ットで発信しても、
誰も見てくれない!

日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネを伝えるキャンペーンを展開します。

このところ、「開かれた議会」や「情報公開の重要性」が叫ばれていますが、現状はどうなのか。実は、インターネットで発信しても…悩ましい現場の声をご紹介します。

もっとオープンに!

まだまだ十分じゃない、という声が多く見られました。
「もっとオープンであるべき!」(40代男性市議)
「議会の活性化と情報開示、開かれた議会がもっと必要だ」(50代男性市議)

議会や議員の側からのアプローチが重要だ、と50代の議員も考えています。
「議会や議員の活動をもっと『見える化』して、県民に興味を持ってもらう努力をすべき。また、議会・議員側からアプローチして幅広く県民の意見を聞き、政策に反映する努力が必要と考えます」

50代の女性議員は、個々の議員の賛否なども公開してはどうかと提案します。
「会派、政党ごとをやめ1人2人のYes、Noをチェックしやすくして、情報公開する」

アンケートでは、「情報公開は適切だ」と答える議員が大半を占めています。ただ自由記述欄では、以下に挙げるようなさまざまな意見が相次ぎました。

情報公開すると、活性化するはず!

70代の男性市議は、情報公開が議会の活性化につながるといいます。
「住民の関心が少ない。議会として情報公開のあり方にも問題あり。活動の活性化、議員資質の向上を図る。住民自治意識の醸成も必要。住民意見を政策につなげる取り組み」

密室で決めごとをさせないためにも大切だと、50代の男性議員は指摘します。
「議会の側からの情報公開をもっと進めること。また政策決定過程への住民参加を強めることが必要と感じています。理由は、住民の目にさらされないまま、村の決定がおこなわれて政策が住民の意向を無視して進められることがあるため」

60代の男性議員は、人材確保にも効果的だと考えています。
「議会が見えるようになれば、優秀な議員が出て来ることになる」

でも、口先だけじゃ

とはいえ、口先だけじゃないかと、30代の男性市議は憤ります。
「口先では『開かれた議会』と言っていますが、情報公開などには極めて後ろ向きであり、むしろ後退していると感じています」

40代の男性議員も、後ろ向きの議員が多いと。
「情報公開に後ろ向きな議員が多く、議会への住民参加もまだまだである。今後も議員間議論、情報公開、住民参加の3本柱について議会改革に取り組み続けるべき」

別の40代の男性議員も、同じ意見です。
「世の中が変わっても変われない議員が多い(特に情報発信や情報公開が進まない)」

それなら、活動報告を

では、従来から行われている報告会やチラシなどの配布で議員や議会のことを知ってもらうという方法はどうなのでしょうか。

60代の男性議員は、活動報告を義務化すべきだと提案します。
「毎月の活動報告を義務化し、有権者が閲覧できるようにする」

50代の男性議員も、活動を報告する仕組みが必要だと。
「議員活動に一定の基準を決め(各々差別のない共通のもの)、全議員それについて事務局を通じて公表すべきである。議会報告会等は、定期的にもつべきである」

いや、その方法じゃダメ

市議会が発行するものの内容が不十分だというのは、60代の女性議員です。
「有権者に対して議会の様子を知らせることが大変不充分であると思います。例えば『市議会だより』では、毎回一般質問を行っても隔号でしか載らないことや、中身も反映されない実態があります」

方法そのものに限界があると、60代の男性議員はいいます。
「議会での一般質問、委員会での質問・意見等の活動が、市民になかなか周知されない。市政報告を毎定例議会の度に発行し届けているが、限界がある。議会活動と選挙に隔たりを感じています」

40代の女性議員も、結局は関心のある人にしか届かないと。
「チラシや報告会は興味ある人にしか伝わらない。一住民として活動を広めていく必要があるのではないか」

傍聴ゼロも…もっと来て!

情報公開どころか、そもそも議会を傍聴に来る人がいない、という悩みの声も相次ぎました。
「本会議等の傍聴人がわずかであり、特別な問題がないかぎり関心が薄いことが心配である」(70代男性議員)「議会中への傍聴人が常に少ない。議員並みに行政側も傍聴への促進を促してほしい」(70代男性議員)

60代の男性議員は、傍聴に来る人はだいたい決まっていると。
「いまの地方議会に対して、有権者の関心が低すぎると考えます。関心を高めるため、議会の傍聴案内を頻繁に出していますが、傍聴に来ていただける方は限定的です。議員の努力不足の側面は否定できませんが、開かれた議会を実現する為に今後も努力し続けたいと考えます」

ある男性議員は、有権者に呼びかけます。
「議会傍聴してほしい。自分が投票した議員が議会で、どのような質問、発言をしているのか。本会議、常任委員会等を傍聴し監視してもらいたい。議員は投票(支持)してくれた方々の代弁者でもあるのです」

傍聴がないことで、悪影響が出ていると、60代の議員は問題視します。
「有権者が傍聴にほとんど来ないので、4年間ほとんど質問もせず、発言もせず、居眠りをしている議員も半数近くいる。行政に対する住民の意識が低すぎる。それでいて、選挙の時だけ盛り上がる」

傍聴しやすくできるはず!

