「タイプで異なる冷え症対策」④ ~“内臓型”冷え症~

24/03/21まで

健康ライフ

放送日:2023/12/21

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
伊藤:伊藤剛さん(北里大学 客員教授)
聞き手:星川幸 キャスター

内臓型冷え症の症状と原因

――今回のテーマは、冷え症の4つのタイプ「下半身型」「四肢(しし)末端型」「内臓型」「全身型」のうち、「“内臓型”冷え症」です。
このタイプはどのような症状なのでしょうか。

伊藤:
「内臓型冷え症」というのは、手も足も温かいのに、体の中が冷えるタイプの冷え性ですね。冷えの自覚症状があっても体の表面が温かいために、他人からは冷えが理解されにくいということがあります。
症状としては、体から熱が逃げやすいため体の中が冷え、「おなかが冷える」「おなかが張る」といったような訴えが多く聞かれます。

――どのような人に多く見られるんですか。

伊藤:
内臓型冷え症の方は、冷え症外来ではおよそ10%を占めます。アレルギー体質や、体重がやや多い方などに見られることがあります。
基本的に副交感神経が強く、交感神経が弱いために、交感神経の防御反応が強すぎる四肢末端型冷え症とは正反対に、寒くても皮膚表面の血管が閉まらないために体の外に熱が過剰に放出されて、体内の温度は低下してしまいます。その結果、手や足は温かいのに、体の内部や内臓が冷えてしまうのですね。

――副交感神経と交感神経、それぞれどのようなものですか。

伊藤:
内臓、血流、発汗などを自動的に調節する神経を「自律神経」といいますが、この自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。交感神経の働きは、逃げたり戦ったりする際に活動を促すアクセルのような働きがあります。副交感神経はそうした活動をゆるめ、ブレーキをかけリラックスさせる働きがあります。

――内臓型になる、そのほかの原因などはありますか。

伊藤:
ストレスや不規則な生活、または高齢化による自律神経のアンバランス、さらに、腹部内の血流低下を起こす腹部手術などがあります。

――体にはどのような影響が出るんでしょうか。

伊藤:
おなかの冷えによって腸の機能が低下したり、おなかにガスがたまったり、腹痛や便秘になったり、ぼうこう炎や月経不順などの症状が起きやすくなります。

食事や衣服に気をつけ、運動を習慣づけよう

――では、内臓型の対策を教えてください。

伊藤:
まず食事では、副交感神経が活発なために、食欲がしっかりある方が多いのが特徴です。おなかがすくと体が冷えてしまうので、しばしば食事を多くとってしまいがちですが、食べ過ぎには注意が必要です。また、極端に冷たいものは控え、夏でも温かいものを食べるように心がけてください。
衣類は、環境に合わせて着脱し、調節する必要があります。皮膚表面は温かく汗をかきやすい、ということがあるために、体に熱がこもらないような通気性のよい素材の衣服を身につけることもいいですね。

――冷たいものは控えて、夏でも温かいものをとる、ということですね。そのほかには。

伊藤:
交感神経の働きが弱いことが原因のために、交感神経を鍛え、自律神経のバランスを整えることも大切になります。

――自律神経のバランスを整えるにはどうしたらいいですか。

伊藤:
無理なく自分のペースでできる運動、例えば体操やウォーキング、ジョギングなど、あまりハードではなく、人と競わずに1人でできる運動をおすすめします。
時間も10分から15分と短くてかまいませんが、できるだけ毎日、習慣として取り入れることが重要ですね。
運動する時間は早朝や夜間ではなくて、午後から夕方の時間に運動する習慣を作りましょう。

――習慣づけることがポイントになりますね。

伊藤:
気をつけることは、これまで運動をあまりしてこなかった人が突然、体に負荷のかかるような運動はしないことです。それと体を動かして汗をかいたら、冷える前にすぐ拭き取るか、着替えましょう。

仙骨を温めよう

――運動以外にできることはありますか。

伊藤:
内臓型は体の中が冷えるタイプの冷え症なので、内臓を暖めることも対策の1つです。そう言うと直接おなかを温めたくなると思いますけれども、おなかの周りには脂肪が多く、深部まで温めることが難しいこともあります。そのため、体の背面、特に骨盤内の子宮、卵巣、ぼうこう、直腸などの内臓の血流を調節している交感神経が多く通っている「仙骨(せんこつ)」周囲を温めることで、内臓血流が増え、腹部の深部を温めることにもつながります。

――仙骨の場所と温め方、教えてください。

伊藤:
「仙骨」は、尾てい骨の上の平らな部分にあります。

――今、触ってみますと、お尻の真ん中の、尾てい骨の少し上の部分、確かに平らな所がありますねえ。ここを温めるといいんですか。

伊藤:
そこをカイロなどで温めることも対策になります。携帯用カイロは、直接肌に貼るとやけどをするおそれもありますので、服の上から貼るようにしてください。
仙骨を温めると、下腹部だけでなく全身も温まって、自律神経のバランスも整います。

治療は漢方薬も有効

――そのほかに、楽になるようなことはありますか。

伊藤:
「漢方薬」でも治療が有効です。子宮やぼうこう、腸管など下腹部の血流を増やして温め、手足のほてりを減らす「温経湯(うんけいとう)」や、冷えた状態の内臓と全身を温めるため、「全身型」でも用いる「四逆湯(しぎゃくとう)」、これらの漢方薬が有効です。

――では、最後にきょうのポイントをお願いします。

伊藤:
「内臓型冷え症」、無理のない運動で交感神経のバランスを整えましょう。


【放送】
2023/12/21 「マイあさ!」

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