10万円給付で混乱も
“全額現金かクーポン併用か”

18歳以下への10万円相当の給付について政府が現金とクーポンの併用を原則としているのに対し、各地の自治体からは全額現金にすべきだといった声が相次いでいて混乱が続いています。
政府は自治体の意向も踏まえ、柔軟に運用できる制度にするよう検討を急いでいて、今年度の補正予算案の成立を待って早ければ再来週にも具体的に示したい考えです。

18歳以下への10万円相当の給付をめぐり、政府は現金5万円の給付を年内に開始し、その後クーポン5万円分を給付することを原則とするとしています。

「クーポン給付は無理強いせず」山際経済再生相

これに関連して、山際経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で、自治体が全額現金で給付できる具体的なケースについて、岸田総理大臣の意向を踏まえ、柔軟な制度設計を行い、今年度の補正予算案の成立後、改めて各自治体に示したいという見解を示しました。

そのうえで「各自治体とも年度末はいそがしい時期だということも理解しているし『物理的に年度内に間に合わない』という声も聞いている。間に合わないと言っている自治体に、クーポンの給付を無理強いするようなことはない」と述べ、事務が間に合わない自治体は、全額現金での給付も選択できるようにしたいという意向を示しました。

公明 山口代表「現金給付も含め柔軟に実施を」

公明党の山口代表は記者団に対し「自治体の事務負担と費用の面から、全額現金での給付を求める声が増えているが、与党は、それをやってはいけないと考えているわけではない。政府には、自治体の負担を総合的に考えて、柔軟に、現金給付も含めて実施してもらいたい」と述べました。

神奈川 黒岩知事 “10万円相当給付 全額現金で給付を”

10日午前、黒岩知事は記者団の取材に応じ「県内の自治体から現金支給にしてほしいという声が多くでている。クーポンで支給するために膨大な経費と労力をかけるのはむだではないか」と述べ、国に対して、無条件で全額現金での支給を認めるよう求めていく考えを明らかにしました。

神奈川県によりますと県内33の市町村に意見を聞いたところ、10日までに回答があった16の市と町の中で、クーポンでの支給を求めているところはないということです。

黒岩知事は「本来なら10万円を一括で現金支給するのがよいと思うが、間に合わないのであれば、5万円ずつでも現金で支給するのがいちばんよい」と話していました。

与党“自治体判断” 野党“全額現金”

18歳以下への10万円相当の給付をめぐり、NHKの「日曜討論」で、与党側が、現金とクーポンのどちらで給付するかは、自治体の判断に委ねる考えを示したのに対し、野党側からは、全額現金にした上で、削減した経費を生活困窮者への支援に回すべきだといった意見が出されました。

自民党の西村康稔・前経済再生担当大臣は「確かに現金をもらったほうが使い勝手がいいし、自治体の負担や事務費もかさむということなので、自治体の判断で、自由度を持って対応すればいいのではないか。一方で、クーポンというやり方を使って地元の商店街を活性化するなど一石何鳥かでやろうと考えている自治体もある。基本的には自治体の判断に任せていくことが大事だ」と述べました。

公明党の伊藤渉・政務調査会長代理は「より正確に子どものために使われる方法としてクーポンをセットにしてあり、現金給付も選択できる。全部アナログで紙でやれば1割くらいの事務費がかかるのは常識で、ことさら事務費を取り上げて現金にすべきだという議論は拙速だ」と述べました。

立憲民主党の長妻昭・元厚生労働大臣は「クーポンでの給付は基本的にできない自治体が多いので、国民の希望も含め、現金で一括給付すべきだ。クーポンの事務的経費およそ1000億円は、生活困窮者100万人に10万円ずつ配れる形で使って欲しい。消費にすぐに回り、経済にとってもプラスになるのですぐ決断して欲しい」と述べました。

日本維新の会の足立康史・国会議員団政務調査会長は「クーポンでの給付は本当に愚策だ。国民の生活や仕事を支えるのに一番いいのは、給付よりも減税なので、私たちは消費税率を5%に下げる法案を国会に提出した。さらに社会保険料の徴収を停止すれば国民生活は助かる」と述べました。

国民民主党の足立信也・参議院幹事長は「給付に所得制限を設けると不公平感がどうしても出てくる。一律で給付したうえで、所得税の累進課税を利用すべきだ。ノウハウもあるので、年末にかけてスピード感が大事だ」と述べました。

共産党の田村智子・政策委員長は「政府案では、生活に困っていても対象外になる人がたくさんいる。岸田総理大臣は、衆議院選挙で公約したことに違反するつもりなのかということが一番問われなければならない」と述べました。

れいわ新選組の大石晃子・政策審議会長は「額が足りないことが問題だ。全員に一律現金・非課税で20万円を配って、大人の貧困を解消すれば、子どもにお金が使われる」と述べました。