【出演者】
室伏:室伏利久さん(帝京大学 客員教授)
聞き手:星川幸 キャスター
バランス感覚とめまいの関係
――そもそも、バランス感覚とめまいにはどんな関係があるんでしょうか。
室伏: | 私たちは、耳の奥にある内耳と呼ばれる部分、目から入ってくる情報、体を支える足腰からの情報を合わせて、体のバランスを保っています。つまり、体のバランスは、耳、目、脳、足腰の連係プレーで維持されています。ところが、何らかの原因で内耳からの情報がうまく伝わらないと、目などからの情報と食い違いが生じて混乱が起こり、天井や床が動いているように感じてしまうことがあります。これが〝めまい〟です。 |
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――バランス感覚のリハビリは、どんな場合に行うんでしょうか。
室伏: | めまいの原因には、良性発作性頭位めまい症、あるいはメニエール病などの耳の病気がありますが、治療しても体のふらつきが残る、ということも少なくありません。このふらつき、「慢性めまい」ともいいますけれども、その改善にはリハビリテーションが有効です。耳のバランス感覚が障害されても、さまざまな運動を毎日行って、目や足腰と脳のつながりを強化すること、こうしたことでふらつきを改善することができます。これが、バランス感覚のリハビリです。 このリハビリは、めまいが慢性化している人だけでなく、高齢でふらつきがちな人にも効果があります。転倒を防ぐためにも、日頃から行うことがよいと思います。 |
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――では、バランス感覚のリハビリ、教えてください。
室伏: | 代表的なリハビリを紹介します。「目の動きの安定感を得るためのリハビリ」2つと、「体のバランスを保てるようにする」リハビリです。自宅で行うリハビリです。 |
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目の動きの安定感を得るためのリハビリ
――まず、目の動きの安定感を得るためのリハビリから教えていただきます。
室伏: | 1つ目は、「視線だけを左右に動かす」リハビリです。 ■ 片手を前に伸ばして、親指を立てます ■ 両目で、立てた親指の先を見て、手だけを左右に動かします ■ 頭を動かさず、目だけで指先を追いかけます |
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――これは、スピードはどうですかね。
室伏: | ゆっくりで、最初は大丈夫だと思いますね。 |
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――はい。2つ目はどんなリハビリですか。
室伏: | 今度は「首だけを動かす」リハビリです。 ■ 片手を前に伸ばして、親指を立てます ■ 手は正面に伸ばしたまま動かさず、無理のない範囲で、リズミカルに頭を左右に動かします ■ 頭を動かしている間、目線は常に親指を見続けます |
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――これ、何回ぐらい繰り返すといいんでしょうか。
室伏: | 可能な範囲でやっていただければいいんですけれども、基本的には20回程度行うことをおすすめしています。少しずつでも、毎日行うことが大事です。ただし、やり過ぎは悪化につながります。医師の指示どおりに行いましょう。効果を得るには、月単位でみていく必要があります。ですので、症状は一進一退するかもしれませんけれども、根気よく続けていただくことが大事だと思います。 |
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体のバランスを保てるようにするリハビリ
――続いて、体のバランスを保てるようにするリハビリを教えていただきます。
室伏: | 目を閉じて、立って行います。足腰のバランス感覚や、脳の機能を強化します。 ■ 目を閉じた状態で、足をそろえてまっすぐ立った姿勢を、1分間を目安に保ちます |
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――目を閉じた状態で、立ったままの姿勢で1分間保つ。これ、めまいがある方はバランスを崩してしまいそうですね。
室伏: | ええ、そのとおりですね。最初はふらついて危険を伴う場合もありますので、支えがある場所で行ったり、家族に支えてもらいながら行うようにしていただくのがいいかと思います。 |
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――室伏さん、次は。
室伏: | ■ 目を閉じたまま、その場で50歩ないし100歩、足踏みをします |
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――目を閉じたままで足踏みをすると。室伏さん、これは体の角度がどのくらいずれると問題があるんでしょうか。
室伏: | まず、転倒しないで50歩ないし100歩できるということが前提としてありますけれども、50歩の場合、45度以上回転するようだと問題がある可能性があると思います。 この運動を1日2回程度、4週間ぐらい継続してやっていただくと、少しずつめまいの感じが減少していくことが期待できます。 |
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――では、最後にきょうのポイントをお願いします。
室伏: | めまい・ふらつきの改善には、リハビリを。 |
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【放送】
2023/03/17 マイあさ! 「健康ライフ」 室伏利久さん(帝京大学 客員教授)
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