Go Toイート利用対象
制限求める考え 北海道知事

新型コロナウイルスの影響を受けた飲食店を支援する「Go Toイート」について、北海道の鈴木知事は、会食の場面での感染が確認される事例が増えており、見直すべきだとして、感染のリスクを抑えるため、利用できる対象を「4人以下での2時間以内の食事」にかぎるよう、政府に求めていく考えを示しました。

鈴木知事は16日、記者団に対し、「Go Toイート」について、「会食の場面での感染が確認される事例が増えており、見直すべきではないか。大人数での会食は控えるべきで、時間についても長時間の飲食はリスクが高くなる」と述べました。

そして、利用できる対象を「4人以下での2時間以内の食事」にかぎるよう、政府に求めていく考えを示しました。

Go Toトラベル「旅行が感染拡大している明確な根拠ない」

一方、観光需要の喚起策「Go Toトラベル」について、鈴木知事は「旅行や移動そのものが感染を拡大しているという明確な根拠はない。静かに食事を楽しみ、温泉を楽しむことで、感染が広がっているわけではないし、札幌とそれ以外の地域の感染状況が一様に同じではないことにも留意すべきだ」と述べました。

そのうえで、感染リスクを避ける対策をとれない場合には利用を控えるなど、注意喚起を徹底するよう政府に求めていく考えを示しました。

首相 Go Toイート 一定人数以上は対象外 検討要請へ

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、政府は16日夕方、総理大臣官邸で、菅総理大臣や加藤官房長官、西村経済再生担当大臣らが出席して、対策本部を開きました。

この中で菅総理大臣は、現在の感染状況について、新規の感染者が過去最多となるなど、極めて警戒すべき状況が続いていると指摘し、「引き続き、大規模、集中的な検査の実施や専門家の派遣など、感染拡大防止策を講じるとともに、社会経済活動との両立を実現するため効果的な対策を講じていく」と述べました。

そのうえで「地方公共団体がエリアや業種を限定した効果的な営業時間短縮要請などを行い、協力金の支払いなどを行う場合には、新たに500億円の枠を活用して、地方創生臨時交付金の追加配布を行って支援することとする」と述べ、地方自治体に対し地方創生臨時交付金を追加で配付する考えを明らかにしました。

また、外食の需要を喚起して飲食店などを支援する「Go Toイート」をめぐり、感染拡大が見られる地域では、例えば5人以上など一定の人数以上での飲食は食事券やポイントの対象外とすることについて、家族での食事の扱いも含め、都道府県知事に対し検討を要請する考えを示しました。

さらに、派遣可能な保健師などの専門人材をおよそ600人確保しているとして、引き続き機動的に現場を支援するほか、承認されたワクチンを直ちに必要な人に接種できるよう、事前の準備に万全を尽くすと強調しました。

そして菅総理大臣は、これ以上の感染拡大を防止するため、引き続き自治体と緊密に連携しながら、メリハリのきいた対策に全力であたるよう、関係閣僚に指示するとともに、国民に対し「3密」の回避や会話の際のマスクの着用など、基本的な感染対策を改めて徹底するよう呼びかけました。

加藤官房長官「Go Toイート 制度上は都道府県の判断可能」

加藤官房長官は午後の記者会見で、北海道の感染状況について「最大限の警戒感を持って対処する必要がある。クラスター対策班の専門家や福祉施設に対するDMATの派遣、全国知事会などの協力による保健師の応援派遣などを行ってきており、引き続き北海道庁や札幌市と緊密に連携をとり、万全な対応を図っていきたい」と述べました。

一方で、都道府県をまたいだ移動について「一律に自粛を要請する必要があるとは考えていない。『Go Toキャンペーン』については引き続き、安全で安心な新しい旅のスタイルの普及、定着を図るとともに、参加する事業者に対しても感染対策の徹底をお願いすることが必要だ」と述べました。

また加藤官房長官は、飲食店を支援する「Go Toイート」について、「実施地域や会食人数などについて、感染状況などを踏まえ都道府県が判断することは制度上は可能だ。実際にそうした対応をしているわけではないが、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図るため、農林水産省で、飲食の場での感染対策の在り方についてさらに検討を行っている」と述べました。

西村経済再生相「交付金は対象エリアや店舗数もとに」

西村経済再生担当大臣は記者会見で、地方創生臨時交付金の追加配付について「都道府県知事が、休業要請や営業時間の短縮要請をしようとしても財源がないから、ちゅうちょすることがあってはならず、的確に、時機を逸することなく行ってもらえるよう支援する。要請の対象エリアや店舗数をもとに、支援額を決めていければと考えており、できるだけ早く、詳細を公表したい」と述べました。

