「突然死も招く心臓・血管の病」② ~遺伝性不整脈~

23/12/05まで

健康ライフ

放送日:2023/08/08

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
清水:清水渉さん(日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター

遺伝性不整脈とは

――「遺伝性不整脈」、聞き慣れない方も多いと思いますが。

清水:
心臓は電気刺激によって動いているんですけれども、「遺伝性不整脈」はその電気刺激に関係する遺伝子の異常によって起こる病気で、子どもから中高年まで、あらゆる年齢層の突然死の原因の1つとなります。
心臓突然死の原因として、日本を含めたアジア地域では5%~10%くらいを占めるといわれています。

――ああ、そんなに多いんですね。詳しく教えてください。

清水:
遺伝性不整脈とは、文字どおり遺伝的素因により、両親のいずれかより受け継がれて発症する病気ですが、両親のいずれも素因を持たずに、新たな変異として発症することもあります。
心臓の電気刺激に関係する遺伝子の異常により、致死性の不整脈を発症し、心臓突然死を引き起こします。

子ども・若年の頃から発症「先天性QT延長症候群」

――この遺伝性不整脈、どのような影響が起きるんですか。

清水:
まず、子どもや若年の頃から発症する「先天性QT延長症候群」という病気があります。これは主に、運動中や精神的ストレスによって、危険な不整脈である心室頻拍(ひんぱく)が起こり、時には心室細動に移行して、死に至る場合もあります。

――子どもから若い方に多いとなると、家族は心配になりますよね。その、先天性QT延長症候群の「QT」って何を指してるんですか。

清水:
心電図波形の一部分のことで、心臓が興奮するときが心電図上の「QRS波」、興奮が冷めるときが「T波」というんですが、QRS波の始めからT波の終わりまでの時間を「QT時間」といい、これが異常に長くなったものが「QT延長」ということになります。

――心臓は縮んだり広がったりしますけれども、縮んだときから広がるときまでの時間、ということですか。それが長くなるのがQT延長、という言い方をするんですね。

清水:
はい、そのとおりです。

――どのようなときに、発作などの症状が見られるんですか。

清水:
多くは運動中、特に全力疾走やマラソン、水泳中に心室頻拍発作が起こります。
また、非常に驚いたときなどのストレスや、睡眠中の大きな音などによって、急激に交感神経が緊張する場合に発作が起こる人もいます。
頻度は少ないんですが、夜間や睡眠中、安静時などに発作が出る場合もあります。

――家族や自分自身で気がつく前兆ですとか、疑わしいサインなどはあるんですか。

清水:
運動中や、精神的なストレスがかかったときに、失神、すなわち意識がなくなる発作を認める場合には、すぐに医療機関を受診してください。

――失神したり、意識が消失……気を失ったりするということですよね。発作を防ぐ手だてはあるんでしょうか。

清水:
このQT延長は、健康診断などでの心電図検査で発見することができます。心電図検査で明らかなQT延長を認める場合には「遺伝子検査」という検査をおすすめします。

――まず心電図検査が基本になる、ということですね。有効な治療法、治療薬などはあるんでしょうか。

清水:
先天性QT延長症候群では、すでに16個の遺伝子異常のタイプ、「遺伝子型(けい)」というんですけれども、これが分かっています。そのうち、頻度の高い1型から3型では、発作の誘因や有効な薬も分かっています。そのため、自分の遺伝子のタイプが分かれば、どのように生活すればよいか、どういった薬が有効なのかが分かります。
もうすでに発作を起こして、失神したことがある方は、発作を予防する薬を服用します。
心室頻拍から心室細動に移行して、心肺停止となり、救命されたような方では、「植え込み型除細動器」という装置を体内に植え込んで、突然死を予防する必要がありますので、先天性QT延長症候群と診断された方は、専門の医師に相談するようにしてください。

30歳から50歳の中年男性に多い「ブルガダ症候群」

――先天性QT延長症候群以外に、遺伝性不整脈に関係する病気はあるんでしょうか。

清水:
「ブルガダ症候群」といって、睡眠中や安静時に突然死することがある病気です。

――ブルガダ症候群、あまり聞き慣れない病気ですね。

清水:
「ぽっくり病」という、30歳から50歳の中年の男性が夜間に突然死する病気の名前をお聞きになったことがある方もいらっしゃると思いますが、そのぽっくり病の一部はブルガダ症候群が原因ではないか、というふうに考えられています。

――30歳から50歳の中年の男性が特になりやすい、ということですか。前兆やサインなど、事前にこのブルガダ症候群を見つけることはできるんでしょうか。

清水:
ブルガダ症候群では、心電図に特徴的な波形が現れるため、通常の心電図検査で発見することができます。

――こちらも心電図検査が重要になる、ということですね。治療法はありますか。

清水:
この病気に確実に効く薬は、あまりありません。突然死の予防には、植え込み型除細動器を植え込むのが確実な方法です。
心電図検査で、ブルガダ症候群に典型的な心電図波形が見つかった方は、循環器内科などの専門医に相談してください。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

清水:
遺伝性不整脈、心電図検査が重要です。


【放送】
2023/08/08 「マイあさ!」

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23/12/05まで

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