「突然死も招く心臓・血管の病」⑤ ~中高年に多い 大動脈解離~

23/12/08まで

健康ライフ

放送日:2023/08/11

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
清水:清水渉さん(日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

大動脈解離(かいり)とは

――清水さん、「大動脈解離(かいり)」とはどういった病気なんでしょうか。

清水:
突然、背中を中心に、今まで経験したことがないような激しい痛みを感じ、それが持続する病気です。

――今まで経験したことのないような激しい痛み……これ、前兆のようなものはあるんですか。

清水:
「大動脈解離」には前兆といえるようなものはなく、発症の予測は極めて困難です。
万が一、何の前触れもなく背中や胸に激痛が起こったら、迷わず救急車を呼んでください。一刻も早く医療機関を受診してもらうことが、とても大切です。

――まさに命に関わる症状、だということですね。

大動脈解離はどういった病気か

――大動脈解離、どういったものか詳しく教えてください。

清水:
大動脈解離についてお話しする前に、まず、「大動脈」についてご説明いたします。
大動脈は、心臓の左心室という部屋から出る動脈で、血液を全身に運ぶおおもとの血管です。大動脈は「内膜」「中膜」「外膜」の3層からなっていて、太さは成人で直径約2㎝、長さは約50㎝あります。

――私たちの体の、まさに"大動脈"ということですね。

清水:
そうです。心臓から流れる血液は、この大動脈から、頭や上半身、下半身に流れる「動脈」へと枝分かれしていくので、とても大切な血管です。

――その大切な血管である大動脈の病気の1つが大動脈解離、ということになると思うんですけれども、どんな病気なんでしょうか。

清水:
大動脈解離とは、大動脈の一番内側にある内膜に亀裂が入って、その亀裂から、血液が内膜と中膜の層の間に入っていきます。この血液が流れ込む圧力によって、内膜と中膜の間が裂けていき、その間に血液がたまっていく。これが大動脈解離という病気です。
発症が多い年齢は、男女とも大体70歳代といわれていますが、40歳代や50歳代で発症することもあります。

――大動脈の、内膜と中膜の間が縦方向に裂けていくかたちになるんですかね。その間に血液がたまっていくということなんですけども、たまっていくと、そのあとどうなるんですか。

清水:
血液がたまると、大動脈が破裂することもあります。大動脈が破裂してしまうと、病院に到着前に命を落とす患者数は約6割。破裂しなくても、治療せず裂けたまま放っておいた場合は、発症後48時間以内に約50%、1週間以内に70%、2週間以内に80%の方が亡くなるという危険な病気です。

――いやあ……、今まで経験したことのないような痛みを感じながら死に至る、ということですけれども、清水さん、何らかの発症のシグナルのようなものはないんでしょうか。

清水:
大動脈解離の発症は、夏場には少なく、冬場に多い傾向があります。また、夜間よりも日中に多く、特に午前中に発症することが多いといわれています。

――冬場に多く、日中、特に午前中に発症することが多い。ただ、これ、前兆というものはないわけですよね。

特に気をつけたい、高血圧と精神的なストレス

――突然発症する大動脈解離ですけれども、何か私たちにできる予防法などはないでしょうか。

清水:
この大動脈解離の原因は、動脈硬化、高血圧、喫煙、ストレス、高脂血症、糖尿病、それから睡眠時無呼吸症候群や遺伝など、さまざまな要因が関係するというふうに考えられています。
その中でも特に「高血圧」が最も重要なリスクファクターの一つですから、血圧が気になる方は毎日血圧を測定して、変化が見られるような場合にはかかりつけ医に相談するのもよいかと思います。

――ふだんの生活習慣、あるいは食生活が大切になりそうですね。そのほか、気をつけることはありますか。

清水:
入浴の際に、熱すぎるお湯にはつからないこと。熱いお湯というのは心臓に負担がかかり、血圧も上がります。
それから、便秘にも注意してください。息むと血圧が上がってしまいます。
また、十分な睡眠と休養をとるようにしてください。最近は社会生活の中で過労や緊張、精神的なストレスを受けることが多々ありますが、なるべくそういったものを取り除くようにしてください。
規則的な生活を送り、休養を十分にとって、疲れを残さないようにしてください。
軽い運動や散歩、ラジオ体操などは精神的なストレスをとるだけでなく、血液の流れをよくし、肥満予防にもつながります。ただ、個人差がありますので、息切れやどうき、ふらつきなどの症状があるときには、あまり無理はしないでください。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

清水:
大動脈解離の突然死を防ぐために、生活習慣を見直しましょう。特に、高血圧に注意です。


【放送】
2023/08/11 「マイあさ!」

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23/12/08まで

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