国人材法案”国会提出
閣僚や各党の反応は

外国人材の受け入れを拡大するため、政府は2日、2つの新たな在留資格を設ける出入国管理法の改正案を決定し、国会に提出しました。法案は、単純労働の分野でも外国人の就労を認めるもので受け入れ政策の転換と言えます。

人手不足を補うため政府は、来年4月から外国人材の受け入れ拡大を目指していて、2日の閣議で「特定技能」の「1号」「2号」という新たな在留資格を設ける出入国管理法の改正案を決定しました。

「特定技能1号」は、特定の分野で相当程度の技能を持つと認められた外国人に与えられ、在留期間は最長で通算5年で、家族の同伴は認めないとしています。

「特定技能2号」は、「1号」を上回る「熟練した技能」を持つと認められた外国人に与えられ、在留期間に上限を設けず、長期の滞在や家族の同伴も可能になるとしています。

また法案には、与党の要求を踏まえ、法律の施行後3年が経過したら新たな制度の運用を点検し、必要な措置をとる、とする見直し規定が盛り込まれています。

受け入れの対象としては農業や介護業など14業種が検討されていますが、法案には制度の詳細は明記されておらず、成立後に省令で定めるとしています。

今回の法案は、大学教授など「高度な人材」に限られている外国人の就労を単純労働の分野でも認めるもので、受け入れ政策の転換と言えます。

一方、2日は、外国人の出入国などの管理を厳格化するため法務省入国管理局に代わる「出入国在留管理庁」を設ける法律の改正案も決定されました。

政府は2日夕方、法案を国会に提出しました。

政府与党は来週8日に衆議院で法案の審議に入り、今の国会での成立を目指しているのに対し、野党側は、制度の詳細が詰まっておらず成立を急ぐべきではないとして、十分な審議を求めています。

法相「法案は重要かつ急務」

山下法務大臣は閣議のあとの記者会見で「今回の法案は、人手不足が深刻化し経済や社会基盤の持続可能性を阻害する可能性があることから、即戦力の外国人を受け入れる仕組みを構築するもので、重要かつ急務だ。今の国会での成立に向けて、しっかりと説明をして、慎重かつ丁寧な審議をお願いしたい」と述べました。

国交相「業界に働きかける」

石井国土交通大臣は記者会見で「近い将来の高齢者の大量退職や生産年齢人口の減少などにより、現場において担い手を確保していくことが重要な課題となっている。取り組みが着実に進むよう関係業界にも働きかけを行いしっかりと取り組んでいく」と述べました。

国土交通省が所管する分野では建設業、造船・舶用工業自動車整備業、航空業宿泊業が、新たな在留資格「特定技能」の受け入れ対象として検討されています。

農相「現場からは期待の声」

吉川農林水産大臣は記者団に対し「農業や漁業の現場からは期待の声があるので、現場でどのような人材が求められているかしっかり見極めたい。必要な分野で円滑に受け入れられるように、法務省などと連携して検討を進めていきたい」と述べました。

政府は新たな在留資格「特定技能」の受け入れの対象として農業、漁業を含む14業種を検討しています。

厚労相「医療保険の適用が重要課題」

根本厚生労働大臣は記者団に「受け入れの拡大にあたっては、外国人材に医療保険を適正に適用していくことが重要な課題だ」と述べました。

そのうえで「海外に住む家族にまで医療保険を適用すべきかどうかや、他人の保険証の流用といった不適正な事案などの問題が取り沙汰されていて、対応の強化を検討したい」と述べ、今後、法整備も視野に、対応を検討する考えを示しました。

経済再生相「潜在成長力引き上げに効果ある」

茂木経済再生担当大臣は記者団に「日本経済にとって最大の課題である潜在成長力の引き上げのためには、人材の筋力と企業の筋力という2つの筋力をつけなければならない。人手が不足している分野で一定の能力がある外国人を受け入れることは人材の筋力の強化につながり、潜在成長力の引き上げに効果があると考えている」と述べました。