傍聴に来やすい環境を作るべきだ、という意見も相次ぎました。

目立ったのは、夜間や休日に議会を行うべきだという意見です。
「町民の声を議会に反映するには!!夜間、土日、祝日議会を実施する。多種多様な職種の人材が働きながら議会に参加しやすくする」(70代男性町議)
「もっと住民の人に議会を傍聴してもらうためにも休日、夜間の議会開会も実施することも必要ではないかと思います(年に何日かは)」(60代男性議員)

議場のバリアフリー化も大事だ、と60代の男性議員は指摘します。
「議員や議会は住民の意識や世論を映すひとつのカガミではないかとも思ったりしているが、関連してもっと議会傍聴をお願いしたい。そのためにも、高齢者や(車イスを含む)障碍者のための議場のバリアフリーが必要」

訪れた人に資料を配ってはどうか、というアイデアを認めてもらえなかった議員は、憤っています。
「もっと傍聴者に発言がわかるよう、資料の配付を認めるようにしてほしい。古い議員が発言もしないのに、議連で認めない。誰のための議会なのだろうか。また、議会だよりに、議案に対する賛否をのせるなどして議員の態度をのせてほしい」

広告を出そう、というのは60代の男性町議です。
「議会の傍聴者が少ない。色々と手立ては考えているが効果が出ない。経費は多少かかるが新聞折り込みも必要」

招待状を出してはどうか、というのは70代の男性市議です。
「傍聴者が来やすくなるような工夫をすること(例えば自治振興委員会へ傍聴招待状を出したり、各議員が動員などをすること。現在、傍聴者ゼロの時も多い)」

必要としながら動かない

ところが、70代の男性議員は、呼びかけておきながら傍聴させない状況があると。
「傍聴においでくださいと住民に公報で言っておきながら、実際に委員会などの傍聴に来ると傍聴人をしめ出し、傍聴させないという矛盾」

必要といいながら動こうとしない、と60代の男性議員はもどかしさを感じています。
「議員活動の可視化に議会(議員全員)がもっと関心を持ち、具体的にひとつひとつ実現に向けて努力する必要があると思うが、議論の中では『必要…』と発言するが、具体論まで行かない。最終的には多数決で否決し具体的に進んでいない。各人(議員ひとりひとり)がもっと自覚と責任のもと有権者の臨む議会の可視化を実現することが重要」

女性議員が増えたことで、傍聴にも効果があったというのは50代の女性議員です。
「私の議会は、女性が他市町村より多く在籍しています。女性議員が増えた事により、女性の関心が議会に向いてきたように思えます。会議の傍聴にも毎回多くの女性が足を運んで下さいます」

「開かれた」より「格式」!?

一方、70代の男性議員からは、こんな声が。
「議会は重い、格式高くあるべきところであるが『住民に開かれた議会』のために軽くなって来ている。同時に議員の『品位』が落ちている結果であると思います」

いや、やはりそれではダメだ、と60代の男性議員はいいます。
「格式も大事かもしれないが、傍聴席に市民が少ない議会ではいけないと思う」

小さな議会でもテレビ中継を!

傍聴に来てくれないなら、テレビ中継だ!という意見も。
「国会中継のように、地方議会もテレビ放映を望みます」(女性議員)
「『イギナシ』以外、発言しない議員もいます。このような実態が分かるように、どんな小さな議会でもテレビ中継する必要があります」(50代男性議員)

「情報公開をもっとすすめるべき。本会議はすべてテレビ中継すべき」(50代男性議員)

60代の男性議員は、中継があると緊張感が出ていいといいます。
「当村の議会はケーブルテレビにて生中継されます。それなりに緊張感があります。真剣な姿の議員を支持者の方も望まれることだと思います。そして、常識ある議員が求められると思います」

ただ、60代の男性議員は、放送しているのに関心を持ってもらえないと。
「現状本会議のケーブルテレビ放映と議会だよりの二つが議会活動の情報開示の中心となっているが、これに関心がもたれないことには、議会議員が何をしているのか全く理解されない。では、それを打開する方策はと自問するも名案が浮かばず悩むことが多い」

ならば、インターネットで中継を

テレビは難しくても、インターネットで中継を、という意見も相次ぎました。実際に導入している議会も増えています。
「住民に議会のことがわかるようにすること。議会広報の充実や議会報告会の実施、すべての会議を傍聴可能にしたり、インターネット中継を実施すること、夜間・休日議会の実施で労働者世代にも傍聴しやすい議会づくりなど」(40代男性議員)
「インターネット環境があるので、市役所下のロビーや市民交流プラザロビーなどで放映し市民に公開すべき。」(60代女性市議)