首相「感染対策とりながら観光需要を回復を」

総理大臣官邸で開かれた、政府の「観光戦略実行推進会議」には、菅総理大臣や赤羽国土交通大臣ら関係閣僚のほか、旅館の経営者なども出席しました。

この中で、菅総理大臣は「観光関連の仕事には、全国でおよそ900万人が従事している。それぞれの地域を守り、わが国が観光立国として生きていくため、新型コロナウイルスの感染対策と両立しながら、なんとか現状を乗り越える必要がある」と指摘しました。

そのうえで「今後、国内外の観光客に楽しんでもらえるコンテンツ作りは、観光を復活させていくうえでも極めて重要だ。また、施設の改修や、複数のホテル・旅館の提携なども含めて、今のうちに、できることをしっかり支援していく必要がある」と述べました。

そして観光庁を中心に、ポストコロナを見据えて感染対策と両立しながら、観光需要を回復させる政策プランを、次回の会合で取りまとめるよう指示しました。

立民 枝野氏「政府は手をこまねいてぼう然としているだけ」

立憲民主党の枝野代表は、党の役員会で、新型コロナウイルスをめぐる政府の対応について、「経済を回す重要性は否定しないが、合わせて検査の充実や医療体制の整備も進めなければ、大変なことになると危惧していた。率直に言って、政府は、手をこまねいてぼう然としているだけだと受け止めざるをえない」と述べました。

そのうえで、枝野氏は、「これ以上の感染の急増を食い止め、間違っても医療が崩壊することのないよう医療体制の整備や支援を急がせたい。国会の場で、私たちが繰り返し求めてきたことを、改めてより強く、厳しく指摘していく」と述べました。

共産 小池氏「Go Toトラベル 全国一律はやめるべき」

共産党の小池書記局長は記者会見で、「Go Toトラベル」について「なぜそのまま続けるのか。政府の対策は無為無策というより、感染の拡大防止に逆行している。感染が急増している地域も含めた全国一律で続けるやり方はやめて、地域ごとに支援が届くやり方を検討すべきだ」と述べました。

また、小池氏は「小規模事業者の中には一連の『Go Toキャンペーン』から取り残されているところも多い。こうした事業者に対しては持続化給付金を継続するなど、キャンペーンだけでなく直接給付も組み合わせるようなやり方に変えるべきだ」と述べました。

クラスター対策班メンバーが現状「対応能力超える」

新型コロナウイルスの感染が急速に拡大している札幌市に国から派遣されたクラスター対策班のメンバーが、NHKのインタビューに応じ、「保健所の対応能力をはるかに超える数のクラスターが発生している」として、調査と対策が追いついていない現状を明らかにしました。市は、介護施設や病院で起きたクラスターへの対応を優先する一方、学校や企業でのクラスターは対策を後回しにせざるをえなくなっているということです。

NHKのインタビューに応じたのは、国のクラスター対策班のメンバーで、今月7日から札幌市での対策にあたっている、国立感染症研究所の山岸拓也室長です。

山岸室長は、札幌市で新たな感染者が連日100人以上報告されていることを挙げ、「市の保健所の体制をはるかにしのぐような患者とクラスターが発生している」と述べて、感染経路を特定する調査やさらなる拡大を防ぐための対策が追いつかなくなっている現状を明らかにしました。

そのうえで、「重症者を減らすためにより重要なクラスターに資源を集中している」と述べ、高齢者や基礎疾患のある人が多い介護施設や病院で起きたクラスターへの対応を優先し、若い人や軽症者などが多い学校や企業などでのクラスターは、濃厚接触者の特定は進めているものの、感染経路の調査や拡大を防ぐ対策は後回しにせざるをえなくなっていると説明しました。

山岸室長によりますと、札幌市の保健所では、およそ30人態勢で調査や対策にあたり、さらに応援の職員をおよそ100人増員し、濃厚接触者の特定にあたっていますが、先月半ば以降、クラスターの発生件数が対応能力を超えるようになっているということです。

実際、市では先月から発生したクラスターが15日の時点で45件と急増していて、繁華街のススキノの夜の接待を伴う飲食店をはじめ、郵便局や専門学校など多岐にわたっています。

このため保健所では、死者を最小限にし、ススキノの新規感染者をゼロにする、そして保健所の職員や医療従事者を感染させない、という3つの優先事項を定めていて、山岸室長は「重症者や死者を減らすというミッションのもとにやっている。学校や企業の対策もしていくべきだが、今はそのときではない」と述べています。

