「タイプで異なる冷え症対策」③ ~“四肢末端型”冷え症~

24/03/20まで

健康ライフ

放送日:2023/12/20

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
伊藤:伊藤剛さん(北里大学 客員教授)
聞き手:星川幸 キャスター

冷える感覚とは、生きるための重要なサイン

――冷え症には「下半身型」「四肢(しし)末端型」「内臓型」「全身型」がありますが、今回のテーマは「“四肢末端型”冷え症」です。
このタイプ、どのような症状なんでしょうか。

伊藤:
前回、4つの冷え症のタイプを皆さんにチェックしていただきました。
「四肢末端型」について説明する前に、まず「冷える感覚とは、生きるための重要なサインである」ということを知っていただきたいです。
生き物には、生命を維持するための最適な体温があり、人間の場合は37度程度に保たれるようになっています。しかし、体温が下がってしまうと脳や内臓の働きが低下して、正常な状態を保つことができなくなり、さらに下がれば、命の危険にもつながってきます。

――体温が下がっていくと、人の体はどんな反応を起こすんでしょうか。

伊藤:
体温が奪われるような不快な「冷え」を感じると、脳が「冷えを回避する行動を取れ!」と指令を出します。厚着をしたり、部屋を暖めたりするのはそのためで、これを「行動性体温調節」といいます。
それで間に合わないと、甲状腺ホルモンを刺激して、体内の褐色(かっしょく)脂肪組織という組織で熱を作り出します。
それでも足りなければ、筋肉をガタガタと震わせることで、熱を作り出すんですね。
非常に寒いときに体が勝手に震えるのは、筋肉を収縮させることで熱を作り、体温低下を防ごうとしている反応なんですね。

――寒くて震える、というのは、脳が熱を作り出そうとしているんですね。

伊藤:
そうですね。冷えとは客観的な体温の低下であって、体内や体外の環境温度に左右されて誰にでも起こることなんですね。同時に、冷えを不快に感じるというのは、体の機能低下や命の危険を回避するために「これ以上体温が下がらないように、行動すべき」と脳が知らせる大切なサインなんですね。

――体が冷えないように、注意を図って生活をするということを心がけなくてはいけないですね。

四肢末端型冷え症の原因と対策

――では、今回のテーマ、四肢末端型冷え症について教えてください。

伊藤:
「四肢末端型冷え症」というのは、手足の末端が常に氷のように冷えるタイプで、「冷え症」として最もよく知られたタイプですね。冷え症の外来では約10%ぐらいを占めて、10代から20代の女性に多く見られます。

――四肢末端型の原因は何ですか。

伊藤:
この四肢末端型に該当するタイプの方は、体内で十分に熱が作れない、ということが主な原因です。体内で作られる熱が少ないので、手や足などから体温維持に必要な熱を逃がさないようにする体の防御反応が過剰に働いてしまい、交感神経が強く反応して、手足(てあし)末端の血管を収縮させ、血流を減らします。その結果、手足の末端に十分な熱が運ばれず、結果的に手足の末端が冷えてしまうのです。

――具体的にいうと、どんな人がなりやすいんでしょうか。

伊藤:
四肢末端型の傾向としては、食事摂取量の少ない方、ダイエット志向の強い方、また、運動不足などで体内の熱量が不足している、瘦せ型の若い女性や中年の女性がなりやすいですね。

――体にはどんな影響がありますか。

伊藤:
汗はほとんどかかず、冷えとともに頭痛、不眠、腹痛、体調不良などの症状を生じやすく、日常生活にも支障が出やすいのが特徴です。

――では、どのような対策をしたらいいんでしょうか。

伊藤:
熱を作り出し、体全体の温度を上げる体づくりをしましょう。そのためには、まず「燃料」となる食事をしっかりとること。
糖質は運動をしないと熱になりにくいために、デスクワークや、運動ができないような方は、運動をしなくても熱を作り出すたんぱく質の摂取を心がけるようにするとよいでしょう。
また、運動できる方は、ウォーキングなど毎日できる運動で代謝をしっかり上げたり、筋肉をつけたりすることが対策として考えられます。

ぶらんぶらんウォーキング

――ウオーキングなどがおすすめ、ということですが、そのウォーキングをするにあたって、注意点などはありますか。

伊藤:
ウォーキング前には、必ずストレッチなど準備運動をしっかりしましょう。
「ぶらんぶらんウォーキング」をおすすめします。

● 胸を張り、肩の力を抜きます
● ひじは曲げずに伸ばし、歩調に合わせてぶらんぶらんと自然に振れる程度にします
● 少し大股で、足の筋肉をしっかり使って歩きます

無理なく、楽しみながら歩くことを心がけましょう。

足指ストレッチ

――そのほかには、どんな対策がありますか。

伊藤:
「足指ストレッチ」で足指の血流改善、もおすすめです。

● いすに座って、右足首を左足の太ももにのせます
● 左手で、右足の甲をつかむように持ちます
● 左の手のひらで、足の指先を5秒間、足の裏側に折り曲げます
● 5秒たったら、1度パッと手を離します
● これを5回繰り返し、反対側の足も同様に5秒、5回繰り返します

――私もやってみます。
足の指をつかんで、1、2、3、4、5。これを5回繰り返すと。小さい動きですが、このストレッチをやるだけで、足先の冷えの改善になるんですねえ。

伊藤:
そうですね。足先の冷えを改善するツボというのは、足の甲の、足指と足指の間の付け根にあるくぼみの所にあります。このストレッチは少し痛みを伴うんですが、ツボを刺激して、足指の血流を改善します。四肢末端型の冷え取りのセルフケアになるので、ぜひ試してください。
また、四肢末端型冷え性には、血流を改善する「漢方薬」も有効です。

――では、最後にきょうのポイントをお願いします。

伊藤:
過度なダイエットなどは要注意。体に熱を作り出す食事と運動習慣を心がけましょう。


【放送】
2023/12/20 「マイあさ!」

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