「二重国籍」認めない判決 1審に続き訴え退ける 東京高裁

外国の国籍を取得し日本国籍を失った人などが、国籍法の規定によって二重国籍が認められないのは憲法違反だと訴えた裁判で、東京高等裁判所は21日「弊害が生じるおそれがある二重国籍をできるかぎり防ぐという法律の目的は合理的だ」として1審に続いて憲法に違反しないと判断し、二重国籍を持つことを認めませんでした。

日本の国籍法は外国の国籍をみずからの希望で取得すると日本国籍を失うと規定し、複数の国籍を持つことを認めていません。

これについてスイスやリヒテンシュタインに住み現地の国籍を取得して日本国籍を失った人など8人は「意思に反して国籍を奪う法律の規定は個人の尊重を定めた憲法に違反し、無効だ」と主張して、国に対し、日本国籍があることの確認と賠償を求めていました。

21日の2審の判決で、東京高等裁判所の岩井伸晃裁判長は「複数の国籍を認めると、どの国が個人を保護するかをめぐって国家間の摩擦が生じたり、納税や兵役などの義務について矛盾が生じたりするおそれがある」と指摘しました。

そのうえで「国籍法の規定は弊害を解消し、その原因となる二重国籍をできるかぎり防ぎつつ国籍を変更する自由を保障していて合理的だ」として1審に続いて憲法違反ではないと判断し、訴えを退けました。

原告側は上告の方針 明らかに

裁判のあと原告と弁護団は会見を開き、判決を不服として最高裁判所に上告する方針を明らかにしました。

原告の1人でスイスの国籍を取得したために日本国籍を失った野川等さん(79)は「幼少期を日本で過ごした思い出など、日本国籍は自分のアイデンティティーだ。誰にとっても大切なものだと思うので、最高裁の裁判官にも訴えていきたい」と述べました。

弁護団によりますと、世界195の国と地域のうち2020年の時点で二重国籍を認めているのは150とおよそ4分の3にあたるということです。

仲晃生弁護士は「複数国籍を防ぐためなら日本国籍を奪ってもかまわないというような指摘で日本国籍の重要性を低下させるような判決だ。国籍法の規定は海外で日本国民として活躍する機会を奪っている」と批判しました。