【出演者】
田邉:田邉晴山さん(救急救命東京研究所 教授)
聞き手:福島佑理 キャスター
命に関わるかもしれない「虫刺され」は?
――キャンプやハイキングに行って、虫に刺されたことがある方も多いと思うんですけれども。
田邉:
そうですね。虫刺されは大したことはない、というふうに思いがちですが、実は、時に命に関わることもあります。
代表的なのは「ハチ」ですね。毎年、20人前後の方が「アナフィラキシー」というアレルギー症状によって亡くなっています。「スズメバチ」だけでなく「アシナガバチ」「ミツバチ」、いずれも注意が必要です。
もう1つ、代表的な虫が「マダニ」です。草むらや、やぶに入ってマダニに刺されてしまうことがあります。2022年では、マダニによる感染症で12人の方が亡くなっています。
――たかが虫刺され、とは言っていられない数なんですね。
「ハチ」に注意!
――ではまず、ハチについて伺っていきます。そもそも、ハチに刺されないようにするには、どうしたらいいんでしょうか。
田邉:
福島さん、突然ですがクイズです。どちらか、正しい対策を選んでください。
ハチに狙われないようにするには?
A 明るい色の服
B 暗い色の服
どちらを選ぶといいと思いますか。
――これは……「A 明るい色の服」。……どうでしょうか。
田邉:
正解です。明るい色の服、ですね。
――やっぱり。聞いたことがあったんですよね。
明るい色の服がいいのは、どうしてなんでしょうか。
田邉:
ハチは、黒っぽいものに反応して、襲ってくる習性があります。なので、アウトドアに出かけるときは、服やバッグはできるだけ明るい色を選んだ方がいいです。こうした性質は、「ブヨ」や「アブ」も同じです。
ハチや、ハチの巣を見つけたら、刺激せずに、静かにその場を離れることが大切です。
――ハチに刺されたら、どうしたらいいでしょうか。
田邉:
■ まずは傷口を見て、ハチの針や、毒の入った袋が付いていないかを確認します。針が残っていたら、それを取り除きます。爪や、クレジットカードのようなプラスチックカードで、皮膚からこすり取るといいでしょう
■ ピンセットなどを使うときは、毒の入った袋ではなくて、針のできるだけ先をつかんで、取り除きます
■ 針がなかった場合、また針を取ったあとは、水で洗い流してください。ペットボトルの水でも結構です。毒を洗い流す効果と、冷やして痛みを感じにくくする効果が期待できます
■ せっけんがあれば、それを使って洗い流します
■ 氷水などがあれば、それで冷やすと、痛みや腫れを抑えることができます
これはハチに限らず、アブやブヨでも共通です。
ハチに刺されたところに、アンモニア・尿をかけるという、昔の言い伝えがありますが、これは間違いです。
ハチの毒は中和できず、尿は時間がたてばたつほど雑菌が増えますので、やめてください。
――ハチに刺されたとき、どんな薬を使ったらいいでしょうか。
田邉:
虫に刺されたときの治療は、「軽症であれば、市販のかゆみ止めの塗り薬でもよい」と思います。
赤みや、かゆみが強い場合は、ステロイドの塗り薬が必要ですので、「薬局で相談する」のがよいでしょう。
症状が強い場合や、応急手当でよくならない場合は、「早めに皮膚科を受診」してください。
「マダニ」に注意!
――続いて気をつけたい虫は、マダニですね。
田邉:
そうですね。マダニは、大きさは3㎜から8㎜ほどで、山・草むら・畑、森の近くのキャンプ場などに生息しています。
マダニの怖さは、かまれたことに気が付かない、ということです。違和感があって確認したら、体にマダニが付いていた、こういった場合もあるので注意が必要です。
それでは、再びクイズです。
マダニは人の血を吸うのですが、かまれたとき、どうしたらよいでしょう?
A 潰して引き剝がす
B 付けたままにしておく
どちらでしょうか。
――これは「B」。付いたままにしておくと聞いたことが……あったんですけれども、どうでしょうか。
田邉:
正解です。答えは「B 付けたままにしておく」です。
生きたままにしておきます。
――こちらも、聞いたことはあったんですよね。
どうして、生きたまま、そのままにしておいたほうがいいんでしょうか。
田邉:
自分でマダニを引き剥がすと、皮膚の中にマダニの口が残ってしまい、取り除くのが難しくなってしまう場合があるからです。
また、血を吸ったマダニをつまんだり、潰したりするのもいけません。マダニの体の中のウイルスなどが逆流し、感染症を引き起こす危険があるからです。
自分では無理に取ろうとせず、「付けたまま、救急や皮膚科を受診して、取り除いてもらってください」。
――マダニにかまれないようにするには、どうしたらいいでしょう。
田邉:
■ 野外に出るときは、マダニや虫に刺されないように、肌の露出をできるだけ少なくします
■ ハイキングなど、野山を歩くときは、服の中に虫が入らないように、ズボンの裾やシャツの袖口などを、バンドなどで留めるとよいでしょう
■ また、服装や持ち物は、白っぽいものを選ぶようにしましょう。虫が付いていても、発見しやすくなります
■ 服の上から虫よけスプレーをすると、マダニなどの虫が付きにくくなります
■ マダニは、体に付くとすぐに血を吸うわけではなくて、皮膚の柔らかい場所を探して移動しますので、ハイキングなどから帰ったら、着替えや入浴をして、マダニがいないかチェックをしましょう
――田邉さん、最後にきょうのポイントをお願いします。
田邉:
明るい色の服、虫よけ、虫チェックで虫刺され予防。
【放送】
2023/08/04 「マイあさ!」
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