【出演者】
永井:永井多賀子さん(日本大学病院 准教授)
聞き手:田中孝宜 キャスター
“ステイホーム”などは腰痛になりやすい環境だった
――永井さん、コロナ禍で腰痛になる人は増えているんでしょうか。
永井: | はい。大変増えています。4人に1人が腰痛を発症して、または、悪化させているといわれています。実際に診療を行っていましても、働き盛りの世代の受診が増えているように感じます。 |
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――コロナ禍で腰痛が増えている原因は、何だと考えられているんですか。
永井: | 1つ目は、在宅ワークで長時間座り続けること。座る姿勢を長時間続けると、腰の骨の間にある「椎間板」という組織に負担がかかります。椎間板が変性し、神経を圧迫してしまいます。そのため、腰痛につながっていきます。 2つ目は、運動量が減ることにより、腰回りの筋力の低下が挙げられます。腰は「腹筋」や「背筋」という大きな筋肉で支えられています。筋力が低下をすると腰が支えられなくなり、不安定となり腰痛が起こります。 さらに、新型コロナ感染による環境のストレスや不安感、そして、運動しないことによるコロナ太りなども腰痛の原因となっています。 |
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――コロナ禍のステイホームなどの状況は、腰痛になりやすい環境だったということですね。
永井: | そうですね。活動がだいぶ解禁されてきた今、体を動かして、腰痛を解消してほしいと思います。 |
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腰痛のタイプはさまざま
――動いて治そう、というのはそういう意味だったんですね。で、どんなタイプの腰痛でも、動かすことで解消することは可能なんでしょうか。
永井: | 確かに、一口に腰痛といっても、そのタイプはさまざまなものがあります。先ほど言った、椎間板や神経などの障害によるもの、さらには、内臓の病気から腰の痛みを感じるケースもあります。しかし、原因を特定できる腰痛は、全体の15%といわれています。残りの約85%は原因を特定しにくいもので、「慢性腰痛」と呼ばれています。この慢性腰痛は、X線検査やさまざまな検査をしても、はっきりとした異常は見られません。 |
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――85%ということは、ほとんどの腰痛は原因が分からないものなんですね。
永井: | はい。こうした慢性腰痛に関しては、日常的なストレッチや筋トレなどの運動が大変有効となります。 |
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――一方で、残りの15%の腰痛はどうなんでしょうか。
永井: | 椎間板や神経などの病気が原因の腰痛は、発症初期にはあまり運動しないほうがよいものもあります。まずは医療機関の受診をお願いいたします。 |
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腰痛 運動してもよいかチェック
――慢性腰痛のような運動したほうがいいものと、運動しないほうがよい腰痛、区別はできますか。
永井: | はい。「腰痛 運動してもよいかチェック」があるので、紹介させていただきます。1つでも当てはまるものがあれば、運動する前にまず受診をしていただければと思います。 |
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――では、運動してもよいかチェック、教えてください。
永井: | ✓ じっとしていても痛む ✓ 背中が曲がってきた ✓ お尻や足が痛む・しびれる ✓ 足のしびれにより長く歩けない |
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――この4つのチェック、それぞれ詳しく伺っていきましょう。永井さん、「じっとしていても痛む」というのはどういうことなんですか。
永井: | 「じっとしていても痛む」に当てはまる場合、背骨の病気や内臓の病気の可能性が考えられます。早めに医療機関を受診して、原因を突き止めることが重要となります。 |
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――では、次の「背中が曲がってきた」というのはどういうことなんでしょうか。
永井: | 「背中が曲がってきた」に当てはまる場合、骨粗しょう症によって背骨がつぶれる「圧迫骨折」が起きている可能性が考えられます。骨粗しょう症は、骨の中がスカスカになる病気で、閉経後の女性に多く起こります。50歳過ぎから背中が曲がってきて、腰痛を感じるようになったら要注意です。これも受診をおすすめします。 |
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――そうなんですね。「お尻や足が痛む・しびれる」「足のしびれにより長く歩けない」、これは腰の痛みとは一見関係ないように思えるんですけども。
永井: | 「お尻や足が痛む・しびれる」「足のしびれにより長く歩けない」は「脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症」や「椎間板ヘルニア」など、腰の神経が原因で症状が起こっている可能性が挙げられます。これらの病気は進行することがあるため、注意が必要です。こうした病気は、問診や画像の検査で診断がつきますので、早めに病院を受診していただきたいと思います。 |
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――腰痛を解消するのにどのような運動がよいかは、3回目以降にご紹介いたします。では永井さん、最後にきょうのポイントをお願いします。
永井: | 腰痛には、運動で治せる慢性腰痛と、受診の必要な腰痛がある。 |
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【放送】
2023/04/10 マイあさ! 「健康ライフ」 永井多賀子さん(日本大学病院 准教授)
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