「親と子のメンタルヘルス」① ~今、子どもに何が?~

24/05/06まで

健康ライフ

放送日:2024/04/08

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ#家族

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24/05/06まで

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【出演者】
尾久:尾久裕紀(おぎゅう・ひろき)さん(大妻女子大学 教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

子どもたちは追いつめられている?

――大妻女子大学教授、尾久裕紀さんに伺います。尾久さんは精神医学がご専門で、産業医として働く人のメンタル治療に携わり、また、大学と付属の中学・高校でも、学生や生徒さんの相談にものっていらっしゃいます。
私の子供はもう成人になったんですけれども、親と子どもの関係、これ、永遠のテーマですよねえ……。

尾久:
そうですねえ。親が、子どものことが大好きです、とか、子どもが、親にはとても感謝しています、というような、お互いが“家族が大好き”と言えるような親子関係が最も理想的なんですけれども、残念ながら現実を見ると「親との関係がぎくしゃくしている」あるいは「最近、親との接し方で悩んでいる」といった声が多く聞かれます。
子どもには一人ひとり個性がありますし、親のライフスタイルも多様になっています。ネットで知った情報が、必ずしも自分の子育てに役立つとは限りません。焦ってしまうときには情報から少し距離を置いて、目の前のお子さんをじっくり観察することが大事だと考えています。

――今週は、5回にわたって「親と子のメンタルヘルス」について、いじめ問題や親の精神状態、そして祖父母との関係など取り上げていきます。1回目は「今、子どもに何が?」がテーマです。
尾久さん、今、子どもの自殺や不登校、増えてきてるんですよね。

尾久:
はい。2022年度の、文部科学省がまとめました「児童生徒の問題行動・不登校調査」というのがあるんですけれども、小・中・高から報告があった自殺者は411人と、前年から40人以上増えています。また、不登校は約29万件、いじめが約68万件と過去最多になっています。

――このように自殺や不登校が増えているというのは、これ、どうしてなんでしょうか。

尾久:
1つはですね、人と話す機会が減ったことが大きく関係していると思います。
コロナ禍がありましたので、臨時休校ですとか、学校行事が中止され部活動も制限されるなど、子ども同士の接触機会がだいぶ減りました。人との距離が広がったことで、不安や悩みを相談できない子どもが増えました。
本来は、こうした対話の相手として親がその役割を果たさないといけないんですけれども、親にも、実はその余裕がないのが現状です。

――たしかにコロナ禍の社会の変化は、親だけでなく子どもにもかなりのインパクトがあったというわけですね。

尾久:
はい。例えば、今若い人を中心に広がっている「オーバードーズ」という問題があります。いわゆる、薬を過剰に摂取してしまうことなんですけれども、そういう若者は人間関係や家族などに悩みを抱えている場合が多くて、現実から逃避したい、あるいは精神的な苦痛を緩和するために手を出してしまう傾向があります。

――うーん。多くの子どもたちが追いつめられた状況にある、ということがわかりました。

メンタルヘルスが気がかりな親が増えている?

――一方で、親の状況はどうですか。

尾久:
保育園とか学校でもですね、気になる保護者の方とか、メンタルヘルスが気がかりの保護者の方が増えている傾向にあります。
“子どもとの関わり方がわからない”とか、“子どもに指示ばかりして待ってあげない”とか、“子どもと対等な立場でけんかをしてしまう”など、「しつけや関わりに関すること」というのが1つあります。
2番目に、“自分の子どもには関心がない”、“子どもの面倒をあまりよく見ていない”など「無関心な親御さん」というのがあります。
で、最後にですね、“精神的に安定していない”とか、“無気力である”とか、「保護者の病気や、病的な状態が疑われる場合」などが見受けられます。

――そのような状況は子どもにとっても親にとってもよくない、と思うんですが、これ、どうすればいいんでしょうか。

尾久:
これについても、誰にでも当てはまるような答えがあるわけではありません。ただ、子どもが元気であれば親も元気になりますし、親が元気であれば子どもも元気になります。
子どもたちにとっては、親、特に母親の健康状態が重要である、ということがわかっています。そのため、家族、特にお母さんが安定した環境でいられるように支援するということや、お母さんを支援する人の支援も重要になってきます。

――どんなところを頼ればいいんでしょうか。

尾久:
ひとつおすすめなのは、いわゆる「ママ友」ですね。ママ友というのは<子どもを持つ母親どうしで親しく交流する>ということなんですけれども、子どもの育て方とか日常の悩み、それから喜びを共有できる場として非常に重要だと思います。

――ただ、ママ友は特に人間関係が非常に難しい、と聞きますよね。

尾久:
はい、それはもちろんありますね。ママ友関係も人間関係の一つですので、やっぱり時には意見が合わないとか、トラブルも起こることがあります。その場合はいったん離れて距離を置くといいと思います。可能でしたら、また別のママ友コミュニティーに参加するといいと思います。
あと、地域によっては「子育てひろば」とか「子育てサロン」「子育て支援センター」などの場所があります。そうしたところに参加するのもいいと思います。
大事なことは「ひとりで悩まないこと」です。

――一方でパパ、父親の果たす役割についてはどうですか。

尾久:
例えば、父親が育児に積極的に参加することで、母親、妻をですね、精神的にサポートすることになります。そうしますと母親の育児不安が軽減されますし、精神的にもいい状態で子育てができ、それは子どもによい影響を与えることになると思います。

――では最後に、今回のポイントをお願いします。

尾久:
子どもが元気なら親も元気、親が元気なら子どもも元気。


【放送】
2024/04/08 「マイあさ!」

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