神奈川県 黒岩知事“コロナ感染者 人数だけ把握に変更したい”

医療現場の負担を減らすため、新型コロナの感染者の「全数把握」の見直しが検討される中、神奈川県の黒岩知事は、加藤厚生労働大臣とオンラインで会談し、感染者全員の症状などの確認をやめ、人数だけを把握する方法に変更したいと国に伝えたことを明らかにしました。

神奈川県の黒岩知事は8月22日午前、加藤厚生労働大臣とオンラインで会談したあと、記者団の取材に応じました。

それによりますと、黒岩知事は、神奈川県としては、全数把握の見直しに先駆けて、感染者全員に対する症状などの確認をやめて人数だけを把握する方法に変更したいと伝えたということです。

一方、県は8月から、軽症や無症状の人は健康観察の対象外としていますが、高齢者や基礎疾患がある人など、重症化リスクが高い人についても、具合が悪くなった場合は自分から医療機関や相談窓口に連絡してもらう体制に切り替えたいとしています。

黒岩知事は「神奈川県としては、具合が悪くなったら自分で連絡してもらうような形に変えて、一般の医療に近づける出口戦略を進めたい」と話していました。

広島県 “症状”相談件数の集計取りやめ コロナ感染急拡大で

新型コロナウイルスの感染動向を把握するために広島県が集計してきた症状を訴える人からの相談件数のデータについて、県は感染の急拡大で業務がひっ迫し継続が難しくなったとして、集計を取りやめたことが分かりました。
専門家は「重要なデータの一つであり、継続して把握できる仕組みを今後、検討するべきだ」と指摘しています。

広島県は、新型コロナの感染者数や入院患者数などさまざまなデータをホームページで公表していますが、このうち症状がある人から保健所などが相談を受けた件数のデータについて、21日までに掲載を取りやめました。

このデータは、感染状況の兆候を把握するためなどに使われてきましたが、感染の急拡大に伴う保健所などの業務のひっ迫で、集計を継続できなくなったということです。

県は「正しい数字を把握するのは困難で、さかのぼって修正することも難しくなった」としています。

公衆衛生に詳しい国際医療福祉大学の松本哲哉主任教授は「あまりに患者数が増え、正確な把握が困難になったことは理解できる。ただ、相談件数は医療機関が態勢を整える際に活用しているし、自治体などにとっても非常に重要なデータの一つだといえる。多少の誤差はあっても継続して把握できる仕組みを今後検討していくことが大事だ」と指摘しています。

詳細報告の対象 重症化リスク高い人に限定の方向

新型コロナの感染者の全数把握について、政府は今の手法を見直し、医療機関に対し、症状など詳しい報告を求める対象を、高齢者をはじめ重症化リスクの高い人に限定する方向で調整を進めています。

新型コロナの全数把握をめぐっては、感染症法に基づいて医療機関が「HER-SYS」と呼ばれる国のシステムにすべての感染者の情報を入力することになっています。

感染の第7波が続く中で、政府は、現場の負担をできるだけ軽減しようと、専門家の話などを聞いて、見直しの検討を行っています。

そして医療機関に対し、症状やワクチンの接種歴など詳しい報告を求める対象を、高齢者や基礎疾患があるなど重症化リスクの高い人に限定する方向で調整を進めています。

そのほかの感染者についても人数は報告してもらい、国が都道府県別の感染傾向を把握できる仕組みにしたい考えです。

一方、定点となる医療機関を指定して定期的に報告を求める定点把握については、具体的な制度設計に時間が必要なことなどから、第7波が収まったあとで、厚生労働省を中心に改めて検討する方針です。

政府は、最終的な調整を進めたうえで、具体策を発表することにしています。