佐渡金山 世界文化遺産推薦
タスクフォース設置

新潟県などが世界文化遺産への推薦を要望していた「佐渡島の金山」について、政府は、ユネスコに推薦書を提出することになりました。
韓国の反発も踏まえ、国際社会の理解を得るための戦略を練るタスクフォースを設け、登録の実現に向けた準備を本格化させる方針です。

「佐渡島の金山」をめぐって、政府 与党内には、地元の新潟県などの要望どおり、ユネスコへの推薦を求める声の一方、韓国が、朝鮮半島出身の労働者が強制的に働かされた場所だと反発していることも踏まえて慎重に対応すべきだという意見もあり、調整が続いていました。

こうした中、岸田総理大臣は28日、「佐渡島の金山」をユネスコに推薦することを表明しました。

政府は、来月1日の閣議での了解を経て、ユネスコに推薦書を提出することにしています。

世界文化遺産の推薦書の提出に際しては、関係国との対話を促す指針があることから、政府は、韓国を含めた関係各国に対し、日本の立場を丁寧に説明し、理解を求めていくことにしています。

そして、国際社会の理解を得るための戦略を練るタスクフォースを政府内に設け、遺産登録の実現に向けた準備を本格化させる方針です。

岸田首相「早期に議論開始が登録実現への近道」

岸田総理大臣は28日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「『佐渡島の金山』については、これまでユネスコ世界遺産の登録を実現するために、最も効果的な対応を図るという観点から総合的な検討を行ってきた」と述べました。

そして「江戸時代にわが国固有の伝統的手工業を活用し、大規模かつ長期にわたって継続したけうな産業遺産として高い評価を有している。他方、その高い価値にもかかわらず、登録に向けては、さまざまな議論や意見がある。文化遺産としてのすばらしい価値が評価していただけるよう冷静かつ丁寧な議論が求められる」と指摘しました。

そのうえで「いつ申請することが登録に向けて最も効果的なのかについて検討を重ね、ことし申請を行い早期に議論を開始することが登録実現への近道であるという結論に至った」と述べ、来月1日の閣議了解を経て、ユネスコに推薦することを正式に表明しました。

さらに滝崎官房副長官補をトップに、関係省庁でつくるタスクフォースを設置し、民間の専門家からも意見を聴きながら登録の実現に向けて取り組む考えを強調しました。

また記者団から「自民党議員の意見を聞いて方針転換をしたのか」と問われたのに対し「全くあたらない。登録されるためには何が効果的なのか、ことし申請を出す案と来年以降に出す案を、そ上に乗せてずっと議論してきた。今回、申請を行うことをきょう決定し、変わったとか、転換したという指摘はあたらない」と述べました。

さらに韓国が、朝鮮半島出身の労働者が強制的に働かされた場所だと反発していることへの対応については「これは文化遺産の評価の問題だ。しっかりと登録への歩みを進めていきたい」と述べました。

安倍元首相「冷静に正しい判断」

自民党の安倍元総理大臣は「岸田総理大臣の判断を支持する。冷静に正しい判断をされたと思う。登録に向けて、国、県、市、民間、総力をあげて取り組んでいかなければならない。今後とも、出来るかぎり協力していく」とするコメントを出しました。

自民 高市政調会長「判断に心から敬意」

自民党の高市政務調査会長は「岸田総理大臣の判断に心から敬意を表する。今後は、世界遺産委員会における決定までの間を活用して、委員国からの理解と支持を得るべく、政府を挙げた取り組みを行い、世界遺産への登録を成し遂げてくれることを期待している」とするコメントを出しました。

林外相「日本の立場を冷静かつ丁寧に説明」

林外務大臣は、28日夜、記者団に対し「『佐渡島の金山』は、江戸時代に、わが国固有の伝統的手工業を活用し、大規模かつ長期に継続した、けうな産業遺産として高い価値を有している。外務省としても登録実現に向けてしっかり取り組んでいきたい」と述べました。

また、韓国外務省が28日に強い遺憾の意を示したことについて「韓国側の独自の主張は日本側として受け入れられないと申し入れを行った」と述べました。

一方、世界文化遺産への推薦に際して、関係国との対話を促す指針があることについて「指針に沿って、韓国と誠実に対話し、冷静かつ丁寧な議論を行っていく。世界遺産委員会のメンバー国にも、わが国の立場を冷静かつ丁寧に説明していきたい」と述べました。

末松文部科学相「価値が評価してもらえるよう全力」

末松文部科学大臣は、28日夜、記者団に対し「世界文化遺産への登録実現のために『佐渡島の金山』の文化遺産として高い価値が評価していただけるよう、関係自治体や関係省庁と連携しながら全力で取り組んでいきたい。きちんと議論や対話を積み重ねるよう、総理からも指示を頂戴している」と述べました。

佐渡市役所には推薦決定を祝う懸垂幕

岸田総理大臣の表明を受け、28日夜、佐渡市役所の庁舎には推薦の決定を祝う懸垂幕がおろされました。

佐渡市の渡辺市長や「佐渡を世界遺産にする会」の中野洸会長など関係者が並んで記念撮影を行い、世界文化遺産への登録に向け喜びを分かち合っていました。

新潟県佐渡市の渡辺市長は記者会見を開き、冒頭「多くの人の力添えを得て、これから世界遺産登録に向けてスタートを切れる一歩を踏み出せた。身が引き締まる思いだ。感謝を申し上げるしかない」と述べました。

そのうえで「文化審議会で認めてもらった文化の価値をしっかりと証明して、世界への発信を全力でやらなければならない。これからが勝負だ」と述べ、市として世界遺産登録に向けて国や県などと連携し、取り組んでいきたいと決意を表明しました。

市民団体「四半世紀活動 やっとこぎつけた」

世界遺産への登録を目指して活動する市民団体「佐渡を世界遺産にする会」の中野洸会長は「四半世紀活動してきて、やっとここまでこぎつけました。こんなにうれしいことはありません。推薦が見送られるという話もありましたが、知事はじめ市長など大勢の方に熱心に活動していただきました。みんなの力でここまできたと思っています」と話していました。

また、推薦されたあとについては「ユネスコの諮問機関である『イコモス』の現地視察について、私は自信を持っています。政治的な部分で若干不安がありますが、誠意をもって事実を説明すれば、支持が得られると思います」と期待を語りました。

韓国 遺憾の意を表明

世界文化遺産への登録を目指して日本政府が「佐渡島の金山」をユネスコに推薦することを正式に表明したことを受けて、韓国外務省は、28日夜、報道官の声明を発表しました。

この中では、朝鮮半島出身の労働者が強制的に働かされていた場所だとして世界文化遺産への登録に反発していて「深い遺憾の意を表明し、こうした試みを中断するよう厳重に求める」としています。

また、ソウルに駐在する相星大使を呼んで、抗議しました。

さらに、韓国外務省の関係者は、関係省庁や専門家などでつくるタスクフォースを発足させ、関連する資料の収集を行ったり、対外的な交渉や広報活動を展開したりしていくと説明しています。