「記憶力や意欲が低下する? スマホ・ゲーム依存」③ ~やめるよりも“減らす”努力を~

24/04/18まで

健康ライフ

放送日:2023/12/13

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ

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24/04/18まで

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【出演者】
樋口:樋口進さん(久里浜医療センター 名誉院長)
聞き手:福島佑理 キャスター

昨今、スマホやネットなしの生活は成り立たない

――やめることよりも、減らすほうがいいんでしょうか。

樋口:
アルコールやギャンブルなどの依存については、基本的にはやめる、禁止することを目標としています。それは“再発”、つまり、脳が依存状態を記憶していて、使い始めればすぐに以前の状態に戻ってしまう、という特性があるからです。

――スマホやゲームでは、やめる、禁止するではなく「減らす」でもいいんでしょうか。

樋口:
はい。スマホやゲームをやめることができれば、それが実は理想なんですね。しかし昨今では、スマホやネットなしの生活は成り立ちません。
ゲームについては、依存している多くのケースが青少年です。彼らは、ゲームをゼロにすることにはまず間違いなく応じません。両親がスマホやゲーム機を取り上げたり、Wi-Fiを切断したりすると、暴力的になったりして両親が対応できなくなってしまいます。
また、我々治療者がゲーム断ちを強要すると、治療から速やかにドロップアウトしてしまいます。ゲーム依存の治療目標が「減らすこと」というのは、一種の妥協の産物と考えてください。
以上のような理由から、使用時間を少しずつ減らしていくことを目標にします。

スマホ・ゲームの時間を減らす4つのコツ

――ただ、減らすだけでも難しいことですよね。

樋口:
4つのコツがあるので、ご紹介します。

――では、スマホ・ゲームの時間を減らす4つのコツ、1つ目を教えてください。

樋口:
■ やってはいけない時間を作る

例えば、食事中はスマホを見ない、ベッドに入ったらスマホの電源を切る、といったような「スマホをやってはいけない時間を決める」ことです。
最初は短時間でもかまいません。この時間だけは絶対にしないと決めて、まずはそれだけを守る努力をしてください。

――やらない時間を決めて、それを守る努力をする、ということなんですね。
続いて、2つ目のコツ、お願いします。

樋口:
■ やりやすいことから始める

――どういうことでしょうか。

樋口:
例えば、あなたが通勤時間にスマホを見ない、と決めたとします。でも、これまで数か月、もしくは数年、電車内でほとんど欠かさずスマホを見てきたあなたが、いきなりスマホ断ちできるでしょうか。スマホに代わる楽しみを見つけるのは難しいですよね。
こうした成功のカギは、あくまでも実現可能性が高いことから削っていく、ということです。「ご自分のライフスタイルを考えて、やりやすく、無理のないことから始めていく」ことが大事ですね。
具体的には、ベッドにはスマホを持っていかないとか、それから、夜は別の部屋で充電をするとか、そういうようなことですね。

――いきなり高い目標ではなく、実践しやすいことから始めよう、ということですね。
では、3つ目のコツを教えてください。

樋口:
■ 別の行動に置き換える

スマホやゲームをやらない時間を設定したときには、スマホに代わる何かが必要になります。実はこれは、言うのは簡単ですけれど難しいですよね。しかしすごく大事なんです。

――具体的にはどうしたらいいでしょうか。

樋口:
例えば、本を読む、音楽を聴く、ジョギングをする、ストレッチをする、などどんなことでもかまいません。「置き換えた何かに十分な楽しみを見いだすことができれば、スマホやゲームを行う時間は自然と少なくなっていく」と思います。

――スマホを見る代わりに本を読む、運動をするなど別の行動に置き換えるといい、ということなんですね。
では、最後の4つ目をお願いします。

樋口:
■ 減らしていることを周りに宣言する

「自分がスマホの時間を減らす努力をしていることを、積極的に周囲に言うようにしましょう」。そうすることで、自分自身がこの問題に真剣に取り組んでいるという、前向きな感覚を持つことができます。また、周囲に伝えることで、行動が見守られている、注目されているという意識が生まれ、脱落を防止することができます。

――確かに、自分一人では難しくても、周りから見られていると思うと、やらなくちゃという気持ちになるかもしれませんね。

樋口:
はい。ご家族と同居している場合は、パートナーや親などの協力が大きいですよね。できれば、家族全員でスマホを使わない時間を共有して、その時間を家族で話す時間などに変えていただくとよいでしょう。

――ただ、1人暮らしの方はどうしたらいいでしょうか。

樋口:
1人暮らしをしている成人の場合は、残念ながら、本人でルールを決めて守っていくしかないですよね。ただ、依存の傾向を持つ方が、自分自身を律していくことは困難なことも事実です。
私たちがおすすめしているのは、「スイミングや、スポーツクラブでのトレーニング」です。スマホをロッカーなどに隔離することで、遠ざけることができます。さらに健康作りにもなるので、一石二鳥というわけですね。

――こうした4つのコツを使って、うまくスマホを見る時間を減らしていく、ということですね。

樋口:
重要なことは、スマホやゲームの時間を減らすことを本人がみずから決めて、実際に減らしたと実感することです。この達成感が、回復への流れを確かなものにしてくれます。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

樋口:
スマホやゲームの時間、4つのコツで上手に減らそう。


【放送】
2023/12/13 「マイあさ!」

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24/04/18まで

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