登校の子が授業参加
オンライン授業がきっかけに

長期の休校中に、全国で導入が始まったオンライン授業。タブレット端末の不足や、授業の負担が大きいという課題もありますが、学校からは、うれしい発見があったという声も聞かれます。それは、不登校の子どもたちが授業に参加できるようになったというものです。
学校再開後も、そうした子どもたちのため、オンライン授業を続けている自治体もあり、専門家も、「コロナをきっかけに、学びはすべて学校でという仕組みは見直されるべき」と指摘しています。

新型コロナウイルスの影響で、全国の学校では、休校中にオンライン授業の導入が急ピッチで進められました。

熊本市は、もともと端末の導入が進んでいたため、4月からオンライン授業を行ってきましたが、市内の11の学校から、「オンライン授業に不登校の生徒が参加できた」といった報告が相次いで寄せられたということです。

このため熊本市は、学校の再開後もそうした子どもたちが、学校に来なくても、オンライン授業に参加し続けられるよう、子どもたちへの端末の貸し出しや学校側の体制整備を進めています。

こうした報告は、熊本市だけでなく、オンライン授業に力を入れているほかの地域からも上がっています。

福岡市の中学校では、今月から一部の授業をオンラインで中継し、不登校の子どもたちが、自宅で視聴できる取り組みを始めたということです。

学校教育に詳しい熊本大学教育学部の苫野一徳准教授は、「不登校の子どもたちが授業に参加できたのは、自分にとって心地のいい学習空間があることに気づけたからだと思う。不登校問題の本質は、同質性の高い学校での学びが窮屈だったことが大きい。オンライン授業は学びの個別化が尊重され、学力の保障もできる。コロナをきっかけに、みんなが一律に学ぶ学校の仕組みそのものが見直されることにつながれば」と話していました。

オンライン授業だと なぜ参加できる

オンライン授業だと、なぜ参加することができたのか。

不登校を経験した高校2年の男子生徒が話を聞かせてくれました。

この生徒は中学生の時、友人とのトラブルで不登校になりました。

いまも学校は休みがちですが、オンライン授業には、1日4、5時間にわたり、参加できたといいます。

男子生徒は、「完全に自主的と言うわけではなくて、ほどよく強制されるみたいな感じがよかった。オンライン授業は自由度が高くずっと座っていなくていいだけでも、やる気が出てきますね。学校だと授業やテストが全くわからないとまずいなと思いますが、オンラインはみんなと同じなので楽ですね。ふだん興味のなかった科目も少し楽しかったりして、オンライン授業はすごくちょうど良かった」と振り返ります。

男子生徒の母親は、「自分で机に向かって勉強している様子は、16年間で初めてだったので、すごく感動しました。コロナが終息に向かうことはよいことなんですが、そのままオンライン授業が終わってしまうのは残念です」と話していました。

学校再開後もオンライン継続 学校側の模索

熊本市の富合中学校では、休校が続いていた先月からオンライン授業を始めたところ、不登校だった生徒たちも、授業に参加するようになりました。

なかには、家庭訪問を繰り返しても学校に来られなかった生徒もいて教員たちも驚いたといいます。

学校は、すでに再開しましたが、「オンラインで学び続けたい」という子どもの希望を聞き入れて、今もテレビ会議システムを使って授業を続けています。

この日は、英語の授業が行われ、中学2年の生徒が自宅から授業に参加し、教員と一緒に発音の練習をしたり単語テストを受けたりしていました。

男子生徒は、「今まで勉強がやりたくても、学校に行こうとすると、できない状況でした。これからどうすればいいかとずっと考えていて不安でした。オンライン授業は、僕に勉強する機会を与えてくれた」と話していました。

しかし、教員にとっては、通常の授業とオンライン授業の両立は大きな負担です。

そこで、教員たちが話し合い、空き時間に順番にオンライン授業を行うことにしました。

また、授業に参加できても、すぐに学校に通わせるのでなく、本人に合った形で、学習を支援していくことを確認していました。

小田高子校長は、「オンライン授業は、事情があって、学校に来られない子どもたちにとって、学習の保障という意味では本当によい手だてかなと思います。不登校の子どもも、一人一人状況が違うので、どういった形で授業を提供できるか、模索していこうと思います」と話していました。