日中首脳会談 中国の軍事的活動に深刻な懸念伝える 岸田首相

岸田総理大臣は、訪問先のタイで、中国の習近平国家主席と対面ではおよそ3年ぶりとなる日中首脳会談を行いました。日本周辺での中国の軍事的活動に深刻な懸念を伝える一方、建設的で安定的な関係の構築の重要性を強調し、両首脳は、日中関係の発展に向けて、首脳レベルも含めあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行うことで一致しました。

岸田総理大臣と中国の習近平国家主席の会談は、日本時間の11月17日午後8時45分ごろからおよそ40分間行われました。

冒頭、まず、中国の習近平国家主席が、「両国関係の重要性は変わっていないし、今後も変わることはない。私はあなたとともに政治家としての責任を果たし、戦略的な観点から両国関係の大きな方向性を把握して新しい時代の要求にあった両国関係を構築したい」と述べました。

岸田総理大臣は「日中関係は、さまざまな協力の可能性とともに、多くの課題や懸案にも直面している。同時に日中両国は、地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有する大国だ。『建設的かつ安定的な日中関係』の構築を双方の努力で加速していくことが重要でありそのための率直な意見交換を行うことを楽しみにしている」と述べました。

会談で、岸田総理大臣は、沖縄県の尖閣諸島を含む東シナ海情勢に加え、ことし8月に、中国が日本のEEZ=排他的経済水域を含む日本の近海に弾道ミサイルを発射したことなど日本周辺の軍事的活動に深刻な懸念を伝えました。

そのうえで懸案があるからこそ率直な対話を重ねる重要性を強調し、両首脳は、日中関係の発展に向けて、首脳レベルも含め、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行うことで一致しました。

また▽双方の防衛当局が偶発的な衝突を防ぐために連絡を取り合う「ホットライン」の早期の運用開始や、▽外務・防衛当局の高官による「日中安保対話」などを進めていくことを確認しました。

そして、閣僚間で対話を再開させることでも一致し、林外務大臣の中国訪問に向けて調整を進めていくことになりました。

さらに、岸田総理大臣は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、中国での人権状況や日本人の拘束などをめぐる日本の立場を説明しました。

一方、岸田総理大臣は、確立されたルールのもとで中国が国際社会に前向きな貢献を行うことへの期待を示し、経済や国民交流の具体的な分野で「互恵的協力」は可能だと指摘しました。

そして、両首脳は、環境や省エネを含めた経済分野、医療・介護などの分野での協力を後押ししていくとともに、ハイレベルでの経済対話や人的・文化的交流対話を早期に行うことを確認しました。

このほか、ウクライナ情勢をめぐり、岸田総理大臣は、中国がロシアに配慮する姿勢を示してきたことを念頭に、国際社会の平和と安全の維持のために責任ある対応をとるよう改めて求めました。

その上で、ロシアによる核兵器使用の威嚇について「極めて憂慮している」と伝え、両首脳は、核兵器を使用してはならず、核戦争を行ってはならないという見解で一致しました。

さらに、岸田総理大臣は、北朝鮮による核・ミサイル開発に深刻な懸念を示し、国連安保理などで中国が役割を果たすよう促す一方、拉致問題の即時解決に向けた理解と支持を求め、両首脳は、緊密に連携していくことを確認しました。

岸田総理大臣は、会談のあと記者団に対し、一連の外交日程について「久方ぶりに対面での国際会議の開催となり、対面で話をすることが外交でいかに大事かを改めて感じている。相手の表情や雰囲気など文字に表れないさまざまなやり取りがお互いの信頼関係の構築にもつながる」と述べました。

中国が尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返すなど多くの課題や懸案は残されたままで、今回の会談を契機に今後、関係改善を具体的に進められるかが課題となります。

東南アジア歴訪が続く岸田総理大臣は、18日はタイで開かれるAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議に出席する予定です。