「記憶力や意欲が低下する? スマホ・ゲーム依存」④ ~子どもにはとくに注意!~

24/04/18まで

健康ライフ

放送日:2023/12/14

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ

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24/04/18まで

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【出演者】
樋口:樋口進さん(久里浜医療センター 名誉院長)
聞き手:福島佑理 キャスター

中高生に加えて小学生以下の患者も増加

――スマホ依存やゲーム依存は、子どもに危険性が高いということなんでしょうか。

樋口:
実際、子どもや中高生の患者が増えています。厚生労働省の調査では、2012年、ネット依存が疑われる中高生は52万人でした。5年後の2017年には、ほぼ倍の93万人にまで増えていました。
スマホが一般的に普及し、コロナ禍での行動制限の影響もあり、中高生のスマホ依存やゲーム依存は増えていると考えられています。
また最近、小学生以下の患者も増えています。私どものネット依存外来を受診した12歳以下の患者は、2016年にはゼロだったのですが、その後、毎年のように増えていて、2022年にはおよそ5人に1人がこのような年少の患者となっています。

――こうした状況では、子どもは特にスマホやゲームに依存しやすいと考えていいんでしょうか。

樋口:
はい。幼少の頃からネットやスマホを使っている、いわゆる「スマホネイティブ世代」の若者は、スマホで他者と常につながっていることが日常になっています。さらに、ゲームはこの世代に共通の楽しみであり、ゲームを通じたつながりや競争がそこにあります。
一方で、発達段階にある10代の脳は刺激を強く求めており、刺激に対するブレーキがかかりにくい状態にあり、スマホやゲームの過剰使用から依存に発展しやすいことがわかっています。

――特に、10代のお子さんはスマホやゲームに依存しやすい特性がある、ということなんですね。

子どもの学力に悪影響?

樋口:
さらに、「子どもとスマホ」について興味深い研究が報告されています。スマホの使い過ぎがお子さんの学力に悪い影響を与える、という内容の研究です。

――スマホが学力に悪い影響を与える……、どういうことなんでしょうか。

樋口:
仙台市の小中学生7万人を対象に、スマホ使用と学力の関係を調べ、スマホの使用時間とテストの偏差値をグラフ化したところ、最も点数が高いのは“スマホを全く使わない”もしくは“1時間未満”という生徒たちでした。スマホを使う時間が長ければ長いほど、平均点が下がっていく傾向が見られました。
点数が下がっているのは勉強していないからなのでは、と思われるかもしれませんが、調査した生徒たちの勉強時間はほぼ同じだった、とのことです。

――勉強時間はほぼ同じでも、スマホを使う時間が長い子どもほど平均点が低い傾向にあった、ということなんですね。これ、どういうことなんでしょうか。

樋口:
謎を解くため、約220人の脳を磁気共鳴画像装置、これ、“MRI”といいますけれども、それで観察し、脳の認知機能を担う「灰白質(かいはくしつ)」と、情報処理能力に関わる「白質(はくしつ)」の体積の3年間の増加量を調べました。その結果、インターネットを利用する頻度が高い子どもほど、灰白質も白質も増加量が少ないことが分かりました。特に思考や記憶、コミュニケーションに大事な働きを持つ「前頭前野(ぜんとうぜんや)」での成長の差が大きいことも明らかになったわけです。
どうして脳の体積が増えないかについては、現在研究が進んでいます。1つの理由として、スマホに依存すると、スマホで検索して調べてしまい、脳の血流量や発達が阻害されるのではないか、と考えられています。

――子どもの脳はスマホやゲーム依存になりやすく、さらには影響も受けやすい、ということなんですね。

子どもと一緒にルールを決めよう

――どう予防するといいんでしょうか。

樋口:
子どものスマホ・ゲーム依存を予防する方法としてまず有効なのが、スマホを使う年齢をできるだけ遅くすることです。スマホのように、依存性のあるものの使用開始年齢が早ければ早いほど、後に依存のリスクが高くなることが分かっています。
しかし、残念ながら、いつから持たせたらよいのかに関してははっきりと分かっていません。また、子どもとの連絡手段や、もしものときの現在地把握のために親が子どもにスマホを持たせるケースも多く、制限するのは難しい状況にあります。

――では、お子さんのいる家庭ではどうしたらいいんでしょうか。

樋口:
1日のゲーム時間や、ゲームができる時間帯・場所を明確に決めることが有効です。その際、あまり細かく決めないほうが、子どもたちはよく守れると思います。また決める際には、子どもの意向も取り入れることが大事です。

――子どもの意向も取り入れることが大事なんですね。これはどうしてでしょうか。

樋口:
一方的にルールを押しつけてしまうと、反発心ばかり芽生えてしまいます。また、ルールを決めては破られる、の繰り返しだと、家族も消耗してしまいます。ルール作りの際には必ず本人も参加してもらい、どうしてそのルールが必要なのかを共に考えて決めていくことが大事なんですね。

――そのほかに、気をつけたほうがいいことはありますか。

樋口:
両親が、スマホの使い方のよい見本を示すことが重要です。例えば、両親みずからスマホの時間を制限して、それをきちっと守っていく。それを子どもたちに示していく、と、そういうことですね。
また、目標を達成できたら必ず褒めてあげてください。褒めて、子どもたちのモチベーションを上げて、さらにスマホやゲーム時間が減らせるように導いていきましょう。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

樋口:
子どもは依存に陥りやすい。予防と対処を考えて。


【放送】
2023/12/14 「マイあさ!」

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24/04/18まで

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