また、ススキノについて、山岸室長は「道内だけでなく、本州からもサラリーマンや観光客が来ていて、夜のまちの遊びもある。ウイルスはそこに巧みに入り込んだ。ここで感染した人が地元に持ち帰って広げている可能性がある」と話し、ススキノでの対策の強化が全体の感染拡大を抑えるうえでも重要だとしています。

山岸室長は、寒さの影響についても触れ、換気が十分に行われないことが感染拡大の一因である可能性があるとして、「暖かくて居心地のよい空間にみんながいると感染してしまう。暖房と換気のせめぎ合いだが、やはり感染しないことがいちばんで、まずは予防に努めてほしい。そして感染したときは保健所も最大限動いていることを理解していただき、冷静に対応してほしい」と述べ、市民1人1人がこれまで以上に「3密」の回避など予防と対策に徹底して取り組まないと、感染拡大は収まらないとの見方を示しました。

感染拡大続けば 札幌市内の病床が足りなくなる事態も

国立感染症研究所の山岸室長がNHKのインタビューに応じた背景には、このまま感染拡大が続けば札幌市内の病床が足りなくなり、本来助けられる命が救えなくなる事態になりかねないという強い危機感があります。

市によりますと、市内では今月15日の時点で366の病床があり、このうち191床が使用されています。

計算では100床以上空きがあることになりますが、山岸室長は「軽症者や中等症の病床はある程度確保できているが、重症者や介護が必要な人の病床はほとんどない」と明かし、実際は人工呼吸器などでの治療ができる重症者向けの病床はひっ迫していて、特に重症化のリスクが高い介護を必要とする高齢者を受け入れる病床が足りなくなっているということです。

山岸室長は「今のままで対応していくのは限界に近い。このまま感染が続けば、日常の医療も影響を受けて、一般の救急搬送もできなくなるかもしれない」と述べ、現状のままでは新型コロナウイルスの感染者への治療だけでなく、ほかの病気の治療にも支障が出るおそれがあると指摘しました。

そのうえで、若い人で無症状もしくは軽症の人への対応は、特段の事情がないかぎり優先順位が低くなっていることや、このままでは本来助けられる命も救えなくなる事態が現実になりかねないことを、市民1人1人に理解してほしいとしています。

山岸室長は「万が一感染したときは自宅での長期間の待機もありうるし、発症して軽症の場合には入院できないこともある。熱があるのにすぐに入院できないのは悲しいことだが、状況を理解してほしい」と話しています。

そのうえで「市民が一丸となってこの難局を乗り切っていくことが大事だと思う。保健所や病院とともに自分たちも一緒に対策に取り組むという覚悟でやってもらいたい」と述べ、市民1人1人が最大限の予防と対策に取り組む必要があると呼びかけています。

全国のほかの地域でも起こりうる

山岸室長は「札幌市は常に全国に先駆けて流行が発生する地域で、今回も過去にない感染拡大がいち早く起きている」と述べ、今後同じことが東京や大阪など全国のほかの地域でも起こりうると指摘しています。

山岸室長は、感染が急速に拡大している現状について「生きるためには経済を回さなければならない。一方で感染症も予防しなければならない。この大変難しいバランスを探っていった結果、経済活動を開いたときに流行してきてしまった」などと述べ、各地との往来や学校や企業の活動再開などが感染拡大の一因である可能性を挙げました。

特に札幌市の繁華街、ススキノについては「従業員のほか、市内や道内、それに本州からも客が来ており、行動の把握が難しくなっている。その人たちが持ち帰って広げている可能性がある」と述べ、ススキノから感染が広がっていった可能性を指摘しています。

具体的には、先月の時点でススキノにとどまっていた感染の連鎖が今月にかけてほかの場所に広がっていて、感染者が急増する「ホットスポット」と呼ばれる場所は、すでにススキノから医療機関や高齢者施設などに移ったとしています。

繁華街など市中で感染が拡大してから、1週間から2週間ほど遅れて医療機関や高齢者施設にも感染が広がるという傾向は、「第2波」のときも見られたということで、「今後、東京や大阪など全国のほかの地域でも札幌と同じような状況になる可能性がある」としています。

山岸室長は「結果的にはこれが第3波の始まりになってきていることは十分考えられる」と指摘したうえで、「未曽有の事態となっているが、いかに抑え込むかが試されていると思う」と述べ、さらなる感染拡大を食い止められるかどうかの瀬戸際にあるとの認識を示しています。