「タイプで異なる冷え症対策」⑤ ~“全身型”冷え症~

24/03/25まで

健康ライフ

放送日:2023/12/22

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
伊藤:伊藤剛さん(北里大学 客員教授)
聞き手:星川幸 キャスター

全身型冷え症の症状と原因

――「下半身型」「四肢(しし)末端型」「内臓型」と3つの冷え性を取り上げてきました。
今回は「“全身型”冷え症」です。これはどのような症状なのでしょうか。

伊藤:
「全身型冷え症」というのは文字どおり全身、手も足も、体の外も内も冷えている状態の冷え性ですね。
このタイプは、冷え症外来ではおよそ5%とあまり多くありませんけれども、代表的な訴えは「ゾクゾク寒気がする」「体全体が常に寒い」といったような「全身症状」です。

――かぜにかかったときの悪寒とは違うんでしょうか。

伊藤:
かぜのときの悪寒というのは、ふるえ熱産生(ねつさんせい)といって、筋肉を細かく収縮させて熱を作るときに生じる症状ですね。全身型は悪寒ではなくて「肌寒いような寒気」が特徴です。

――では、全身型に関して詳しく教えてください。

伊藤:
全身型では、体温低下により脳や内臓の機能が低下するために、「疲れやすい」「食欲がない」「下痢しやすい」など、冷え以外の症状も伴うことがあります。
冷えていることで、全身型同様にこうした症状を伴う方もいます。このような冷えを、冷え症とは別に「隠れ冷え」と呼んで、治療を要することがあります。

――体がだるい、などの症状も見られるんですね。原因は何ですか。

伊藤:
全身型冷え症の原因は、体内で熱を十分に作れない、ということですね。必要時に体温を上げられない、ということもあります。
基礎代謝の低下、栄養失調、拒食、慢性的な疲労やストレス、睡眠不足、不摂生や昼夜逆転の生活など、自律神経やホルモンの乱れが原因となることもあります。

――さまざまなものがあるんですね。そのほかにもありますか。

伊藤:
特に女性や高齢者の場合は、軽度の「甲状腺機能低下症」が隠れている場合もあるので、注意してください。

――甲状腺機能低下症、これは何ですか。

伊藤:
甲状腺から出るホルモンが不足する病気ですね。原因は先天性、脳下垂体腫瘍、老化による機能低下、あと、よくあるのは昆布などの海藻類の過剰摂取ですね。そういうさまざまな原因のうち、慢性甲状腺炎である橋本病が、最も多い原因です。
甲状腺機能が低下すると、全身の冷え以外にも、元気がない、疲労感、むくみ、皮膚乾燥、体重増加、便秘、かすれ声などの症状が出ます。症状が強い場合は原因疾患の治療が必要なので、思い当たる節がある人は「内分泌内科」などの医療機関を受診してください。

――女性や高齢の方は注意が必要ですね。

生活習慣全体を見直そう

――全身型冷え症の対策を教えてください。

伊藤:
どのタイプの冷え性にも言えることですが、根本には食生活や運動不足などの生活習慣が関係しているケースが多いのですね。睡眠不足やストレスの多い生活が続いていないか、特に仕事、インターネット、ゲームなどで深夜まで起きている生活をしていると、体温のリズムが狂い、日中は体温が低下し、体の不調の原因になるので、生活習慣全体を見直してみましょう。

――生活リズムを整えることが大切なんですね。

伊藤:
食事はしっかりとりましょう。全身型の方は代謝の低下によって食欲がない方も多いと思いますけれども、まずは食事の量を増やして、しっかりと熱を生み出す体にすることが大切です。
また、運動が不足していれば、可能なかぎり体を動かして、運動を心がけましょう。

――食事では、どのようなものをとるといいですか。

伊藤:
一般的に肉、魚、大豆製品、卵などのたんぱく質は、糖や脂肪などに比べて食後の産熱量が最も多いということや、運動なしでも熱を作るということが分かっていますので、積極的にとるといいと思います。
一方、ごはんやパン、お菓子やフルーツなど糖質を含む炭水化物は、摂取しても運動しないと有効な熱は作られません。食事をしたら、運動も積極的に取り入れましょう。
もちろん、食物繊維やビタミン豊富な野菜も十分にとる必要がありますね。食物繊維は大腸で働く細菌の大事な餌ですし、熱を作る材料を吸収する上でも、免疫機能を維持する上でも腸を大切にしましょう。

――栄養バランスを考えた食事が大切ですね。体を温めるために、お風呂につかるというのはどうですか。

伊藤:
もちろん、冷え性の改善には、ある程度体力がある方は半身浴ではなくて、体が芯から温まる「全身浴」が大切です。お湯の温度は、人が最も心地よいと感じる40度から42度にするのがポイントです。ただし、お湯につかるのは10分以内にしましょう。それ以上の長風呂は、どうきやめまい、発汗過多、入浴後の血圧低下などを招くことがあるからなんですね。

――生活改善のほかに、全身型の治療としてできることはありますか。

伊藤:
日常生活にも支障をきたすほど症状が強い方には「漢方薬」という手もあります。代謝を上げ、冷えた体全体と内臓を温める「四逆湯(しぎゃくとう)」などを用いて治療します。悩んでいる方は、冷え症に詳しい「漢方専門医」を受診したらいいと思います。

――では、最後にきょうのポイントをお願いします。

伊藤:
冷え症の多くは「生活習慣病」です。まずは自分の「冷えタイプ」を知って、生活リズムを整え、食事や運動を見直すなどのセルフケアが大切です。


【放送】
2023/12/22 「マイあさ!」

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