【出演者】
永井:永井多賀子さん(日本大学病院 准教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター
ギックリ腰、ほとんどは自然に治るが……
――私も、まだ子どもが小さかった頃に、公園でだっこしようとしてギックリ腰になったことがあるんですが、痛みで翌日から本当に動けなくなったんですよね。これ、突然起きて、本当にびっくりしました。
永井: | それは大変でしたね。皆さん一度は経験すると思いますが、ギックリ腰は、医学的には「急性腰痛」といわれています。原因はいくつかあります。多くは、「筋肉」や「筋膜」が原因となって起きています。慢性的な負担がかかったり、急激な負荷がかかったりしたときに、筋肉が緊張して動きが悪くなることで痛みを感じます。 ほかにも、「背骨の周りの軟骨」や、腰と腰との間にある「椎間関節のトラブル」などが考えられます。 |
---|
――ひと言でギックリ腰といっても、いろいろな原因が考えられるんですね。
永井: | はい。ギックリ腰のほとんどは1か月以内に自然に治りますから、あまり心配する必要はありません。ただし、痛みが治るまで1か月~3か月ぐらいかかるケースや、何度も再発を繰り返すケースもあります。ギックリ腰の時期に合わせた対処をすることで、早く痛みを解消できたり、再発を予防することができます。 |
---|
急性期の対処、慢性期の対処
――ギックリ腰の時期にあわせた対処、これ、どういうものなんでしょうか。
永井: | ギックリ腰は、痛みの強さによって「急性期」「慢性期」の2つに分けられます。痛みが最も強い期間が「急性期」といわれています。この急性期は、無理をせずに安静にしていただく必要があります。腰に負担がかからない姿勢をとるのがいいとされています。 |
---|
――腰に負担がかからない姿勢というのは、どういうものなんですか。
永井: | 一番いいのは、横になり、床につけて腰の位置を安定させることです。「ひざを軽く曲げて、横向きに寝る」こと。あおむけに寝る場合は「ひざを軽く曲げて、ひざの下にクッションを入れる」ことがよいとされています。 |
---|
――横になって、腰を床につけて位置を安定させる。ひざを軽く曲げて、横向きに寝る。あおむけの場合はひざを軽く曲げて、ひざの下にクッションを入れるといい、ということなんですね。そのほかに急性期、行ったほうがよいことはありますか。
永井: | 痛い所の患部を、氷を当てたりして冷やすのも効果的です。 |
---|
――温めるよりも、冷やすほうがいいんですね。
永井: | はい。急性期は腰などに熱を持つことが多いので、冷やすことがよいとされています。また、冷やすことで炎症を抑える効果もあります。 痛みが強いときは、痛み止めの薬を使ってもかまいません。痛みに恐怖を感じることは慢性化にもつながるからです。このときは医師に相談をしていただくほうがよろしいかと思います。 |
---|
――温めたほうがいい、ということを聞くこともあるんですけども、冷やすのか、温めるのか、このあたりはどのように考えたらいいですか。
永井: | 少し痛みが落ち着いてきたら、筋肉を伸ばすということに効果のある、温めていただくほうがいいとされています。 |
---|
――急性期は冷やすことがいいほうが多くて、少し治ってくると、温めたほうが効果的なことが多い、ということなんですね。一方の、慢性期ではどうでしょうか。
永井: | ギックリ腰は、数日から数週間で痛みが和らいできます。これを「慢性期」といいます。痛みが弱まってきたら、積極的に動くことが大切になっていきます。治りが早くなるだけではなく、再発も防げるといわれています。 |
---|
――まだ痛みがあっても、動いたほうがいいんですか。
永井: | そうですね。無理のない範囲で動くことが重要です。最初は、入浴後の筋肉が緩んだ状態で、少し体をストレッチするような軽い動きから始めるのがよろしいかと思います。 |
---|
――どんな運動がいいんでしょうか。
永井: | 特別な運動は必要ありません。まずはいすに座ったり、そこから立ち上がるような、日常的な動きがいいでしょう。それを可能なかぎり繰り返すことから始めましょう。 |
---|
再発を防ぐには
――ギックリ腰は再発が多い、とのことなんですけれども、どんなことに注意したらいいでしょうか。
永井: | ギックリ腰を経験すると、そのあとの1年間で約4分の1の患者さんが再発するといわれています。ポイントは、無理な姿勢をとらないことです。ギックリ腰を起こしやすいのは、前かがみの姿勢や、前かがみでものを持ったときなどが挙げられます。例えば、中腰で顔を洗うときや、靴を履くときにも前かがみの姿勢になるため、ギックリ腰を起こしやすくなりますので注意が必要です。 |
---|
――ほう。ただ、前かがみになるっていう、その動きはしかたがないですね。やめること、できないですよね。どうすればいいですか。
永井: | そうですね。まずは前かがみになるような姿勢に気をつけて、その姿勢をとるときは、ゆっくりと気をつけて動くことが大切です。また、日常的に簡単なストレッチを取り入れて、腰周りの筋肉の柔軟性を常に高めていくことが、ギックリ腰予防には一番有効とされています。 |
---|
――腰の柔軟性を高めるストレッチについては、次回詳しくご紹介いたします。では永井さん、最後にきょうのポイントをお願いします。
永井: | ギックリ腰、急性期は安静に。慢性期には運動を。 |
---|
【放送】
2023/04/11 マイあさ! 「健康ライフ」 永井多賀子さん(日本大学病院 准教授)
この記事をシェアする