【出演者】
越智：越智小枝（おち・さえ）さん（東京慈恵会医科大学 教授）
聞き手：福島佑理 キャスター
防災グッズに、ビタミン類を意識した食品を加えよう
――今回のテーマは「防災グッズに“ビタミン”を」です。ビタミンＤを含む、ビタミン全体のお話を伺います。
越智さんは、2011年の東日本大震災をきっかけに、福島県相馬市で医師として診療していらっしゃるそうですね。
越智：
はい。今は定期的に相馬に通って、診療を続けています。
――災害後はどのような状況でしたか。
越智：
やはり感じたのは、被災地の中に入ってくる物資が限られている、ということです。
特に食べ物には偏りが多くて、例えば東日本大震災で実際に配布された食事の例ですが、朝食はおにぎり２個とカップラーメン１つ、お昼ごはんは菓子パン１個、夕飯はおにぎり２個とカップ焼きそば１つ、こういったものが挙げられます。
――かなり栄養が偏ってしまうんですね。
越智：
はい。避難所に支援物資が届くことは届くんですけれども、特に災害発生の直後は、栄養バランスは二の次となってしまいます。
避難生活は限られた食事になりがちなんですが、災害だから体調が悪化するというのは、しかたないでは済まされないことだと思います。
カロリーだけではなくて、栄養素も考慮した非常食が求められると思います。特に、防災グッズに「ビタミン」を加えることをおすすめします。
――なぜ、ビタミンが必要になるんでしょうか。
越智：
ビタミンというのは、我々が生きていくために欠かせない栄養素で、ビタミンがなければ体は正常に働きません。例えば今週の話題の「ビタミンＤ」ですが、これが不足するとカルシウムの吸収が悪くなって骨粗しょう症が進みますし、特に閉経後の女性というのは骨粗しょう症が加速するので、注意が必要かと思います。
それ以外のビタミンとして、「ビタミンＢ」は体に取り込まれた炭水化物や脂質、たんぱく質を効率よく分解・吸収・利用する“代謝”を助けて、エネルギーの生成をスムーズに進めるという働きがあります。いくら栄養をとっても、ビタミンＢが不足してしまうとエネルギーを作り出すことができない、ということになります。
ですから、このビタミンＢが不足すると疲れやすくなったり、ひどくなると頭痛やめまいにつながることもあります。
――災害時というだけで大きなストレスになりますし、避難所などの環境でビタミンが不足すると、ますます体調が悪くなるということにつながりかねませんね。そこで、防災グッズにビタミン、ということなんですね。
越智：
はい。ビタミンというのは野菜や果物、魚、肉などさまざまな食品に含まれているんですけれども、これはどれも避難所で不足しがちな食品です。
私たちの研究でも、98％の日本人でビタミンＤが足りていないという結果が出ていますので、防災グッズにもぜひビタミンＤ、あるいはビタミンＣ、ビタミンＢ群など、ビタミン類を意識した食品を加えていただければと思います。
「ローリングストック」無理せずできるポイントは
――越智さん、備えておいたほうがいいこと、現場のご経験から何かアドバイスはありますか。
越智：
大規模な災害に備えて、例えば日本では１週間分の備蓄を推奨しています。
とはいうものの、１週間分も備蓄しておくということは簡単ではありませんので、気付いたら期限が切れていた、なんていうこともよくあるかな、と思います。
そこでおすすめするのが「ローリングストック」です。
――「買い足す→蓄える→食べる」、これを繰り返す、というのが「ローリングストック」ですね。
無理せずできるローリングストックのポイントはありますか。
越智：
備蓄品をふだん使いに取り入れるということで、無理をせずに必要な在庫を保つことができる、ということですから、ポイントは大きく３つあります。
■ １つ目は、自分や家族がよく食べるものをちょっと多めに買っておく、ということです。
■ ２つ目は、賞味期限が早いものから食べていき、食べた分はすぐに買い足す、ということ。
■ ３つ目は、意識して野菜やフルーツ、缶詰などを取り入れる、ということです。
水や主食に加えて、必ず入れておきたいのが野菜やフルーツを使った食べ物です。ビタミンＤを多く含む「さけの缶詰」とか、ビタミン類を豊富に含む「ドライフルーツ」、ビタミンやマグネシウムを含む「ナッツ類」などを加えるのも、賞味期限が長いのでおすすめと思います。
また、日常的にサプリを飲んでいるような方は、一部を災害用ストックに入れておくというのもよいと思います。
――これらは準備できることなので、ぜひ実践したいですね。
では最後に、きょうのポイントをお願いします。
越智：
カロリーだけでなく、栄養素も考慮した非常食を。防災グッズにビタミンを加えよう。
【放送】
2024/01/19 「マイあさ！」
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