「中高年の心と体を守る」① ~コロナ禍のメンタルヘルス 変わったこと~

24/03/25まで

健康ライフ

放送日:2023/11/13

#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ#コロナウイルス

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24/03/25まで

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【出演者】
竹中:竹中晃二さん(早稲田大学 名誉教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

当たり前と思っていた生活スタイル、コロナ禍で一変

――私も、精神的な疲れから体調不良につながることも多くなったように思います。中高年で気をつけることはありますか。

竹中:
中高年は、自分の仕事と部下の管理、2つの責務を同時にこなさなければなりません。一方で、年々、体力や気力が低下していくという自覚があり、常に将来への不安を感じています。そうした中、「うつ」など心を病む人が多いのが現実です。

今週は、中高年の心と体を守りつつ、ポジティブなメンタルヘルスをどのように作るかなど、自分で自分の健康を守るすべを考えていこうと思います。

――竹中さんは、東日本大震災のときには、東北で小中学生のメンタルケアも行っていらっしゃいました。今回のシリーズでは、その経験談も踏まえてお話しいただこうと思っています。
では、今回のテーマは「コロナ禍のメンタルヘルス 変わったこと」です。竹中さん、新型コロナの流行というのは、私たちの精神面で大きな影響があったんでしょうか。

竹中:
はい。もちろん大きな影響がありました。新型コロナウイルス感染症の拡大により、当たり前だと思っていた生活スタイルは一変しました。仕事のスタイルも変わって、今まで経験しなかった不安や焦りを感じている人も少なくはありません。例えば“オンライン会議”。数も増えて、内容は記憶に残らず、忘れがちになっています。そして、一生懸命メモを取るのですが、情報が多すぎて整理ができていません。
“働き方改革”と世間では言っているのですが、実は、すでに働き方は大きく変わっているのです。
また、コロナ禍で効率的になっている、仕事量が減っていると思われがちですが、実際は逆で、ついつい働き過ぎている中高年が多くなっています。

――いやあ、そうですよね。確かに、コロナ前とは仕事のしかた自体が大きく変わっていますよね。

竹中:
しかも、メンタルヘルスの維持に大事なコミュニケーションのやり方が大きく変わってきています。
オンラインで業務自体は効率的になったのかもしれませんが、それ以外のことに関する情報交換が少なくなりました。コミュニケーションもずいぶん減ってしまいました。

――確かに、リモートワークが増えると雑談も減りますし、飲みに行く機会もやはりずいぶん少なくなりましたよねえ。

竹中:
こういうことによって、職場や同僚の状態や様子が分かりにくくなっています。情報が限定され、コミュニケーションが減ることによって、相手の意図などを悪く解釈してしまうなど、人間関係に弊害が見られています。
本来、コミュニケーションを取ることによって、人間関係に伴うストレスを軽減したり、割りふりなど仕事の負担を軽くする効果が生まれていました。メンタルヘルスにとっては大事なことなんですが、対面でのコミュニケーションが少なくなったことは問題だと考えています。

コミュニケーション不足は気分障害につながりやすい

――うーん。そのようなコミュニケーション不足が、メンタルヘルスにどう影響するんですか。

竹中:
「気分障害」につながっていきます。
気分の落ち込みや、やる気が出ない、などの軽度な気分障害を感じている人は全体の4分の1という報告もあり、その75%は専門的な治療を受けずにいます。こうした気分症状への影響は仕事の効率を低下させ、健全な人間関係を損なうことにつながります。多くの人が抱える気分障害を改善・回復することができれば、心と体の健康をもっとよくすることができます。
大事なことは「早めに気付き、対処し、予防する」ことです。

――気分の落ち込みだとか、やる気が出ないという気分障害ですけども、どう対処すればいいですか。

竹中:
嫌なことがあって気分が落ち込むことは、あって当然です。ないという人はいないと思います。そこで、嫌なことがあったとしても、気分が落ち込む一方で「気分に報酬をあげて、それを改善する」ことが重要です。

――気分に報酬をあげる、ですか。

竹中:
はい。「よいことに目を向ける」のです。
私たちは嫌なこと、意に沿わぬことがあると、「ネガティブな反すう」といって、そのことばかり何回も考えてしまいます。最初はとるに足らないことであっても、ネガティブな反すうがあると頭の中でそのことが大きくなって、耐えられなくなってしまいます。そこで、楽しいこと、好きなこと、充実感があることにも目を向けるようにすることで、ネガティブな反すうを邪魔してあげるのです。
例えば、早朝に窓を開けて深呼吸をする、旅行の計画を立てる、しばらく会っていなかった友人と電話で話すことも「ポジティブな経験」ですね。

――確かに、コロナで世の中が変わっていくのはしようがないので、よいことに目を向けるっていうのが大切なんですね。

竹中:
不便なこと、しんどいこと、嫌なことは誰にでもあることです。コロナ禍では、まさにそういうことが増えていました。でも、逆に、きっとよいこともあったはずです。何か、充実感ややりがいの持てるものを続けていくことの重要さに気がついた、など、よいこともあったのではないでしょうか。
よいことを数えてみませんか。新しい面にもっと目を向けるべきです。

――では、最後にきょうのポイントをお願いします。

竹中:
嫌なこと、しんどいことは誰にでもあります。でも、よいことも必ずあるのです。


【放送】
2023/11/13 「マイあさ!」

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24/03/25まで

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