「“養生”ですこやかに」① ~養生って、なに?~

24/05/20まで

健康ライフ

放送日:2024/02/05

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ

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【出演者】
伊藤:伊藤和憲さん(明治国際医療大学 教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

心と体を保ち、命を全うするのが「養生」

――明治国際医療大学教授で、東洋医学がご専門の伊藤和憲さんに伺います。
今週のテーマ「養生」、聞き慣れない方も多いかもしれません。「養生しなさいよ」といった声かけも昔はありましたけれども、最近なかなか聞かなくなりましたね。
今回のテーマは「養生って、なに?」。伊藤さん、そもそも「養生」とは何なんでしょうか。

伊藤:
「養生」は〝生命を養う〟という文字のとおり、「心と体を保ち、命を全うする」という考え方です。
今ではさまざまな考え方や捉え方がありますので、漠然としているようなイメージがありますけれども、もともとは中国で生まれた、健康に関わる考え方なんです。具体的には、季節に則した暮らしだったり、安定した精神の保ち方だったり、食事法や、体を鍛えるということだったり、さらには病気の予防に至るまで、さまざまな範囲をカバーしている考え方だと考えています。

――養生とは、言ってみれば西洋医学で言うところの「予防医学」のようなものなんでしょうか。

伊藤:
養生というのは、確かに予防医学に近い考え方であります。ただ、現代医学のように病気にならないために何かをするというよりは、「その人が楽しく健やかに元気で生きていくために、どんなふうに生活をしていけばいいか」というようなプラスの考え方に近いものでありまして、「自分の体をあらかじめ把握しながら、自分にとって一番いい体の状態を探っていく」というのが「養生」という考え方です。

二十四節気に則して生活をしていこう

――養生の内容は非常に多岐にわたるような感じもしますし、暮らし方から医療的なことまでカバーしているということですから、それをすべて覚えて実行するのは難しいんじゃないですか。

伊藤:
そう考えると難しいような気がするんですが、養生の基本は「季節に応じて生活をすること」です。
季節にはそれぞれなりやすい病気、例えば春であれば花粉症になったり、冬であれば風邪をひきやすい、などがあります。
季節に応じた暮らし方がありますから、そういうことに目を向けるということ、特に東洋医学では、春夏秋冬の四つではなくて、「二十四節気」という細かい季節に応じて生活をしながら、体を整えていく、という考え方になっています。

――二十四節気に即して生活をしていく、具体的には例えばどんなことですか。

伊藤:
例えば節分ですが、“節を分ける”という意味で“春”になるんですけれども、やはり、春というのはこれから体を動かしていく、という季節になりますので、たんぱく質や、体を作るエネルギー源になるものが大切になります。この時期に節分の豆を食べることで、豆にはたんぱく質が多く含まれていますので、体を鍛えよう、体を整えようということになります。
夏、京都を中心に関西では“水無月(みなづき)”という、小豆がのっているお菓子があるんですけれども、小豆にはトリプトファンという、心を落ち着かせる物質が入っているんです。ちょうど夏の初め、5月の連休明けから夏は“五月病”とか“六月病”といって、心が乱れやすい時期ですので、こういうものを食べることで昔の人は体を生活の中で整えていく、というようなことをしていました。
さらには秋ですね。お祭りが多いです。秋の祭りはおみこしを担いだり、大きな声を出したりということで、いわゆる“免疫力”を高めるための運動的な要素がとても多いのかなと思っています。
そういう意味では、そのあとに来る冬の風邪対策になったり、また、冬は“うつ”が多いのですが、運動はうつ病を予防するための大きな方法となりますので、うつを予防するという意味で秋にはお祭りが多いのかな、というふうに考えています。

――食べ物に含まれる栄養素や運動の重要性など、現代の医学と通じるものもあるんですね。

伊藤:
そのとおりですね。人々が今まで体験してきた暮らしというものには、体によいことがいっぱいあります。これは、長く残っているということは根拠があるものが多いのかな、と思っています。

――例に挙げていただいた、例えば節分・春分は今でも季節の行事として日本中で行われていますよね。
伊藤さん、春に向かう季節はやはり大切な節目なんでしょうか。どんなことに気をつければいいですか。

伊藤:
春はまさに、これから自分の体に何かを植えつけていくというような時期です。
そういう意味では、自分の体をほぐしたり、それから、何かを植えつけるための準備期間になりますので、特に体に関しては、ゆるめていったり落ち着けていく、ということがとても大切になります。そして、植えつけるための準備としてたんぱく質を補給したり、体を整える準備を始めるというのがこの季節の養生です。

苦手な季節で養生のポイントが分かる?

伊藤:
田中さんは、この季節が苦手、っていうのはありますか。

――苦手な季節ですか。ええと、暑すぎる夏はちょっと苦手だな、っていうふうに去年特に思ったんですけれども、そこから何か分かることがあるんですか。

伊藤:
はい。その人に応じて体を見極める「養生の3つのポイント」というものがあります。私は、車の動力系を一つの例えにしています。
まず夏は、体を動かすための「ガソリン」、これが不調な人が多いです。特に血液やリンパの流れなどに問題がある方は夏が苦手、というふうに考えています。
また、体を動かす「エンジン」というのは内臓や筋肉のことを言っていますが、この不調がある方は秋が苦手、と考えられます。秋は動くことが多いと思いますので、秋が苦手という方はエンジンを調整することが大切になります。
「アクセル・ブレーキ」というのは自律神経のことを指しているんですけれども、自律神経というのは体と心を調節する機能ですので、この調節が苦手な方は冬から春にかけてが苦手、と考えられます。

――私は、夏が苦手だということはもしかしたら「ガソリン」タイプということですかね。
自分はどのタイプかな、と気になっている方もいらっしゃるかと思います。自分のタイプの調べ方については、次回詳しく伺いたいと思います。
では伊藤さん、最後に今回のポイントをお願いします。

伊藤:
季節に則した暮らしが、健康への第一歩。


【放送】
2024/02/05 「マイあさ!」

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