「親と子のメンタルヘルス」② ~いじめ・不登校にどう対応する?~

24/05/07まで

健康ライフ

放送日:2024/04/09

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ#家族

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24/05/07まで

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【出演者】
尾久:尾久裕紀(おぎゅう・ひろき)さん(大妻女子大学 教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

「いじめは許さない」明確に示す

――大妻女子大学教授、尾久裕紀さんに伺います。尾久さんは精神医学がご専門で、産業医として働く人のメンタル治療に携わり、また、大学と付属の中学・高校でも、学生や生徒さんの相談にものっていらっしゃいます。
今回のテーマは「いじめ・不登校にどう対応する?」です。
学校現場で、いじめは増えているんでしょうか。

尾久:
はい。文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校調査」の2022年度の結果をちょっと紹介いたします。
不登校の小中学生は過去最多の約29万件、前年度より22.1%も増えました。
いじめは小中高および特別支援学校で約68万件と、過去最多でした。

――「いじめ」は子どもたちに心理的な負担を与えるものですよね。

尾久:
そうなんです。いじめといいますのは子どもの心身に大きなストレスがかかります。長期的にいじめを受け続けますと、それがいわゆる「トラウマ」になって、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」という状態を発症する可能性があります。精神的なストレスから「うつ病」や「パニック障害」を起こすこともあります。
問題はですね、いじめの影響がその後何年間も続いてしまうんですね。いわゆる「後遺症」、こういう状態を発症するということです。場合によっては自殺につながることもあります。

――いじめは、私たちが子どものころから問題になっていたんですけれども、なくならないものなんでしょうか。

尾久:
最近のいじめは、いじめる側といじめられる側の関係が逆転しやすいんですね。誰でもいじめの対象になってしまう可能性があります。いじめるほうはゲーム感覚で行い、執ようで、陰湿化し、エスカレートしていきます。また、いじめることの罪の意識が低いですね。
一方、いじめられるほうは、誰にも相談できないことが多いです。
最近の傾向として、スマホやインターネットによるいじめが増えているのが特徴的です。

――いじめられているほうは、いじめられていることを誰にも相談しないということですけれども、自分から“助けて”と言えない子どもを守るために、どんなことをすればいいですか。

尾久:
最も大切なことは「子どもたちへの教育」です。なぜなら、いじめを防止するためには子ども同士の助け合いが必要だからです。
いじめの場面では、それを<見ている子>がたくさんいます。この見ている子の多くは、ただ<見ているだけの子>ですが、中には<いじめをやめさせようとする子>や、<やめさせたいと思っていても、それを行動に移せない子>がいます。
いじめを減らすカギは、この<いじめを見ている子たち>の意識や行動を変えることにあります。見ている子たちがいじめられている子を助ける、いじめをやめさせる行動を取ればいじめを減らせる可能性があるわけです。

――そのために、親や先生など大人がやるべきことは何でしょうか。

尾久:
まず、親が「いじめは許さない」、そういう姿勢を言葉と態度で明確に示すことが大事です。で、「いじめを止める行動」、あるいは「被害に遭っている子を守る行動」をとれるように、子どもたちをしっかりと見守ることが大切です。

――親が、いじめに対してきぜんとした態度を見せることが重要だ、ということですね。

尾久:
そうですね。いじめは子どもたちにとって一時的な問題ではなく、一生にかかわる重大な問題です。効果的ないじめ対策を行うためには、学校、家庭、地域のすべての大人がいじめの重大さを知り、互いに助け合っていく必要があります。

――例えば、親は子どもを守るために、具体的にどんなことができますか。

尾久:
例えば、お子さんがいじめの被害者になった場合ですが、まず親は、“子どもを何が何でも守る”ということを伝えることです。その上で、学校に事実関係を確認してもらいます。
そのときに大事なことは、やはり子どもの意思を確認したり尊重することですね。親だけが先走ってはいけません。
また、子どもが安心できる居場所を確保することも必要です。例えば学校で居場所がなくなっても、家に帰ると安心できるようにする、ということが重要になってきます。

不登校 勇気を持って「学校を休ませる」

――一方で先ほど「不登校」も増えている、ということをおっしゃいましたけれども、親としてはこの不登校の問題にどう対応すべきでしょうか。

尾久:
親としては、子どもが不登校でもいいとは決して思えないですよね。でもこれは自然なことなんです。わが子が不登校になったときに、うろたえたり不安になったりしてしまうのは当然の反応だと思ってください。
子どもが学校に行くことが難しくなった場合、親がまずやることは、勇気を持って「学校を休ませる」ことだと考えています。

――学校を休ませてもいい、これはどうしてですか。

尾久:
無理に学校に行かせますと、逆効果になってしまいます。
子どもは“学校には行かなくてはいけない”と頭では十分理解しています。その上で、学校に行きたくない、と言いだしたときは受け入れてあげたほうがいいと思います。学校に行けなくなる理由があり、がまんが限界にきた、というサインなんです。
親が「学校休んでもいいよ」と認めることで、子どもは落ち着くことができます。

――これ、誰かに相談することも重要ですね。

尾久:
そうですね。例えば「不登校相談窓口」、それから「支援センター」「児童相談所」など、不登校の専門機関は各自治体にあります。
私ががんばってなんとか解決しないと、と家庭の中だけで問題を抱え込む傾向があるんですけれども、不登校というのはちょっとしたきっかけで誰もがなる状況ですので、決して恥ずかしいことではありません。
誰かに悩みを相談するだけでも気持ちを軽くできますので、少しでも負担を感じたら利用してみるのがおすすめです。

――では最後に、今回のポイントをお願いします。

尾久:
いじめにはきぜんと。不登校は認めてあげる。


【放送】
2024/04/09 「マイあさ!」

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