GoToトラベル一時停止は
予防的措置 西村経済再生相

政府が「Go Toトラベル」の一時停止を決めたことについて、西村経済再生担当大臣は、衆議院内閣委員会で、全国的に感染が広がりつつある中、年末年始に接触機会を減らし、さらなる感染拡大を防ぐための予防的措置だと説明しました。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、衆議院内閣委員会の閉会中審査が開かれ、政府が「Go Toトラベル」を今月28日から全国一斉に一時停止すると決めたことなどをめぐって論戦が交わされました。

立憲民主党の今井雅人氏は「政府は『Go Toキャンペーン』が感染拡大には関係がないと、さも断定的に言っているが一時停止するのは理屈に合わないのではないか」とただしました。

これに対し西村経済再生担当大臣は、飛行機や新幹線の中は感染リスクは低いと指摘する一方、感染が拡大している地域では十分な感染防止策がとられた行動であっても制約せざるをえないとして、札幌市や大阪市などを先行的に「Go Toトラベル」から除外したと説明しました。

そのうえで、全国一斉の一時停止ついて「感染が出ていない鳥取と島根で移動することは恐らくリスクはないのだと思うが全国的にも感染が広がりつつあるので予防的に、この機会に接触機会を減らすということで年末年始の一時停止を決めさせていただいた」と述べました。

立憲民主党の大西健介氏は、政府が少人数での会食を呼びかける中、菅総理大臣が14日に自民党の二階幹事長や林幹事長代理らと5人以上で会食したことについて「5人を超える会食をこのタイミングで菅総理大臣が行ったことは、西村大臣が呼びかけていることと違うのではないか」と指摘しました。

これに対し西村大臣は「一律に5人以上は『ダメだ』ということを申し上げているわけではなく、強制力があるわけでもない。ただ、長時間で大人数の会食はリスクが高い。できるだけ控えていただき、どうしても行う場合には感染防止策を徹底し『アクリル板のある店を選んでください』とか『換気に注意してください』と言っている」と述べました。

一方、政府が今週半ばまでを「勝負の3週間」と位置づけて対策を講じてきたことについて、政府の分科会の尾身茂会長は「飲食店への営業時間の短縮要請は東京を含め、国と自治体にやっていただいた。しかし結果的には、まだ感染が高止まりしている地域がありさらにしっかりした対策をやっていく必要がある」と述べました。

加藤官房長官「勝負の3週間後も」

加藤官房長官は午前の記者会見で、今週半ばまでを「勝負の3週間」と位置づけて対策を講じてきたことについて「強い危機感を持って対応してきた。これに対する評価は、評価としてしっかりとしていかなければならない」と述べました。

そして年末年始は、
▽営業時間の短縮要請に応じた飲食店などに対する1日当たりの協力金を、自治体と連携して今の2倍にすることや、
▽「Go Toトラベル」を全国一斉に一時停止するなど、最大限の対策を講じると説明しました。

そのうえで「自治体と緊密に連携しながら地域の感染状況に応じた取り組みを支援し、国民には基本的な感染防止対策の徹底をお願いしたい。引き続き専門家などの評価や分析も踏まえ、感染拡大防止に全力で取り組んでいきたい」と述べました。

一方、年末年始の帰省について加藤官房長官は「自粛を一律に要請しているわけではないが、政府が最大限の対応をとっていることも踏まえ、個々の事情があるとは思うが慎重に検討してほしい」と呼びかけました。

「勝負の3週間」効果の評価を議論

厚生労働省の専門家会合は16日午後5時から始まり、議論が行われました。

会合で示されたデータでは、新たに感染が確認された人の数について15日までの1週間の平均を前の週と比較すると、全国では1.16倍に増えています。

地域別に見ると、最も増加率が高いのは
▽熊本県で2.22倍
次いで
▽宮城県が2.12倍
▽広島県が2.05倍
▽京都府が1.70倍
▽福岡県が1.54倍
▽千葉県が1.53倍
▽群馬県が1.42倍などと、これまで大きな感染があまり見られなかった地域で増加しています。

また、これまで急速に感染が拡大しているとされた地域では、
▽東京都が1.19倍
▽愛知県が1.05倍
▽大阪府が1.01倍
▽北海道が0.93倍となっています。

16日の専門家会合では、▽この3週間の感染状況の推移や各地の医療のひっ迫の状況などについて最新データの分析を行ったうえで、この期間の対策の効果について評価を行うほか、▽医療体制が弱くなる年末年始に向けて、感染を抑え、通常の医療が提供できなくなる事態を防ぐために求められる対策などについて議論が行われました。

脇田隆字座長は記者会見して、最新の感染状況に対する評価や求められる対策について説明することにしています。

田村厚労相「年末年始 例年とは違った状況に」

田村厚生労働大臣は専門家会合の冒頭「最前線で活躍している医療従事者はたいへんな状況だが、地域の医療提供体制をしっかりと支えていけるよう対応していきたい。ことしは静かな年末年始で、例年とは違った状況になるが、ここでしっかりと感染拡大を抑えながら、年明けに、また、人の往来や経済を動かしていかなければならない」と述べました。

日本医師会「コロナに年末年始ない」

日本医師会の中川会長は、記者会見で「医療崩壊につながりかねない状況で通常の医療にも影響が出始めているが、新型コロナウイルスに年末年始はない。大勢が集まって盛り上がることは、さらなる感染拡大や重症者の急増につながる。ことしは静かなクリスマスを『サイレント・ナイト』でお願いしたい」と呼びかけました。

そのうえで「最強の感染拡大防止策は国民一人一人の感染防止意識に尽きる。4月の第1波を抑えられた時と今の状況は明らかに違い、緩んでいるし慣れている。ほぼ全員がマスクをし手洗いの励行などを続けていけば必ず収束への道、突破口は開ける」と述べました。

また、中川会長は「ことしの漢字」として「命」をあげ「全国の医療従事者が命懸けで国民の命を守っている。現場の医療従事者の心身の疲弊もピークに達しているが、必死で年末年始の医療提供体制の整備を進めている」と強調しました。

菅首相「感染者数 真摯に受け止め」

菅総理大臣は、16日夜、総理大臣官邸で記者団に対し、今週半ばまでを「勝負の3週間」として、感染対策の徹底を呼びかけてきたことについて「さまざまな対策を講じてきたが、先週末に3000人を超える感染者があり、高止まりしている状況で、真摯に受け止めている」と述べました。

そのうえで、年末年始に集中的な対策を講じるため、飲食店などへの営業時間の短縮要請の延長や、「Go Toトラベル」の一時停止などを決定したことを改めて説明し「国民の命と暮らしを守るために全力を挙げて取り組んでいきたい」と述べました。

また記者団が「『GoToトラベル』の停止だけでなく、往来そのものの自粛を求める考えはあるか」と尋ねたのに対し「現時点ではない」と述べました。