政府コロナ“自宅療養方針”
野党「救うべき命救えない」

5日開かれた参議院厚生労働委員会の閉会中審査では、新型コロナウイルス対応で重症患者などを除き、自宅療養を基本とした政府の方針などを中心に議論が交わされました。

自民党の自見英子氏は「感染状況が日に日に深刻になっている。政治家は希望をもたらすことを言いたがるが、しっかりと今の現状を国民と共有してほしい」と質問しました。
田村厚生労働大臣は「いつまでも我慢する社会ではなく、緩めていく社会にしたいが、この夏は、少なくともリスクの高い行動を避け、なるべく自宅で対応してもらうことをお願いしたい」と述べました。

立憲民主党の石橋通宏氏は「重大な方針変更に国民が心配している。中等症でも原則、自宅療養とすれば、多くの救うべき命が救えなくなる」とただしました。
田村大臣は「中等症患者も原則入院となる。重症化リスクが低い人は自宅で対応してもらうが、重症化が急速に進む可能性が高いと判断されれば、医師が必要性に応じて判断し入院となる」と述べました。

公明党の矢倉克夫氏は「『中等症になれば自宅で苦しむしかないという方針を、政府が全国一律に決めたのではないか』と受け止められているが、改めて説明してほしい」と質問しました。
田村大臣は「仮に軽症であっても、急激に症状が悪化する可能性が高いと判断されれば、医師の判断で入院ということになる。助かる命を1人でも助けたいという考え方だと理解してほしい」と述べました。

日本維新の会の東徹氏は「新型コロナウイルスの飲み薬が実用化されれば、自宅で簡単に服用でき、医療のひっ迫も避けられる。どう支援するか」と質問しました。
田村大臣は「飲み薬が気軽に使えるようになれば、それを渡して自宅で療養してもらうこともできる。治験が動きだしているので開発を支援し、ほかの薬事承認の過程よりも、早いスピードでしっかりと審査をしたい」と述べました。

国民民主党の浜口誠氏は「中等症や重症、軽症で症状が急変する人でも、しっかり医療につなげるためには、病床数の拡大にこれからも取り組んでいく必要がある」とただしました。
田村大臣は「感染拡大の可能性がある地域では、さらなる病床の確保をお願いしなければならないが、ほかの疾病の人と完全に分けて感染管理をしなければならず、医療関係者に大変な苦労をかけながら病床を増やしているのも事実だ」と説明しました。

共産党の倉林明子氏は「自宅療養が基本となると、早期の治療に漏れが出て重症患者を増やしかねない。方針を変えても、重症病床などが増えるわけでもなく、どう余力を確保するのか」と質問しました。
田村大臣は「今はまだ確保病床が満杯になってないが、50%を超えるとミスマッチが起きて入りづらくなる。今のような感染状況が続けば病床は埋まり、自宅で急変した人が入れなくなるので、なんとか病床を確保していく」と述べました。

首相「引き続き丁寧に説明していきたい」

菅総理大臣は、政府の新型コロナウイルス対策本部で「全国一律のものではなく、感染急増地域で、自治体の判断による選択肢を設けるものだ。引き続き、必要な病床の確保を進め、中等症で酸素の投与が必要な方や、酸素の投与が必要でなくても重症化のリスクのある方は、もちろん入院していただき、入院は、医師の判断で行っていただく。自宅にいる患者についても、血液中の酸素飽和度を測る『パルスオキシメーター』や電話などで、状態をこまめに把握し、症状が悪くなったら、すぐに入院できる体制をつくる。引き続き、こうした点を丁寧に説明していきたい」と述べました。

田村厚労相 “中等症でも重症化リスクあれば医師判断で入院”

参議院厚生労働委員会の閉会中審査で田村厚生労働大臣は、重症患者などを除き、自宅療養を基本として、入院患者を制限するとした政府の方針に関連して「中等症患者も原則入院となる。重症化リスクが低い人は自宅で対応してもらうが、重症化が急速に進む可能性が高いと判断されれば、医師が必要性に応じて判断し入院となる」と説明しました。

