【出演者】
赤石：赤石定典さん(東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部 管理栄養士)
聞き手：星川幸 キャスター
「食べてダイエット」は可能なのか
――今回のテーマは「肥満が急増！」ということですが、コロナ禍の行動制限などもあって太ってしまったという話、確かによく聞きますが。
赤石：
はい。あるインターネットアンケートの調査では、新型コロナの流行前に比べまして、体重が増えたという方が約40％になっているという報告があります。原因は、ステイホームや在宅勤務で運動量が減ったりとか、またその間に間食が増えたり、さらに食事のバランスが崩れた、といったさまざまな理由が考えられています。
――体重が増えたままだと、病気につながったりしますよね。
赤石：
体重増加は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の原因になるだけではなく、脂肪肝や、睡眠時無呼吸症候群などの病気につながっていきます。さらに、放置しておきますと動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞、そういった生命に関わる病気を発症する、といったリスクが上がってきます。だからこそ、「今こそダイエット」ということになります。
――ダイエットというと食事制限が思い浮かびますが、今週は「食べてダイエット！」ということですけど、これ、可能なんでしょうか。
赤石：
確かに、(一般的に)ダイエットというと、食べる量を減らすとやせられます。ただし、食べる量を減らすということで長続きしなかったりとか、かえってリバウンドしたりといった訴えはよく聞きます。
――確かに、私の周りにも「やせない」とか「リバウンドした」っていう声はよく聞きますね。
赤石：
食べる量を過剰に減らしたり、バランスの取れていない食事をすると、体は栄養不足になるということなんです。食べたものをエネルギーに変えるには、食事のバランスを取ることが大切になってきます。ある特定の栄養が不足しますと、代謝は下がってエネルギーをためやすくなり、かえってやせられないといったことにつながってきます。
平均摂取エネルギー量は少ないのに、肥満率が高い傾向に
――でも、その栄養をしっかり取って、食べる、というのがなかなかできないんですが。
赤石：
そうなんですよね。では、ここで３択クイズです。
● 戦後直後の1947年
● 高度経済成長期の後期の1970年
● 最近の2011年
この３つで、一番カロリーを摂取していないのはいつだと思いますか？
――戦後直後、高度経済成長期の後期、そして今と。それはどんどん豊かになってきているわけですし、一番カロリーを摂取していないのは戦後直後ではないですか？
赤石：
残念ながら違うんです。実は、摂取をしていないのは現在なんですね。2011年が、１日の平均摂取エネルギー量が少ないんです。
戦後直後の1947年では1850kcal、高度経済成長期の後期の1970年では2287kcal、そして2011年では1840kcal。近年は少ない傾向になっています。
――近年のほうが戦後よりも少ないと。これはどうしてですか。
赤石：
戦後直後は、主食のお米をたくさん食べていたと考えられています。高度成長期にはお肉などの摂取量が徐々に増えていくと。現在は健康志向ということもありまして、１日の平均摂取エネルギー量は減ってきています。もちろん食べ過ぎの人も増えていますが、多くの人は摂取エネルギー量を減らす必要がない、というふうに考えております。
――でも、肥満の人の割合、これはどうなんでしょうか。
赤石：
こちらも、一貫して肥満率は増え続けています。現在は、男性の３割、女性の２割が肥満だと考えられています。つまり、カロリーの問題ではなく、栄養不足、バランスが悪い食事といったことが問題だと考えられます。
もう１つの問題としましては、ダイエットの目標を誤解している方がいる、ということです。星川さんは、ダイエットの目的は何だというふうに考えていますか。
――そうですね、見た目はまあ気にして、やせたいと思う人は多いんじゃないでしょうか。
赤石：
確かにそうですよね。でも、実はダイエットの目標というのは、やはり健康になるということが大切なのではないでしょうか。健康にやせることで見た目もよくなりますし、しかも、リバウンドをしにくい体にすることができるんです。
食事を極端に制限したり、１つのものばかり食べていたりすることは、健康につながるんでしょうか？ 栄養不足の状態で食事制限をして運動しても、ダイエットはうまくいきません。食べないでやせる、それよりも、バランスを考えて食べることが正しい、というふうに思います。
――バランスについては、次回以降詳しくお伝えします。赤石さん、最後にきょうのポイントをお願いします。
赤石：
ダイエットの目標は健康になること。食事制限ではなく、バランスよく食べる。それを意識しましょう。
【放送】
2023/06/12 「マイあさ！」
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