「頭痛は減らせる!」③ ~つらい片頭痛を注射で予防~

24/02/28まで

健康ライフ

放送日:2023/11/01

#医療・健康#カラダのハナシ

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24/02/28まで

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【出演者】
五十嵐:五十嵐久佳さん(北里大学客員教授 日本頭痛学会理事)
聞き手:福島佑理 キャスター

注射薬のメリット・デメリット

――前回のお話で、2021年に、新しいタイプの片頭痛予防薬が登場したと伺いました。注射で頭痛が予防できるんですね。これはどんな薬なんですか。

五十嵐:
片頭痛が起こる仕組みに直接作用する予防薬なんです。「CGRP関連抗体薬」と呼ばれています。3種類が発売されていまして、いずれも上腕部や太もも、腹部などへの皮下注射薬です。

――どんな仕組みなんでしょうか。

五十嵐:
片頭痛の痛みにかかわるとされている「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」の働きを阻害する薬です。このCGRPは三叉(さ)神経から放出されて、血管を拡張させたり血管周囲に炎症を起こす物質なんですね。片頭痛が起こっているときに、血液や唾液の中に増えることが分かっています。
CGRP関連抗体薬は、CGRPそのものや、血管を広げたり縮めたりする血管平滑筋などにある受容体にくっつくことで、その働きを阻害します。

――1度注射すると、どのくらいの期間、効果があるんでしょうか。

五十嵐:
注射薬は「ガルカネズマブ」「フレマネズマブ」「エレヌマブ」と3つあるんですが、どれも基本的には月に1回、または4週間に1回、注射をしていきます。

――注射には、ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブの3種類があるんですね。

五十嵐:
ガルカネズマブは、効果を早めるために最初は2本打ちます。
フレマネズマブは、12週間ごとにまとめて3本ずつ注射していく、ということも可能です。

――1度打てば、頭痛は治るんですか。

五十嵐:
なかなかそういうわけにいかないんですが、最初の1週間ぐらいで効果を実感する方もいらっしゃいます。
約半数の方は1か月ほどで、頭痛が起こる日数が半分以下になりますし、全く頭痛が起こらなくなるという方も1割弱ほどいらっしゃいます。
先に使い始めたヨーロッパでは、1年から1年半ほど使うのがよいとされています。ですから、注射薬で効果を実感なさっている方は、やはり1年は続けていただきたいなというふうに思います。

――つらい頭痛が全く起こらなくなるという方もいらっしゃる、ということですね。副作用やデメリットはないんでしょうか。

五十嵐:
重篤(じゅうとく)な副作用としましては「アナフィラキシー」がありますが、発生頻度は非常に少ないです。ですから、安全性は高いと考えられています。
注射を打った部位が腫れたり、かゆくなることは大体20%ぐらいあります。一番の難点は費用が高いことで、3種類とも、3割負担で1本1万3,000円ほどします。

――一般的な薬に比べるとやや高価なようにも思いますけれども、この予防薬を使う方はどのくらい増えているんでしょうか。また、実際使われた方からはどのような声が届いていますか。

五十嵐:
私の外来では、半数ぐらいの片頭痛の方が注射薬を使っています。「今まで、頭痛はあるのが当たり前だと思って暮らしていたが、それが本当は当たり前じゃなかったんだ」というふうにお気付きになったり、また、「子どもから、お母さんが寝込まないからうれしい、って言われました」という声もよく聞かれます。
片頭痛がある方というのは、頭痛に対して不安のある生活が日常になっていらっしゃる方が多いんですね。その不安、「予期不安」というんですが、それが減って前向きになる方が多いようです。

注射薬は誰にでも使えるのか、効果はあるのか

――頭痛に効果があるというのはもちろんのこと、頭痛に対する不安が和らぐというのは、心理的にもいい影響がありそうですよね。この薬は誰でも使えるんでしょうか。

五十嵐:
今、私たちがこの予防薬をおすすめするのは、次に該当する方です。
● 片頭痛が1か月に平均4日以上あり、頭痛が起こったときにのむ、例えばトリプタンなどのお薬の効果が乏しい方
● 経口予防薬の効果が不十分、または副作用などで使用できない方

まだ新しいお薬で、十分な情報は得られていませんので、妊娠中や妊娠の可能性がある人にはおすすめしておりません。また今のところ、18歳未満の患者さんでは臨床試験データがありませんので、使用していません。

――この薬は、誰にでも効果があるんでしょうか。

五十嵐:
3種類のどのお薬を使っても効果が実感できないという方も、実は1~2割ほどいるといわれています。そういう場合には、片頭痛以外の原因がある可能性、例えば「緊張型頭痛」を合併したりですとかそういう可能性を考えたり、また、片頭痛の「誘因」の中で取り除けるものがあれば、できるだけ避ける方法を探します。

――片頭痛の誘因とは何でしょうか。

五十嵐:
片頭痛が起こるきっかけになるものが、人それぞれにあるわけです。特に関係が深いとされているのは、女性では「女性ホルモン」です。特に「エストロゲン」という女性ホルモンの血中濃度が低下する、その変動によって起こりやすい。女性の片頭痛の患者さんでは、約半数の方が月経数日前から月経中に起こりやすいんです。
その他にも「空腹」や「寝不足」「寝過ぎ」「ストレス」、また「ストレスから解放されたとき」ですね。こういうときにも片頭痛が起こりやすいんです。それから「天候」「低気圧」が関係するという人も多いです。あと「まぶしい光」ですとか「騒音」「強いにおい」、こういうものが苦手という方もいらっしゃいます。
こうした、頭痛が起こるきっかけを見つけて、うまくそれを対処していくことができればいいな、というふうに思います。

――その具体的な方法については、次回、詳しく伺います。では最後に、きょうのポイントをお願いします。

五十嵐:
つらい片頭痛に悩んでいるなら、注射を検討してみましょう。


【放送】
2023/11/01 「マイあさ!」

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24/02/28まで

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