「記憶力や意欲が低下する? スマホ・ゲーム依存」⑤ ~知っていますか? デジタルデトックス~

24/04/19まで

健康ライフ

放送日:2023/12/15

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ

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24/04/19まで

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【出演者】
樋口:樋口進さん(久里浜医療センター 名誉院長)
聞き手:福島佑理 キャスター

短い時間でもよいのでデジタルデトックスを

――今回のテーマは「知っていますか? デジタルデトックス」です。「デジタルデトックス」とは、スマホやタブレット、パソコンなどの電子機器を触らない時間を一定時間設けることで、「デトックス」=「解毒」を行う取り組みのことです。
実は、私も夏休みに丸一日、デジタルデトックスを行いました。ちょっと気持ちが軽くなったような気がしました。

樋口:
それはとてもいい経験をされましたよね。
仕事中はパソコンを触り、休憩時間もスマートフォンを手放さない。また、電子機器を常に触っている人は多いですよね。さまざまな情報を目にしている状態のため、目や脳などの体の疲弊が避けられません。このような状態が続くと、知らず知らずのうちにストレスがたまり、体調を崩すこともあります。
短い間でも、電子機器から離れることでデジタルデトックスにつながります。

――短い時間でも大丈夫なんでしょうか。

樋口:
はい。スマホの使い過ぎというのは一種の「悪い癖」のようなものです。癖を直すのには長い時間が必要です。短くても結構なので、無理せず、1日の中でスマホを使わないで過ごせる時間を見つけて、それを実行していくことです。

――とはいえ、スマホを使わないのは難しい、という方もいると思います。うまいやり方はありますか。

樋口:
デジタルデトックスとは、一定期間、スマホやパソコンなどのデジタルデバイスとの距離を置くことで、ネットなどのつきあい方を考えることにつながります。最近では、NPOが主催する「スマホ断ちツアー」や、文部科学省の事業として「ネット依存治療キャンプ」などが実施されています。私どもも、2014年からネット・ゲーム依存の子どもたちに対して、毎年このキャンプ事業を実施してきています。

医療機関での治療方法

――ここまで、デジタルデトックスについてお話を伺ってきましたが、そもそもスマホ依存やゲーム依存で治療が必要なケースがあるんですか。

樋口:
はい。スマホの依存は静かに、そして素早く進行します。それには“常に持ち歩いている”というスマホの性質が関係しています。スマホを使い過ぎていると、本人が自覚していてもスマホは手を伸ばせば届く範囲にあり、SNSなどの通知音が鳴るとつい使ってしまうからですね。
スマホ・ゲーム依存は、多くの場合、早期に発見し、治療を開始することで治療の成果も早く現れます。逆に、発見が遅れれば遅れるほど、治療は難しくなり、回復しにくくなると言えるでしょう。

――では、医療機関ではどのような治療が行われるんでしょうか。

樋口:
まず、医師が患者さんの症状や健康状態、日常生活をチェックし、それをもとに治療方針を立てます。そして、その方針に沿って、定期的にフォローアップしていくことになります。
また、スマホ依存・ゲーム依存では、動かないことから筋力や体力の低下、骨粗しょう症が起こっていることもあります。血液検査や骨密度などを測って健康状態を調べ、患者さんにその現実を伝えることで治療のモチベーションが上がります。

――治療は、薬での治療になるんでしょうか。

樋口:
いえ、スマホ依存やゲーム依存に使用できる治療薬は存在しません。これは世界的に存在しません。ただし、依存に「こころの病気」が合併している場合、その病気の治療薬は使用します。例えば、うつ病や不安症が合併していれば、必要に応じてその治療薬を処方します。

――では、スマホ依存やゲーム依存は、どのようにして治療を行うんでしょうか。

樋口:
「診察」「カウンセリング」「デイケア」などを行っていきます。これらを受けてもうまくいかない場合は「入院治療」を勧めます。

――診察、カウンセリングではどのようなことが行われるんですか。

樋口:
医師の診察では、患者さんの症状などから、依存や、合併するこころの病気などの診断を行います。また、診断に加えて、患者さんやご家族の状況なども踏まえて治療の方向性を決めていきます。
カウンセリングは、通常「公認心理師」によって行われます。患者さんに寄り添い、彼らの言い分や考え方を受け入れながら、よりよい生活を目指して指導し、行動の変化を支援していくのがカウンセリングの目的です。
最近は多くの治療施設で「認知行動療法」をベースにした治療プログラムが行われています。認知行動療法は、患者さんのネット・ゲーム、依存に対する考え方を修正し、そのつきあい方や今後の生活について考えていく内容で、世界的にその有効性が示されています。この治療は、個別のカウンセリングや、患者さん数名による集団治療の中で行われています。我々の施設では、全11回のセッションを2週間~4週間ごとに実施しています。

――デイケアというのは、どんな治療なんでしょうか。

樋口:
病院に朝から夕方までいてもらい、その間に、集団で運動したり、食事したり、ディスカッションなどを行ったりします。
卓球やバドミントンなどのスポーツをすることで、体力が低下している、と感じたり、ゲーム以外にも楽しいことがあることを実感してもらいます。
また、「どのようにしてスマホ時間を減らすのか」「ゲーム以外の活動を充実させる方法」というようなテーマで話し合っていきます。その際、スマホ依存・ゲーム依存から回復された方にも参加いただき、体験談を語ってもらうこともあります。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

樋口:
依存が心配な場合は、まずは受診を。受診に早すぎることはありません。


【放送】
2023/12/15 「マイあさ!」

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24/04/19まで

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