その上で「症状が急変したのに病院に行けないということは何としても避けなければならず、一定程度、入院施設が空いていないと対応ができないので、理解してほしい」と述べました。

一方で、田村大臣は「感染者が増えてくれば自宅療養者がどんどん増えるが、東京でも医療に携わるマンパワーには限界がある。決められた資源の中で、どうやって国民の命を守るか、必死になって検討している」と述べ、医療資源には限界があり、感染者数の伸びを抑える必要があると強調しました。

「尾身会長に連絡取れておらず反省」

田村厚生労働大臣は、参議院厚生労働委員会で、今回の方針を政府の分科会の尾身茂会長に事前に相談しなかったことについて「本来、尾身会長には報告しなければいけなかったが、連絡がしっかり取れていなかった。反省しながら、しっかり尾身先生にご報告はさせていただきたい」と述べました。

政府の方針について、尾身会長は4日、衆議院厚生労働委員会で「政府とは毎日のようにいろんなことで相談、連絡、協議しているが、この件に関しては特に相談、議論したことはない」と述べていました。

与党「重要な政策転換は事前に協議を」 政府に求める

新型コロナウイルス対策をめぐる政府・与党の実務者会合が開かれ、与党側は、重症患者などを除き自宅療養を基本とするとした政府の方針に懸念が相次いだことを踏まえ、重要な政策を転換する際には事前に協議するよう求めました。

新型コロナウイルス対策をめぐっては、7月に政府と与党の幹部による連絡会議が開かれたのに続き、5日は実務者による初会合が開かれ、政府側からは坂井官房副長官が、与党側からは自民党の鴨下元環境大臣や公明党の高木政務調査会長代理らが出席しました。

会合で、政府側は、重症患者などを除き自宅療養を基本とするとした方針について、これまでの説明資料を見直し、中等症で酸素投与が必要な人なども医師の判断で入院対応を可能とするとしたことなどを説明しました。

これに対し、与党側からは「まだ文言が不十分なところがあり、より国民に分かりやすいようにすべきだ」といった意見が出されました。

そのうえで与党側は、今回の方針について、事前の説明がなかったことや、懸念が相次いだことを踏まえ、重要な政策を転換する際には、事前に協議するよう求めました。

公明 北側副代表「誤解されないよう丁寧な説明を」

公明党の北側副代表は、記者会見で「当初、話を聞いたときは、中等症の人は、自宅療養だと単純に受け止めざるを得なかった。重症化リスクのある人が入院できないと誤解されないよう、政府には正確に分かりやすく丁寧な説明をしてもらいたい。自治体や医療現場での判断が大事であり、政府として、できるだけ明確な判断基準を示してもらいたい」と述べました。

厚労省 政府の方針の説明資料見直し

重症患者などを除いて、自宅療養を基本とするとした政府の方針をめぐり、厚生労働省は、これまでの説明資料を見直し、感染者が急増している地域では、緊急的な対応として、中等症で酸素投与が必要な人なども医師の判断で入院対応を可能とするとしています。

新型コロナウイルス対応で、政府は、入院については重症患者や重症化リスクの高い人に重点化する一方、それ以外の人は自宅療養を基本とし、健康観察を強化するなどとした方針を全国の自治体に通知しましたが、与野党双方から、丁寧な説明を求める声や撤回を求める声が上がりました。

こうした中、厚生労働省は、これまでの説明資料を見直し、今回の方針について、東京都をはじめ感染者が急増している地域でも、症状に応じて、必要な医療が受けられるようにする緊急的な対応だと強調しています。

そして、引き続き、病床や宿泊療養施設の確保に取り組むとしたうえで、入院については、重症患者のほか、中等症患者で酸素投与が必要な人や、投与が必要でなくても重症化リスクがある人に重点化するとし、最終的には医師が判断するとしています。

一方で、自宅や宿泊施設で療養する人の症状が悪化した場合に、速やかに入院できるよう、一定の病床を確保していくと説明していて、改めて理解を求めることにしています。