中学・高校でも、学生や生徒さんの相談にものっていらっしゃいます。
今回のテーマは「親のメンタルを守るには」です。
子育てや教育など、親は悩みも多いと思いますよね……。

尾久:
そうですねえ。子育てをしていると悩みは尽きませんよね。子育ては多くの喜びを感じられる一方で、不安に襲われることもしばしばですね。まわりはうまくやっているように見えたりして、自分だけが取り残されているような気持ちになることもあるかもしれません。

――子どもの健康を守るためにも、親自身もメンタルを守ることが大事だ、ということですよね。

尾久:
はい。どの年代の子どもにとっても、親は大切な存在です。親が元気で安らかでいることが子どもの安定にもつながります。子どもは親の状態に影響を受けやすいので、親はストレスをため過ぎないことが重要です。

自分の、3つの変化に注意

――自分がストレスを抱えていないかどうか、チェックすることはできますか。

尾久:
はい。ストレスがたまっているかを知るためには、日頃から3つの変化に注意しておくといいと思います。

――3つの変化、どのようなものでしょうか。

尾久:
まず【睡眠】です。
例えば、寝つきがよくない、途中で目が覚める、朝起きたときに寝た感じがしない、そういったことですね。
2番目に【食欲】です。
食欲がわかない、食べてもおいしくない、反対に食べ過ぎる、過食が止まらない、などですね。
それから、3番目に【感情】です。
イライラを抑えることができない、子どもやパートナー、まわりの人に当たってしまう、不安である、など。
そういうようなときは、心がSOSのサインを出しているかもしれません。

――睡眠・食欲・感情、この3つの変化に注目するのはどうしてでしょうか。

尾久:
人間というのは、ストレスがたまったときにいろいろなサインを出します。これを「ストレス反応」というんですけれども、その中でも睡眠・食欲・感情にサインが出ることが多く、また非常にわかりやすいんですね。
ということで、この3つをいつも考えているといいと思います。

ストレスを抱え込んでいることに気付いたら

――ストレスを抱え込んでいる、ということに気付いたらですね、どう対処すればいいんでしょうか。

尾久:
まず1番目に、ストレスの原因がわかっていれば、その<ストレスから離れてしまう>ことです。
例えば、人間関係がストレスになっている場合は、その人間関係から距離を置くことですね。そうして1日温泉などに行く、などということも非常に有効になってきます。

2番目は、すでにあるストレスを減らすことなんですけれども、<まずは考え方を変える>方法です。
ストレスを増やす考え方というのがありまして、例えば考えすぎてしまう、寝る前もずっと考えてしまう、などですね。考えすぎる場合には、だいたい物事をネガティブ、否定的に考えていることが多いです。
ですのでストレスを減らすためには、まずは考えること自体をやめる、というのもひとつの方法です。それだけでだいぶ楽になります。
いずれにしてもひとりで考え込まないで、誰かに話す、ということもストレス軽減になります。

最後に、ストレス状態を和らげる方法なんですけれども、これはよくいわれている方法ですが、例えば深呼吸をするとか、軽い運動をするとか、好きなことをする、などですね。
特に<運動は非常におすすめ>で、不安や抑うつを軽減するということが研究でわかっています。

――ただ、親はなかなか自分の時間がとれないところもありますよね。

尾久:
【完璧にやろうとしない】ことが一番重要です。
こうあるべき、という考え方にとらわれないで、割り切れるところは割り切るようにします。例えば、食事の準備とか洗濯・掃除、こういうものの中で省けるところは省き、手を抜くところは手を抜いてください。家事は家族それぞれ、自分のことは自分でするように、というふうに促すようにするといいかもしれませんね。

――手を抜くことが大切だ、ということはわかるんですけども、手を抜くことに罪悪感を感じてしまうこともあるんでしょうね。

尾久:
そういう意味ではやはり、親は自分自身を責めすぎないようにすることが重要ですね。これまで自分ががんばってきたことを振り返って、ご自分の努力をきちんと認識する、ということが大事かと思います。自分自身を肯定することはご自分のセルフケアに役立つだけではなく、子どもにとってもよい手本になります。

――ただ、そのようなセルフケアでも気持ちが晴れない、うまくいかないケースもありますか。

尾久:
例えば“不調のサインが2週間以上続く”とか、あるいは“家事が手につかない”とか、“仕事に行く気が起きない”とか日常生活に影響が出ている場合には、病院やクリニックに相談することをおすすめします。

――ストレスともうまくつきあっていかないといけない、ということですね。

尾久:
そうですね。ただ、ストレスという言葉は、実は必ずしも悪いものではないんですね。ある程度のストレスとか緊張感は自分の行動をコントロールしたり、力を発揮するといういい影響もあるんです。
ですので、ストレスを避けるだけでなくて、うまくつきあうことをめざしてください。

――では最後に、今回のポイントをお願いします。

尾久:
ストレスとうまくつきあい、完璧にやろうとしない。


【放送】
2024/04/11 「マイあさ!」

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24/05/09まで

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