「骨粗しょう症を防ぐビタミンD」② ~健康に不可欠 ビタミンD~

24/04/23まで

健康ライフ

放送日:2024/01/16

#医療・健康#カラダのハナシ

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24/04/23まで

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【出演者】
越智:越智小枝(おち・さえ)さん(東京慈恵会医科大学 教授)
聞き手:福島佑理 キャスター

骨粗しょう症とビタミンD

――2023年6月、東京に住む人の98%でビタミンDが不足していることが、大規模な調査で明らかになりました。
調査を行った東京慈恵会医科大学教授、越智小枝さんにお話を伺います。
ビタミンDってどんな栄養素? というふうに、知らない方も少なくないと思います。そもそも「ビタミンD」はどんな栄養素なんでしょうか。

越智:
「ビタミンD」というのは、食べ物から摂取されるものと、日光に含まれる紫外線を浴びることで皮膚から作られるもの、という2種類があります。
食物の中では、ビタミンDを多く含む食品には「干ししいたけ、乾燥きくらげなどのきのこ類」や、「さけ、しらすといった魚」などがあります。
このビタミンDというのはすごくいろいろな機能がある栄養素で、近年の研究で次々とその働きが明らかになっています。
まずは、今回のテーマである「骨粗しょう症」ですね。骨粗しょう症というのは、骨がスカスカの状態になって、もろくなる病気です。このため、ちょっと尻餅をついたり重い物を持ち上げたりしただけでも骨折してしまうということがある、怖い病気です。
ビタミンDは「カルシウムが小腸で吸収されるのを助ける」「血液中のカルシウムが骨に沈着するのを助ける」などの働きをしていますので、ビタミンDが不足すると、いくらカルシウムをとっても丈夫な骨ができない、ということになります。骨折のリスクが上がる、ということです。このリスクがおよそ6.6倍になる、という報告もあります。

――6.6倍ですか。ビタミンDが不足すると、骨折しやすくなってしまうんですね。

越智:
そうですね。私から見ても、ビタミンDの充足状態でこれぐらい骨折リスクに差が出るというのは、あまり予測していなかった結果です。これで、骨粗しょう症や骨折予防にビタミンDがいかに重要であるか、ということが分かると思います。

筋肉の増強とビタミンD

――ビタミンDは、骨粗しょう症以外にどんな効果があるんですか。

越智:
いろいろな効果があるんですけれども、特に「筋肉を強くする」「免疫機能を調整する」、そして「2型糖尿病のリスクを下げる」、また「心臓病のリスクを下げる」ということがいわれています。

――ビタミンDは本当に大切な働きをしているんですね。特に気になったのは「筋肉を増強する」と「免疫機能を調整する」。
まず、筋肉を作るにはたんぱく質、というイメージがありましたが、ビタミンDは筋肉の増強とも関わっているんですね。

越智:
おっしゃるとおりで、筋肉を効率よく増やすためには、運動とともに栄養が重要になってきます。特に大切な栄養素は「たんぱく質」です。筋肉はたんぱく質でできていて、合成と分解が常に繰り返されているので、食事でもたんぱく質をしっかりとって、合成を活発にすることが必要になります。
そして、筋肉にとってもう1つ大事な栄養素がビタミンDなんです。ビタミンDというのは、先ほど言ったようにカルシウムの吸収をよくします。カルシウムは筋肉によく働くということもありますし、筋肉の合成を促す作用もあります。そういう意味で、ビタミンDは筋力維持にも大きく関わっている栄養素です。
このビタミンDが不足すると、筋力が衰えて転倒のリスクが高まったり、また、骨折や転倒のリスクが上がって、結果的に介護の必要な状態になりやすくなってしまう、ということがいわれています。特に、高齢の方はお肉やお魚などのたんぱく質が足りなくなったり、あるいは、ごはんなどの炭水化物を中心とした食事になりやすくなったりすることがあります。また、過度の食事制限をしているような女性もたんぱく質が不足になりがちです。
筋肉をつけて健康を保つには、食事のメニューを工夫して、積極的にたんぱく質やビタミンDの摂取量を増やすようにしてほしいと思っています。

免疫機能の調整とビタミンD

――そして、免疫機能の調整にもビタミンDは関わっている、ということなんですね。

越智:
ビタミンDが不足すると、免疫に悪い影響を及ぼして、感染症の重症化や自己免疫疾患の引き金にもなりかねないということがいわれています。実際に自己免疫疾患の患者さんの血液を調べると、ビタミンDの濃度が低い傾向にあるといわれています。
自己免疫疾患というのは、免疫が自分の体の組織などを間違えて敵と見なして攻撃してしまう、ということで、体の中で炎症や破壊が起こる病気です。ビタミンDはこのような免疫の暴走を止めて、免疫の働きを調整する作用があると考えられています。

――こうした大切な働きをしているビタミンDが98%の人で不足しているという状況、かなりまずいことなんですね。

越智:
そうですね。もちろん、ビタミンDが全ての健康問題を解決するわけではないんですけれども、体の機能を維持するために働くすごく大事な栄養素ですので、そういった意味では、ビタミンDを充足させることは健康づくりのスタートライン、そう思っていただけるとよいですね。

――そうなりますと、知りたいのはそれをしっかりとる方法ですね。
次回、ビタミンDをとる食事について、詳しくお伝えします。では越智さん、最後にきょうのポイントをお願いします。

越智:
ビタミンDは「骨を強くする」「筋肉を増強する」「免疫機能を調整する」健康に不可欠な栄養素。ビタミンDを意識した生活を。


【放送】
2024/01/16 「マイあさ!」

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24/04/23まで

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