年度予算案の閣僚折衝
診療報酬全体ではマイナス改定

政府の来年度予算案の編成作業で麻生副総理兼財務大臣と各大臣による1日目の閣僚折衝が終わりました。医療機関に支払われる「診療報酬」について全体ではマイナス改定とすることなどが決まり、この結果、高齢化による社会保障費の伸びを4100億円程度に抑えることが固まりました。

厚労相「診療報酬」全体ではマイナス改定

17日の閣僚折衝では麻生大臣が13人の閣僚らと協議を行いました。

このうち加藤厚生労働大臣との折衝では高齢化で膨らみ続ける社会保障費の抑制に向けて、医療機関に支払われる「診療報酬」などについて協議しました。

その結果、「診療報酬」のうち医師の人件費や技術料などにあたる部分は0.55%引き上げる方針が決まりました。このうち通常の改定分は0.47%で、これに今回の特例的な対応として、救急病院の勤務医の働き方改革を推進する費用として0.08%が上積みされました。

一方、薬の価格にあたる「薬価」の部分は材料価格も含めて1.01%引き下げることが決まり、全体ではマイナス改定とすることで決着しました。

これらの結果、概算要求の段階で5300億円程度としていた、高齢化による社会保障費の伸びを圧縮し、4100億円程度に抑えることが固まりました。

閣僚折衝で決まった厚生労働省関連の主な施策です。

▽病院の再編・統合や病床数の削減の議論を促すため84億円が計上されます。再編・統合をして病床を削減した病院などを対象に、自由に使える補助金を一定額支給します。

▽勤務医の働き方改革を進めるため、「地域医療介護総合確保基金」に143億円を計上するほか、診療報酬の改定で、救急医療を提供している病院などに総額126億円を措置します。

▽マイナンバーカードを健康保険証の代わりに使用できるよう、医療機関にカードの読み取り端末やシステムを整備するための費用として、768億円を計上します。

政府は2023年3月末までにおおむねすべての医療機関での利用を目指して普及を進める考えです。

加藤厚生労働大臣は閣僚折衝のあと記者会見し、診療報酬改定について「厳しい財政事情の中、病院の経営実態や賃金・物価の動向、医師の働き方改革も盛り込んだ改定ができた」と述べました。

そのうえで「団塊の世代が75歳になると国庫負担や保険料の増大につながり、高齢者だけでなく若い人の負担になる。同時に将来を見据えながら必要な医療を提供していける体制を作ることも大切だ。そういう中でのバランスをとった改定になった」と述べました。

防衛相 F2戦闘機の後継機開発費に111億円

河野防衛大臣とは、航空自衛隊のF2戦闘機の後継機を外国との協力を視野に日本主導で開発するため、主要部分の開発費として111億円を盛り込むことで合意しました。

政府は2000年から配備を始めた航空自衛隊のF2戦闘機が2030年代から退役するため、後継となるステルス性を持つ次期戦闘機を国際協力を視野に日本主導で開発することにしています。

河野大臣は記者会見で、「航空優勢を確保することは非常に重要なことだ。改修の自由度を考え、わが国主導で国際協力も進めながら開発をしていきたい」と述べました。

そのうえで、河野大臣は「アメリカとは同盟関係にあるので、運用面での相互運用性の確保は大事だと思っている。イギリスともこれまで、さまざまな意見交換をしてきている」と述べました。

国交相 橋など老朽化対策支援に2223億円

赤羽国土交通大臣との折衝では自治体が管理する橋やトンネルなどの老朽化対策を支援する費用として2223億円を計上することが決まりました。

文科相 英語教育担当の小学校教員1000人増

萩生田文部科学大臣との折衝では教員の負担軽減に向けて英語教育を担当する小学校の教員を新たに1000人増やすことなどで合意したほか、部活動の指導などにあたる外部人材を配置するのに必要な経費として62億円を充てることが決まりました。

萩生田文部科学大臣は麻生財務大臣との閣僚折衝のあと記者会見し、「教員の働き方改革はまさに総力戦で臨まなければならない。教員定数を着実に増やし外部人材を配置をして、できるだけ教員の皆さんが本来の仕事に取り組むことができる環境をつくることが大事だ」と述べました。

農相 「スマート農業」導入支援に15億円

江藤農林水産大臣とはAI=人工知能などを活用した「スマート農業」の導入支援に15億円を充てることで合意しました。

法相 出入国審査のシステム整備に185億円

森法務大臣とは東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、外国人旅行者に対する出入国審査を厳格に行うためのシステムを整備する費用などに185億円を盛り込むことで合意しました。

森法務大臣は麻生財務大臣との閣僚折衝のあと記者会見し「来年の東京オリンピック・パラリンピック開催などに伴う訪日外国人の急増に対応するための、円滑で厳格な出入国審査体制の整備などに必要な経費だ。最大限活用して安全・安心な社会の実現に全力を尽くしたい」と述べました。

外相 海洋プラスチックごみ対策などに25億円

茂木外務大臣とは、海洋プラスチックごみの対策をはじめ、国連が目指す「持続可能な開発目標」を達成するための費用などとして25億円を計上することで合意しました。

環境相「限られた人員と予算の選択と集中」

小泉環境大臣は麻生財務大臣との閣僚折衝のあと報道陣に対し「来年度の予算を気候変動対応型予算と位置づけている。気候変動と防災という観点で予算要求を認めていただいた」と述べました。

また行政事業レビューで抜本的に見直すよう指摘された事業については廃止を要望したと述べ、「環境省では初めて予算折衝で廃止要望をした。大変、異例なことだが、気候変動に対応する必要性が高まってきた中で、限られた人員と予算の選択と集中という観点で行った。予算に限らずこうした見直しを続けていく」と話しました。

復興相 福島産食品の安全性を海外でPRなどに4億7000万円

田中復興大臣とは東日本大震災からの復興などをめぐって協議し、東京電力福島第一原子力発電所の事故による風評被害を払拭(ふっしょく)するため、福島産の食品の安全性を海外でPRする取り組みや、外国人向けポータルサイトを構築する費用などとして、4億7000万円を盛り込むことで合意しました。

また東日本大震災の発生から再来年3月で10年になることから、政府主催のシンポジウムの開催やこれまでの支援に関する報告書をまとめるための費用として、1億2000万円を充てることも決まりました。

田中大臣は記者会見で、「来年度は私が被災地産品のトップセールスを実施するなど、海外に向けた情報発信を強化していく。外国にも行ってアピールしたい」と述べました。

18日に総務相と調整 20日に閣議決定へ

閣僚折衝は18日、高市総務大臣と地方交付税の規模などをめぐって調整を行い、すべての協議を終える予定です。

政府は来年度予算案を一般会計の総額で今年度の当初予算を上回る、過去最大の102兆円台後半とする方向で調整を進めていて、閣僚折衝の結果を踏まえ、今月20日に閣議決定することにしています。