「“養生”ですこやかに」⑤ ~心身の“ガソリン”が不足したら~

24/05/24まで

健康ライフ

放送日:2024/02/09

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ

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24/05/24まで

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【出演者】
伊藤:伊藤和憲さん(明治国際医療大学 教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

「ガソリン」の不足は「補う・整える」養生を

――明治国際医療大学教授で、東洋医学がご専門の伊藤和憲さんに伺います。
「養生」とは「健康に生きることを目指す東洋医学の考え方」で、病気になる前に備える暮らし方のことです。
今回のテーマは「心身の“ガソリン”が不足したら」です。心や体の「ガソリン」とは、血液やリンパのことを指していましたね。

伊藤:
そうですね。人にとっての「ガソリン」は、「エンジン」(内臓・筋肉)や「アクセル・ブレーキ」(自律神経)を動かすために必要な水や栄養のことを指しています。車と同じように人間も「一定のリズムで走行する」ことが、とても燃費がいい生活でありますし、ガソリンやオイルの質が低下してしまうと、スムーズに体が動かなくなってしまうことが起こります。

――ガソリンが不足したり、質が悪くなっている場合は舌の色に表れる、とのことでした。
私は、ちょっと白っぽいのが気になっているんですけれども。

伊藤:
舌の色は、薄い紅色な状態が健康というふうに考えられます。
栄養状態が悪かったり、滞っている場合には白っぽくなったりしますし、逆に赤みが強かったりすると、エネルギーが過剰になっています。また、紫色の場合には循環が悪い、などさまざまな問題があります。
舌の色が悪い場合には、夏の苦手な方が多いので、「補う」とか「整える」という養生が必要になります。

「補う」養生

――「補う」というのは、栄養や水を補う、ということですね。ポイントはありますか。

伊藤:
はい。栄養を補うことは、食事を意識してほしい、ということになります。具体的には「旬なものを食べる」、また「地域のものを食べる」ということです。
旬のものには、その季節に必要な栄養素がたくさん含まれている、と考えられています。夏にできるキュウリやトマトは、体を冷やすという性質がありますし、秋や冬にとれる、根菜類のショウガやニンジンなどは、加熱することで体を温めることにつながります。
一般的に、土の中にあるものは体を温め、その上にあるものは体を冷やす、と考えられています。また、昔は栄養素が分からなかったので、色で判断することも多かったのですが、濃い色のものは体を温める効果、薄い色のものは体を冷やす効果がある、といわれています。

――そしてもう一つ、地域のものを食べる、というのはなぜでしょうか。

伊藤:
その地域には、地域に必要な栄養素が土の中にあると考えられますので、地域に育ったものを食べるということは、必要な栄養素を取り入れていくということになります。さらに、地域のものは鮮度もよいです。
伝統的な加工品も、地域にはたくさんあるのですが、例えば、古くから各地で知られています「なれずし」や「いずし」と呼ばれるような発酵食品、これらは腸内細菌を取り入れるのによいとされています。それぞれ地域に合ったやり方があるようで、例えば、西日本と北日本では材料や作り方が異なる、といわれています。
そういう、地域に残ったやり方で作ったものを取り入れると、さらに健康になりやすいのでは、と思います。

――自分の地域や、季節に合ったものを食べるのが体によい、ということですね。
チェックで分かった「自分のタイプ」も関係ありますか。

伊藤:
まさにそのとおりですね。各タイプと栄養素には重要な関係があります。

◆ エンジンが衰えるタイプは、鍛えることが重要なんですが、筋肉を作るためのたんぱく質が不足しがちなので、たんぱく質をとることが大切です
◆ アクセルやブレーキが弱い方は、自律神経の調節がポイントです。特に、エネルギーをとり過ぎますとアクセルがかかり過ぎてしまうので、ブレーキを効きやすくするためにも、糖質をとり過ぎないことがポイントです
◆ ガソリンの不調がある場合には、血液やリンパの流れが重要になりますので、体の調節を行ってくれるようなビタミンやミネラルをきちんととることが大切になります

「整える」養生

――そして、もう一つは「整える」ですよね。整えるには、どんな養生が必要なんですか。

伊藤:
一番大切なのは「生活のリズムを整える」ということです。
ガソリン不足のタイプの方は、外部要因でリズムが崩れやすいと考えられます。例えば、夏が暑くて眠れない、とか、食欲がない、などというのも体をつらくする原因となります。生活のリズムが乱れて、体調にも影響しやすいので、例えば寝る時間、もしくは起きる時間、ごはんを食べる時間など何か一つの時間を決めることです。体の“定点”を作ることで、ほかの時間もそれに合わせて整っていきます。
「体のリズムを整える」こともおすすめです。

――体のリズムを整える、もう少し具体的に言いますと?

伊藤:
人間には「心拍数」というリズムがあります。これは速すぎると疲れてしまうので、深呼吸で心拍数を落ち着かせたりします。
また、歩く速さは脳にとても影響を与えるので、一定のリズムで歩くことで、脳に体のリズムを覚え込ませることも大切になります。
例えば、心拍数がふだん80ぐらいの人であれば、1分間に80歩ぐらいのペースで歩くと、脳と心臓の調子が一体化してちょうどいいことになります。それよりも速くなると気分を高揚させる効果があり、また、ゆっくりになると気分が落ち着くという効果があります。
体のリズムを整え、体にリズムを覚えさせることで、環境などからの影響を受けづらい体を作ることになります。

――今回は「心身の“ガソリン”が不足したら」というテーマで伺いました。伊藤さん、最後に今回のポイントをお願いします。

伊藤:
足りないものを補いながら、自分のリズムで生活しよう。

――5回にわたって、「養生」について教えていただきました。病気になってから治すのではなく、その前から季節に合った暮らし方を心がける、ということでしたけれども、伊藤さん、全体を通して、改めて一番大事なことは何でしょうか。

伊藤:
季節に応じた生活、と考えますと、自分だけでなく地域や社会、そして、自然のつながりを意識しながら生活する。これがまさに東洋医学の「養生」という考え方だと思います。


【放送】
2024/02/09 「マイあさ!」

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