経産相「コンビニ業界の要望 引き続きよく話を」

コンビニエンスストア業界が新たな在留資格「特定技能」の受け入れ対象とするよう要望していることについて、世耕経済産業大臣は記者団に「人材不足が課題なのは事実だと思う。ただ、ICタグを使って自動でレジをやるなどの工夫の余地もある。引き続き業界とよく話をしていきたい」と述べました。

政府は新たな在留資格「特定技能」の受け入れの対象として14業種を検討していますが、コンビニエンスストア業界は含まれていません。

首相「共生社会へ環境整備」

安倍総理大臣は衆議院の予算委員会で「就労者を確保できず、人手不足が成長を阻害する大きな要因になり始めている中で、しっかりと制度を作っていくため、今までの技能実習制度の中での問題を把握し、是正すべき点は是正しながら対応していく」と述べました。

そのうえで「外国人材を受け入れる以上は、当然、社会の一員としてその生活環境を確保するため、現在検討を進めている総合的な対応策をしっかり実行に移して、来る側も受け入れる側も、お互いが尊重し合えるような共生社会の実現に向けた環境整備をしっかりと進めていく」と述べました。

官房長官「外国人が働きたい国目指す」

菅官房長官は記者会見で「外国人が働いてみたい、住んでみたいと思える国を目指して、職場、自治体、さらには教育面などにおける総合的な対応策を、法務省が司令塔となって年内に政府全体でまとめることにしている。具体的には、自治体の窓口の一元化、日本語学校の質の向上、外国人の受け入れ可能な医療機関の体制整備、また、保証金や違約金を徴収するといった悪質な仲介業者の排除などを検討している。今回の在留資格における外国人材については日本人と同等の報酬にしたい」と述べました。

公明 幹事長が苦言「整合性取れた答弁を」

公明党の斉藤幹事長は記者会見で「労働力不足の解決に向けた1つの方策であり、重要な法案なので丁寧に疑問点に答えていくことが必要だ」と述べました。

そのうえで、1日の衆議院予算委員会での政府の答弁をめぐって「『あいまいだ』とか『生煮えではないか』といった批判があるが、政府が与党内の議論を100%理解していない答弁を行ったからだと思う。政府には論理的で整合性の取れた答弁をしてもらいたい」と苦言を呈しました。

立民 代表代行「がらんどうの無責任な法案」

立憲民主党の長妻代表代行は記者団に「外国人労働者が何人増えるのかや、どういう根拠に基づいて業種を選定するのかなど、がらんどうの法案で、自治体の受け入れ態勢については『それぞれが頑張ってください』という非常に無責任な法案だ。国論を二分する、国家百年の計に立つ問題なので来年の通常国会で、じっくり審議すべきだ」と述べました。

国民 国対委員長「生煮えの法案 再提出すべき」

国民民主党の原口国会対策委員長は記者会見で「ほとんどが省令に委任され、法文に当然書くべきことが書かれておらず、法案の骨格も生煮えだ。しっかりと制度設計を行って腰を落ち着けて議論し、再提出すべきだ。いろんな部門にまたがるので最低でも連合審査会で議論すべきだ」と述べました。

また国民民主党の山井和則衆議院議員は政府に対する質問主意書で日本人の雇用への影響などをただしました。

これに対して政府は閣議で決定した答弁書で「外国人材を受け入れることで日本人の雇用に悪影響が及ぶことはない」としています。

また山井氏は「『特定技能2号』の外国人は全員が永住できるか」とただしたのに対し、政府は「望めば全員が永住を許可されるということはない」としています。

共産 政策委員長「外国人の人権侵害を放置」

共産党の笠井政策委員長は記者会見で「外国人労働者の人権侵害をそのままにして在留資格の枠だけ定め、どの分野にどれだけ受け入れるのかなど、重要事項はすべて政府に白紙委任しており、法案の体をなしていない」と述べました。