国国会議長の発言
「甚だしく不適切」首相

慰安婦問題をめぐって、韓国のムン・ヒサン(文喜相)国会議長が先に天皇陛下が謝罪すれば解消されるなどと述べたことについて、安倍総理大臣は衆議院予算委員会で、甚だしく不適切な内容を含み極めて遺憾だとして、韓国側に強く抗議するとともに謝罪と撤回を要求したことを明らかにしました。

慰安婦問題をめぐって、韓国のムン・ヒサン国会議長は先にアメリカのメディアのインタビューで、「総理大臣か、まもなく退位される天皇が、おばあさんの手を握り、『本当に申し訳なかった』とひと言言えば、すっかり解消されるであろう」などと述べました。

これについて、安倍総理大臣は衆議院予算委員会で、「この発言を読んで本当に驚いたところだ。わが国として、直ちに外交ルートを通じ、韓国側に対して、今回のムン・ヒサン議長の発言は甚だしく不適切な内容を含むものであり、極めて遺憾である旨、厳しく申し入れを行った。強く抗議をするとともに謝罪と撤回を求めたところだ」と述べました。

官房長官 外交ルートを通じて抗議

菅官房長官は記者会見で、外交ルートを通じて抗議し、謝罪と撤回を求めたことを明らかにしました。

菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、「ハイレベルを含む外交ルートを通じ、韓国側に対して、甚だしく不適切な内容を含むものであり極めて遺憾である旨、厳しく申し入れ、強く抗議した。同時に、謝罪と撤回を求めた」と述べました。

そのうえで、菅官房長官は「ムン・ヒサン議長側は、その後、『日韓関係を重視し、両国の関係が未来志向的に進んでいくことを望んでいる』とした報道資料を発出した。また、韓国政府からも『本件発言が、早期の日韓関係改善を願うムン議長の思いから出たものであり、報道のされかたは同議長の本意ではなかった』という説明があったが、今回のムン議長による発言は極めて不適切なものだ」と述べました。

河野外相「極めて無礼な発言」

河野外務大臣は衆議院予算委員会で、「到底受け入れられるようなものでもないし、極めて無礼な発言であり、政府として、謝罪と撤回を求めているところだ」と述べました。

公明 山口代表「いかがなものか」

公明党の山口代表は記者会見で、「天皇陛下に謝罪を求めるのはいかがなものか。日韓の国民どうしの交流はむしろ活発に行われているので、政治がもっと国民の現実をよく見て両国の関係が円満なものになるよう努力すべきだ」と述べました。

共産 志位委員長「現天皇は問題にならず」

共産党の志位委員長は記者会見で、「日本政府として、真剣な謝罪が必要で、特に総理大臣が、みずからの肉声できちんと謝罪しないといけない。天皇は、日本国憲法で政治的権能を有しないとしている。昭和天皇は、戦争の最高責任者だと思っているが、現天皇は戦争責任ということは問題にならないと思う」と述べました。

韓国国会議長「論争を望まず」

韓国の国会の報道官によりますと、ムン・ヒサン国会議長は慰安婦問題をめぐってアメリカメディアが伝えた自身のインタビューの内容について、訪問先のワシントンで記者団に対し、「重要な地位にある指導者の誠意ある謝罪を強調する文脈から出た表現だ」と釈明したということです。そのうえで、「日韓両国での不必要な論争を望まないし、起きてはならない」と述べたということです。

一方で、ムン国会議長は、「慰安婦問題は被害者が納得できる誠意ある謝罪が優先されなければならない。日本側は数十回、謝罪したと話すが、私にはそのようには見えない」と述べたということです。

また、韓国外務省のノ・ギュドク報道官は12日の定例記者会見で、「発言は元慰安婦の方々の名誉と尊厳を回復し、そして心の傷を癒やすには、日本側が誠実な姿勢を見せる必要があるという点を強調する趣旨だと理解している」と述べました。そのうえで、韓国政府としてムン議長に対し、謝罪や発言の撤回を勧告するのかという質問に対しては、「われわれの立場は、すでに説明した」と述べ、勧告はしない方針を示唆しました。

韓国国会のムン・ヒサン議長は12日、アメリカ議会の幹部と面会するため、首都ワシントンの連邦議会を訪れました。

この際、NHKの記者が慰安婦問題をめぐるムン議長の発言に対して安倍総理大臣が謝罪と撤回を要求したことについてコメントを求めましたが、ムン議長は何も答えませんでした。

ムン議長に同行している関係者はカメラを遮り、今回の発言が日本で反発を呼んでいることに議長らが神経をとがらせている様子をうかがわせました。