「もしものときの応急手当」③ ~すり傷・切り傷で出血したとき~

23/10/25まで

健康ライフ

放送日:2023/08/02

#医療・健康#カラダのハナシ

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23/10/25まで

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【出演者】
田邉:田邉晴山さん(救急救命東京研究所 教授)
聞き手:福島佑理 キャスター

まず、血を止める「止血」

――転んですりむいた。料理やバーベキューをしているときに指を切って、出血してしまった。こんなときはどうしたらいいでしょうか。

田邉:
出血への対処法は、以前から少し変わっています。出血している場合の応急手当は、まず、血を止める「止血」、そして、傷口を洗う「洗浄」、最後に「傷口の保護」、この順に行います。

――まずは、血を止める「止血」ですね。

田邉:
はい。清潔なハンカチやガーゼ、タオルなどを傷口に当て、真上から、指先や手のひらで直接圧迫します。破れている血管という“管・ホース”を押しつぶして、血が出ないようにする、そういったイメージですね。
出血が止まるまで圧迫してください。通常、数分で止まります。
手足などの場合、傷口を心臓より高い位置に上げると、出血量を抑えることができます。
多量の出血の場合は、圧迫止血を行いつつ「119番通報」します。少量であっても、出血が止まらなければ「病院を受診」するとよいでしょう。
他の人の手当てをする場合は、なるべく直接血液に触れないように、手袋やビニール袋をはめて行うとより安心です。血液に触れてしまった場合には、速やかに水で洗い流しましょう。

――指先を切ったとき、止血しようとして、指の付け根や腕の部分を輪ゴムなどで圧迫したことがあるんですが、その対処はどうでしょうか。

田邉:
それはやめてください。指先などの小さな血管からの出血は、ただ圧迫することで止血できます。
もし、ビュービューと吹き出すような大きな血管からの出血では、手や足を縛るといったようなこともありますが、それはちゃんと訓練を受けてから実施するのがよいでしょう。日本赤十字社の救急法講習などで学ぶことができます。

次に、傷口を洗う「洗浄」

――「止血」が済んだら、次は、傷口を洗う「洗浄」ですね。

田邉:
かつては、傷口を水でぬらすと細菌感染しやすくなる、と考えられていましたが、傷口に砂や土が付いていると、細菌で傷が感染するおそれが高くなりますので、むしろ、傷ができたらすぐに傷口をきれいな水で洗って、汚れなどを洗い流してしまう、こういったことが大切です。

――近くに水道がない場合、手持ちの飲み物をかけてもいいんでしょうか。

田邉:
ペットボトルなどに入ったミネラルウォーターがあれば一番です。なければ、糖分が入っていないお茶でも結構です。できるだけ口をつける前のもので、洗い流してください。
ペットボトルのふたに、キリや安全ピンなどで小さな穴をあけて、そのふたを付ければ、少ない水でも狙いを定めて傷口を洗い流すことができます。アウトドアで外出する際は、用意していくのもよいでしょう。

――洗ったあと、以前は消毒液・オキシドールを使っていましたよね。

田邉:
以前は、オキシドールなどで消毒するというのが当たり前の考え方でしたが、むしろ今は、消毒しないほうがいいといわれています。消毒液を使うと、細菌だけでなく、傷を治す細胞の働きまで悪くしてしまって、かえって傷の治りが遅くなるというふうにいわれています。

最後に「傷口の保護」

――「止血」「洗浄」ときて、最後は「傷口の保護」ですね。

田邉:
かつては、ガーゼやばんそうこうを貼ったりして傷口を乾かす、というのが一般的でした。しかし、現在では傷口を乾燥させずに、適度にぬれた状態を保つ「ジュクジュクした状態」の方が、むしろきれいに早く治る、といわれています。乾いた環境よりも、湿った環境の方が新しい皮膚が作られやすい、というわけです。
それに合わせた、新しいタイプのばんそうこうも販売されています。

――最近の、新しいタイプのばんそうこうは、これまでとどこが違うんでしょうか。

田邉:
新しいタイプのばんそうこうは「ハイドロコロイド」という素材でできていて、傷が適度に湿った、ぬれた状態になって、皮膚が再生しやすい環境を保つつくりになっています。水道水などで傷口をきれいに洗ったあとに貼りますが、傷口を覆うようにして貼ることで、外部から細菌などの侵入も防ぐようです。

――私は付けっぱなしのことも多かったんですけど、何日くらいで貼り換えたらいいでしょうか。

田邉:
そうですね、2~3日に1回を目安に交換するといいでしょう。そのときに傷を観察して、周りが赤くなっていないか、押してみるとズキズキした痛みがないか、膿(うみ)を持っていないか、腫れがひどくなっていないか、こういったことを確認して、問題がなければ新しいものに貼り換えます。
交換のときには傷口を水道水で洗って、清潔に保ちます。ばんそうこうが汚れている場合にも、傷口を洗ってばんそうこうを交換してください。
傷口から液体が出なくなって、表面が新しい皮膚で塞がれば、もう貼らなくても大丈夫です。

すり傷・切り傷で出血した際の、受診の目安

――すり傷や切り傷で出血したときの、受診の目安を教えてください。

田邉:

● 出血量が多い場合、これは「119番通報」をします

● 圧迫止血を行っても止血しない場合、あるいは、傷口からその奥に脂肪とか筋肉、そういったものが見えている、傷が深い場合には「速やかに病院を受診」してください

● 動物にかまれたときに、細菌に感染してひどくなることが多いので、その場合も「病院を受診」します

● 子ども同士のけんかなどで、かまれて血が出ているような場合も「病院を受診」したほうがいいでしょう

――田邉さん、最後にきょうのポイントをお願いします。

田邉:
すり傷・切り傷で出血したら、「止血」「洗浄」「保護」です。


【放送】
2023/08/02 「マイあさ!」

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