「突然死も招く心臓・血管の病」① ~危険な不整脈 心室細動~

23/12/04まで

健康ライフ

放送日:2023/08/07

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
清水:清水渉さん(日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

「突然死」の定義とは

――まず、「突然死」と聞くと何か恐ろしい気もするんですけれども、突然死の定義などはあるんでしょうか。

清水:
「突然死」とは、何らかの病気によって、発症から24時間以内に亡くなってしまうことをいいます。その突然死のおよそ6割が「心臓突然死」といわれています。

――心臓に関わる突然死、そんなに多いんですか。

清水:
日本では、年間およそ8万人ほどの方が心臓突然死で亡くなっています。
心臓突然死は予測することが難しいんですけれども、体から何らかのサインが出ていることもあります。そのサインを見逃さないようにしてください。

心室細動はどういった病気か

――聞き慣れない病名なんですけども、「心室細動(しんしつさいどう)」というのはどういった病気なんでしょうか。

清水:
「心室細動」は、発症から数分で死に至る可能性があります。心臓の部屋のうち、血液を全身や肺に送り出す「心室」という部屋が細かく震える「不整脈」です。
不規則に、小刻みにけいれんするので、全身に血液が送り出せなくなり、いわゆる「心停止状態」となります。全身へ血液を送り出せず、脳への血流もなくなるために、最初に意識消失や体のけいれんが起きます。その後、数分で呼吸が止まり、数十分で脳などに障害を来します。危険な状態に陥ります。

――心臓突然死の中でも、心室細動で亡くなる方は多いんですか。

清水:
心筋梗塞や心筋症などの、心臓の病気のある方が突然死する場合は、多くが心室細動が原因というふうに考えられています。

――どんな方が心室細動を起こしやすいんでしょうか。

清水:
心室細動を起こす方は、心筋梗塞や心筋症で心臓の働きが悪くなっている方や、大動脈弁狭窄(きょうさく)症といった心臓の病気がある方です。
また、明らかな心臓の病気のない方に突然心室細動が起こることもあり、「特発性心室細動」といわれています。
1分間に150回~200回、心室が興奮する「心室頻拍(ひんぱく)」、これは心室細動につながるリスクのある、危険な不整脈です。

――もともと心臓に病気がある方に多い、ということですかね。

清水:
多くはそうなんですけれども、遺伝的な原因も影響します。血縁者に突然死した方がいる場合は、注意が必要です。

――そうですか。ほかに気をつけておかなくてはいけないこと、ありますか。

清水:
この、心室細動による突然死は、午前中、特に9時前後が起こりやすい時間帯といわれています。心臓病があることに気付かないで、午前中にジョギングや激しい運動、あるいは過労によって心室細動を起こす方も決して少なくありません。

――朝の9時前後の時間帯、これ、どうしてなんですか。

清水:
朝は「交感神経」というのが働いて、血圧が上がったり脈拍が速くなり、心臓に負担がかかりやすくなるためです。特に、心臓に病気のある方は、朝の運動はできるだけ控えてください。

――そうなんですね。清水さん、健康診断などで“心室細動のおそれがある”など、可能性を見つけることはできるんでしょうか。

清水:
はい。健康診断などでの「心電図検査」をお勧めします。心筋梗塞や心筋症などの心臓の病気のある方は、心電図検査である程度診断がつきます。
また、心臓の病気がなくても、例えば「遺伝性不整脈」など、心室細動を起こす特徴的な心電図の異常が見つかることもありますので、心電図検査というのは有用です。
日頃から「心室期外収縮」や心室頻拍などの不整脈を持っている方は、心室細動に移行する可能性もありますので、不整脈が心配な方は医療機関で調べていただいたほうがよいと思います。

不整脈を自分で見つける「検脈」のやり方

――自分でできるチェック方法はありますか。

清水:
はい。不整脈を正確に見つけるには、病院で心電図検査を受ける必要があるんですけれども、自分で簡単にできる方法として「検脈(けんみゃく)」というのがあります。

――そのやり方、教えてください。

清水:
まず、手首にシワが出来る程度に軽く曲げます。

――手首にシワが出来るくらい……。中に曲げるわけですね。

清水:
そうですね。そして、反対の手の指3本、人さし指・中指・薬指で、手首の親指側の所を通っている“橈骨(とうこつ)動脈”という動脈があるんですけれども、これに沿って3本の指を軽く立てて、脈を測ります。

――親指側の付け根辺りですかね、手首の。ここに3本、指を当てると。

清水:
はい。そして、脈が「トン、トン、トン」と規則正しく打っていれば問題はないんですけれども、例えば「トン、トトン、トントントン」といったようにリズムが乱れている場合は、不整脈の可能性があります。
一般的に、1回の検脈にかける時間は15秒ほどで、この15秒の間に脈を数えて、それに4をかけると1分間の脈拍数になります。
1分間の脈拍数が大体50回~100回の範囲であれば、問題はありません。

――皆さんもやってみてください。

自分のために生活習慣に気をつけ、倒れた人のために救命処置を

――何か、予防のためにできる対策はありますか。

清水:
心室細動というのは、突然やって来る恐ろしい病気です。心室細動につながる心臓病にならないように、肥満、喫煙、過度の飲酒は避けるなど、生活習慣には十分気をつけるようにしてください。
また、身近で人が倒れて、意識がない場合に直面したときは、近くの方と協力して「119番通報し、救急車を呼ぶ」「AEDを探して、持ってきてもらう」などの具体的な指示をするようにしてください。

――とにかく命に関わることですから、ちゅうちょしてはいけない、ということですよね。

清水:
心室細動は、発症から数分で死に至る可能性があります。
脈が触れず、呼吸がない場合は、「救急車が到着するまで胸骨圧迫」もしくは「AEDを使用」し、救命処置を行ってください。

――では、清水さん、最後にきょうのポイントをお願いします。

清水:
心室細動、数分で死に至る危険な病気です。不整脈のある方は要注意。


【放送】
2023/08/07 「マイあさ!」

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