「記憶力や意欲が低下する? スマホ・ゲーム依存」② ~依存で起きる不調とは~

24/04/16まで

健康ライフ

放送日:2023/12/12

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ

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24/04/16まで

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【出演者】
樋口:樋口進さん(久里浜医療センター 名誉院長)
聞き手:福島佑理 キャスター

依存状態になると、健康面や人間関係に問題が起こる

――スマートフォンは身近なものとなっていて、ゲームやSNSなどに依存状態になりやすいということでした。
依存状態になると、どんな不調につながるんでしょうか。

樋口:
「スマホ依存」や「ゲーム依存」になると、体や心といった健康面や、家族や社会といった人間関係に問題が起こります。

――体と心、さらには人間関係の問題にもつながるんですね。

体の問題

――それぞれ詳しく教えてください。

樋口:
まずは「体の問題」。過剰使用により、栄養が偏った食生活を続けたりすることで、栄養失調になることがあります。また、運動不足により体力低下、骨密度低下が起きます。

――栄養失調や、骨密度の低下にもつながることがあるんですね。

樋口:
依存に陥っている方の多くが、ゲーム中は手を離さず、時間がもったいないと感じられ、食事はなるべく簡単なもので済ませてしまう、といいます。画面を見ながら食べられるカップめんや菓子パンが主要な食事、となりやすい傾向があります。こうした食生活を続けていると、栄養が偏ってしまい、低栄養状態になってしまいます。
また、ネット依存の方は部屋にこもってひたすらネットやゲームをするわけですから、ほぼ運動らしい運動をしていないため、筋力や運動機能が著しく低下してしまいます。それから、太陽の光を浴びないこともあり、骨粗しょう症の割合が高くなります。
さらに、体をほとんど動かさないため、血液が固まりやすくなってしまいます。血液中の“血栓”、これは血液の塊なんですけれども、これができやすい状態になっているんですね。海外では、「オンラインゲームを続けていたことによるエコノミークラス症候群」の発症事例もあります。

――エコノミークラス症候群につながることもあるんですね。それはちょっと怖いですね。

樋口:
それから、スマホのように小さな画面を近距離で長時間見ているために、近視になる人の割合が高いです。また、頭を前に倒す姿勢を長時間続けることにより、首の痛みや肩こり、腰痛を訴える人も増えているといわれています。

こころの問題

――そして次の「こころの問題」、これはどんな問題でしょうか。

樋口:
依存で起きる「こころの問題」としては、睡眠障害や、イライラしたり、無気力になったりすることがあります。さらに、うつ状態などの問題が生じることがあります。

――具体的には、どういったことが起こるんでしょうか。

樋口:
夜遅い時間まで友達とSNSで連絡を取ったり、時間を忘れてゲームに夢中になるため、睡眠時間の減少がみられます。その結果、疲労感の蓄積、昼間の眠気の問題になります。記憶力の低下も起こりえます。
また、寝る前にスマホを使うことで、光刺激を受けます。その結果、体内時計を調節しているメラトニンの分泌が低下し、寝つきが悪い、朝起きられないなどの症状を引き起こします。その結果、昼夜逆転の生活になることも少なくありません。

――“うつ”につながってしまうこともあるんですか。

樋口:
スマホやネットに依存してしまうことで、うつ病や、うつ病に似た症状を引き起こすこともあります。その理由の1つとして考えられるのが、依存による生活リズムの乱れです。
また、逆にうつ傾向のある人は、手っとり早くうつによるストレスから逃れるために、スマホやゲームに没頭することもよく見られます。

――脳にも影響があるんですね。

樋口:
はい。ゲーム依存の患者さんの脳では、ゲームを見ると脳に異常な反応が起こります。これは、アルコール依存やギャンブル依存の患者さんでも確認できる、同様の異常反応です。脳に異常な反応が起きると、ゲームをもっとしたい、遊びたい、などの衝動的な欲求に襲われ、ますます依存状態から抜け出せなくなります。
このような依存状態が続くと、「理性」をつかさどっている前頭前野(ぜんとうぜんや)の機能が低下し、ゲームに対しての欲求がさらにエスカレートしていくわけです。

人間関係の問題

――最後の「人間関係の問題」、これはどんな問題でしょうか。

樋口:
家族がネットを強制的にやめさせたり、注意したりすると、暴言、暴力をふるうなどして家族関係が悪化することがよくあります。
また学生の場合は、ネットを優先してしまい、遅刻、成績不振、不登校などになることがあります。中には、退学しなければならなくなったケースもあります。
対人コミュニケーションに苦手意識のある人は、ゲームに没頭しやすくなる傾向があります。さらに、オンラインでのコミュニケーションに居場所を見つけることに偏りがちになると、ますますネット・ゲームに依存していくことになります。

問題が現れたら

――体やこころ、そして人間関係に問題が現れたら、どうしたらいいでしょうか。

樋口:
自分や家族だけで解決しようとせず、医療機関や外部の方に支援を求めることが大切です。最寄りの「精神保健福祉センター」や「保健所」に問い合わせてみるとよいでしょう。
学校の場合、「スクールカウンセラー」に相談してみる方法もあります。
ネットやゲーム依存の治療は「全国でおよそ130か所の医療機関」で受けることができます。また、最近はそれ以外に「小児科」などでもネット依存の治療を行っている所があります。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

樋口:
スマホ・ゲーム依存は、こころと体、人間関係に問題が起きる。医療機関や外部に助けを求めよう。


【放送】
2023/12/12 「マイあさ!」

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