「突然死も招く心臓・血管の病」③ ~心筋症 心臓への負担は気をつけて~

23/12/06まで

健康ライフ

放送日:2023/08/09

#医療・健康#カラダのハナシ

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23/12/06まで

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【出演者】
清水:清水渉さん(日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

心筋症とは

――「心筋症」も心臓の病気で、命に関わるもの、ということですね。

清水:
皆さんの生活習慣とも密接に関わる病気の1つで、心臓突然死の原因の30%~35%は「心筋症」が原因とされています。欧米では心臓突然死の原因の60%~70%は、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患が原因といわれていますが、日本では心筋症の占める割合が多いとされています。

――その心筋症について、詳しく教えてください。

清水:
はい。心筋症は、心臓の筋肉の異常によって、心臓の働きに障害が起こる病気です。心臓が血液を全身に送るには、心臓の筋肉である「心筋」の働きが欠かせません。この心筋に異常が起こるのが心筋症です。

――何か、前兆や症状などは現れるんでしょうか。

清水:
代表的な症状は、息切れ、呼吸困難、体のむくみ、体重増加などです。ひどくなると夜間に突然息苦しくなって目が覚めることや、進行すると安静にしていても息切れがすることもあります。
そのほかに「肥大型心筋症」では、胸の痛み、めまい、失神を起こす場合もあります。

心筋症の代表的な病状

――今、「肥大型心筋症」とおっしゃいましたけれども、心筋症にはいくつかの病状があるんですか。

清水:
心筋症の代表的なものに、「肥大型心筋症」「拡張型心筋症」「不整脈源性右室心筋症」があります。

――それぞれ、どのようなものなのか教えてください。

清水:
心筋が厚くなるのが肥大型心筋症で、その中で特に、全身に送り出される血液の流れが妨げられるタイプが「閉塞(へいそく)性肥大型心筋症」といいます。
また、全身の臓器に血液を送る「左心室」という部屋が拡張して、収縮力が低下するのが拡張型心筋症で、これは「心不全」になりやすくなります。
どちらも、若年者から高齢者まで幅広い年齢層の患者さんがおり、心室頻拍(ひんぱく)や心室細動などの致死性不整脈による突然死を起こす可能性があります。

――そして、続いては。

清水:
不整脈源性右室心筋症は、肺に血液を送る「右心室」という部屋の心筋に異常が起こるもので、右心室の壁が薄くなったり、拡張して動きが悪くなります。右心室から、心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈が発症し、これも突然死につながることがあります。

対策・治療法について

――うーん、非常に怖い病気ですけれども、それぞれに対策はできるんでしょうか。

清水:
肥大型心筋症・拡張型心筋症については、病気の程度や突然死の危険性の高さを知るのに、心電図検査に加えて、心臓の「超音波検査」が有用です。
肥大型心筋症では、心筋の壁の厚さの程度や、左心室から全身への血液の流れにくさの程度で、治療方針や突然死のリスクがある程度分かります。
また、拡張型心筋症でも、左心室の大きさや収縮力の程度で、治療方針や突然死のリスクが同様に分かります。
不整脈源性右室心筋症は、自覚症状はあまりなく、病気に気付かず突然死する危険性もありますが、健康診断の心電図検査などをきっかけに、発見されることがあります。

――心筋症だということが分かった場合、どのような治療法があるんでしょうか。

清水:
いずれのタイプの心筋症であっても、心臓の働きを助けるための薬物治療が基本となります。例えば、心臓の機能低下による突然死を防ぐために、心臓の筋肉を保護する「β(ベータ)遮断薬」というお薬を処方します。
また最近は、心筋症が原因の心不全の治療薬として、エビデンスのある有効な薬が使えるようになってきています。むくみの程度などにより、「利尿剤」などを投与する場合もあります。
心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈や、心肺停止の既往のある方、あるいは心臓の機能が著しく低下した方では、突然死の予防目的で、植え込み型除細動器の適用となります。

――薬や治療法も出来てきている、ということですね。
清水さん、心筋症による心不全の予防として、ふだんから出来ること、ありますか。

清水:
心筋症というのは生活習慣病と密接な関係があるため、食生活の改善や、適度な運動も必要です。塩分のとり過ぎは心臓への負担をかけますので、注意してください。脂質・糖質のとり過ぎにも気をつけてください。野菜などを積極的にとり、バランスのとれた食事を心がけましょう。
残念ながら、完治が難しい病気です。適切な治療で病気の進行を抑えていけば、長生きをすることは十分可能だと思います。

――最後に、きょうのポイントをお願いします。

清水:
心筋症、適切な治療で安心な生活を送りましょう。


【放送】
2023/08/09 「マイあさ!」

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23/12/06まで

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