70代の男性議員は、効果があったといいます。
「情報公開等(CATV,ネット中継他)で市民の関心が高くなった」

ただ、費用の問題があると、40代の男性議員は悩みます。
「インターネットによる全面中継に及び腰。編集やテロップをきちんとつけることに人手やお金をかける方向で考えてしまい、予算上の理由で進まない」

50代の女性議員も、同じ状況のようです。
「市民に開かれた議会にするためインターネット等の活用が不可欠だが、お金(税)もかかるためいっきには進まない」

ところが、ネット発信しても…

ところが、実際にインターネットで発信した議会から、愕然(がくぜん)とするような声が。
「本会議をはじめ、委員会、特別委員会のすべてをインターネット動画配信しても有権者の意識に変化を感じない」(60代男性議員)
「せっかく本会議や委員会の様子がインターネット中継されているのだから、是非みなさんに見ていただきたい」(50代男性議員)

40代の男性議員は、ネットでもリアルでもダメだと。
「委員会での議案に対する質問等、議会での議決に至るまでの過程をインターネット中継などを使い配信しているのですが、見ていてくれる方は非常に少なく、私たちの生活に直接関係している議案について、関心を持っていただけないのは残念です。また、市内各地域で行う議会フォーラムを開催しているのですが、参加していただける市民の方が少ないのが現状です。今後、市民の皆様に、議会全体での活動に興味を持っていただけるよう活動を続けていきたく思います」

50代の男性議員は、見る人が限られていると指摘します。
「地方議会に対する町民の興味関心が高まらないことを残念に感じている。インターネット、広報、議会報告会などで議会の内容を発信しているが、限定的な人が知る手段として利用参加するのにとどまっているのではないか」

ただネット発信するだけではダメだ、と50代の男性議員はいいます。
「よく議会の『見える化』などと言って議会のインターネット中継のをするべきという話はあるが、議会での議論だけでは何の話をしているかさっぱり分からないと思う。(だからインターネット中継の視聴者数や回数が上がらない。)一つの問題について何故そう言っているのか?経緯や問題点、メリット、デメリットが具体的に説明を受けた上での議会なら見てても面白いと思う」

70代の男性議員は、実際に選挙には何も反映されなかったと、落胆しています。
「議員定数削減条例を提案し、やっと可決された。だが、改選時には削減に反対した議員が数多く当選し、積極的に議会活動を行っていた議員が何名も落選した。議会活動のライブ配信や議会便りの発行も行うなど、情報公開を積極的に進めているのに、有権者にその思いが伝わらず、地域の代表的・組織の代表的な議員が当選する。これが町村の議会議員の宿命なのか、悲しい思いに浸る日々である」

あれもこれもダメで…

どの方法でもうまくいかない、という50代の男性町議です。
「地方議会に対する町民の興味関心が高まらないことを残念に感じている。インターネット、広報、議会報告会などで議会の内容を発信しているが、限定的な人が知る手段として利用参加するのにとどまっているのではないか。議員の成り手不足はもちろん議会活動を知ってもらうという議員の努力は重要ではあるが、町民(有権者)の力量によるところが大きいと感じている」

60代の男性市議も、市民に伝えるのは難しいと考えています。
「本会議をインターネット中継したり、議会だより、議会報告会等で市民にお伝えしているが、なかなか理解して頂けなく、市民の感心が薄い。投票率の低下が気になる。個人的に支援者への報告会や訪問等で説明はしているが多岐に渡る内容のため、理解して頂くのに工夫が必要と考えている」

アンケートの結果でも、「有権者が議会に無関心」と考える議員が、3人に2人となっています。

それでも「評価してください」

しかし、有権者に議員を「評価」してもらうしかないんだ、という30代前半の若手議員の訴えを、最後にご紹介します。
「地方議会における一番の課題は、『政治家を適切に評価する風土がない』ことだと思っています。例えば、活動報告や情報公開について、議員は何しているか分からないとのお声もいただき、反省すべき所も多いと思いますが、昨今は情報公開に力を入れている議員・議会も増えています。不十分かもしれませんが、これまでやってこなかったことをしっかりとやっている議員を適正に評価し、チャンスを与えることが、一歩ずつ政治をよくすることにつながると思います。政治家は有権者の評価を気にしますので、『評価基準の量と質』によって、政治家の活動や質が変わってくるのは当然です。
有権者の皆さんの信任によって政治に関わらせていただいていますが、政治家は有権者の皆さんの鏡だと思います。多様な判断基準や熟考を重ねたうえでの投票が行われれば、それだけ政治家の質、政治の質が上がっていくということを知っていただいて、選挙にむかっていただきたいです。
自分の一票が政治を変える、これは真実だと思います」

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寄せられた声をもとに、記事は随時更新していきます。一旦、集計は終了しましたが、ご意見は今後も参考にさせていただきますので、まだ回答されていない議員のかた、お待ちしております。
また、議員の方だけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下の画像をクリックしていただけると、「ニュースポスト」が開きます。そちらにぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】
NHKは、今年1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。4月27日(土)には、午後9時から「NHKスペシャル」の放送を予定しています。

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