岸田首相 10万円相当給付
「不公平を是正したい」

国会では24日から衆議院予算委員会で、新年度予算案の実質的な審議が始まりました。18歳以下への10万円相当の給付をめぐり、離婚などで給付を受けられないひとり親世帯が出ていることについて、岸田総理大臣は「不公平を是正したい」として制度の見直しを検討する考えを示しました。

衆議院予算委員会では午前中、自民党が質問を行いました。

高市政務調査会長は、新潟県などが世界文化遺産への登録を目指している「佐渡島の金山」をめぐって韓国が、朝鮮半島出身の労働者が強制的に働かされた場所だと反発していることに関連して質問しました。

高市氏は「新潟県知事は結果にかかわらず国際舞台で日本の主張を堂々と行ってほしいと言っている。江戸時代の金山について韓国が当事者でありえないことは明確だ。今年度推薦しなければ来年度以降はさらに困難になる」と述べ、来月1日の期限までにユネスコに推薦するよう求めました。

林外務大臣は「まだ本年度の推薦をしないと決めたということはない。登録を実現する上で、何が最も効果的かという観点で総合的な検討を行っている。韓国への外交的配慮を行うことは全くない。韓国側の独自の主張は、全く受け入れられず、強く申し入れを行った」と述べました。

また岸田総理大臣は、韓国側の主張も念頭に「国際社会で客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成され、わが国の基本的立場やこれまでの取り組みに対して正当な評価を受けることを強く求め、いわれなき中傷にはきぜんと対応していく」と述べました。

上川幹事長代理は、18歳以下への10万円相当の給付について「9月以降に離婚して子どもを養育している人の中には、給付金が元の養育者に振り込まれているため、受け取れない人がいる。こうした人たちの手元にも届くよう制度を見直すべきだ」と質問しました。

岸田総理大臣は「給付金が子どもたちに使われるよう、元養育者である受給者に協力をお願いするなど対応してきたが、現実にはさまざまな事情で元養育者から受け取れないという声も聞いている。不公平を是正し、こうした人たちの手元にも給付金が届くよう国として見直しを検討したい」と述べました。

宮崎政久氏はアメリカ軍普天間基地の移設計画への対応などが争点となった沖縄県名護市の市長選挙で、自民 公明両党推薦の現職が、移設計画の中止を訴えた新人を抑え、当選したことについて「沖縄振興にも関わるので、岸田総理大臣の受け止めを聞かせてほしい」と質問しました。

岸田総理大臣は「渡具知名護市長は地域経済の振興や住民福祉の向上を訴えた。政府としては北部地域の振興を沖縄振興における重要な課題と位置づけて、引き続き名護市長とも連携しながら名護市そして北部地域の振興に取り組んでいきたい」と述べました。

国会では、午後も衆議院予算委員会で質疑が行われました。

立憲民主党の泉代表は、新型コロナ対策で病床の確保などを強化するための感染症法の改正案について、政府が今の国会への提出を見送るとしている方針をただしました。
これに対し、岸田総理大臣は、今の法律が、オミクロン株への対応に十分に機能するかを確認したうえで法改正を検討する考えを示し、理解を求めました。

午後の質疑では、公明党と立憲民主党が質問を行いました。

公明 竹内政調会長 オミクロン株・北朝鮮ミサイル発射について

公明党の竹内政務調査会長は、オミクロン株への対応をめぐり「感染者が増えた分だけ保健所業務には負荷がかかり、自宅療養者に対して、適切に健康観察や医療の提供を行えるかが大きな課題だ。自宅療養者への支援体制の強化に向けて、財政支援も含めて迅速かつ強力に取り組むべきだ」と求めました。

岸田総理大臣は「ITも活用しながら保健所に頼らず、地域の医療機関で健康観察などを実施できる体制の構築、パルスオキシメーターを自宅療養が開始された当日あるいは翌日に配布する体制の構築など先手先手で取り組んできた。高い警戒感を持って対応を続けていきたい」と述べました。

また竹内氏は、相次ぐ北朝鮮による弾道ミサイルの発射について「どのようなねらいがあるのか、現状の分析を聞きたい。北朝鮮は中国との間でおよそ1年半ぶりとなる陸路貿易を再開したが、こうした動きに関連しているのか」と質問しました。

岸田総理大臣は「奇襲的な攻撃能力の向上など、急速かつ着実に関連技術の運用能力の向上を図ってきていることは明らかではないか。新型コロナの影響や経済制裁で厳しい経済状況に直面していることは十分考えられる。中朝間の動きを含め、引き続き情報収集、分析に努めていきたい」と述べました。

立民 泉代表 政府が感染症法改正案の提出見送る方針について

立憲民主党の泉代表は、政府が今の国会に、新型コロナ対策で病床の確保などを強化するための感染症法改正案の提出を見送るとしている方針について、「今の法律でやってみて、それでもできないときに考えたら遅いのではないか。オミクロン株対応が大変で今はできないのであれば、与野党の国会議員でやらせてもらえないか」とただしました。

岸田総理大臣は「オミクロン株への対応の中で、今の法律でやったことが十分機能するかどうか、法律上何が足りないのかをしっかり確認したうえで、法改正を考えていく。与野党間の協議などは国会においての対応なので、与野党で話してもらいたい」と述べ、理解を求めました。

立民 大串氏 尾身会長の発言について

立憲民主党の大串博志氏は、政府の分科会の尾身会長が「これまでの『人流抑制』ではなく『人数制限』というのがキーワードになる」と発言したことをめぐり、「専門家のメッセージと政府がやろうとすることが国民にうまく伝わっていない可能性がある。若干のちぐはぐ感を覚える人もいるが、どう考えるか」と問いました。

尾身氏は「マスクを外した状態での感染が非常に多く、一人一人が不織布マスクのしっかりした着用など、基本的な対策の徹底が求められている。状況が悪化すればさらに強い対策が必要になる。全国知事会とは、共通の認識に立っている」と述べました。

また、「大人数のパーティーのようなことが再現されると、また感染が拡大する可能性が強いが、国民みんなの努力で、ある程度抑えることができれば拡大のスピードの鈍化も可能だ」と述べました。

岸田総理大臣は、濃厚接触者の待機期間について「オミクロン株の科学的知見はこれからもどんどん集まってくる。これをしっかりと踏まえたうえでより現実的な期間を絶えず考えていく、検討していく姿勢は大事にしていきたい」と述べました。

自民 宮沢氏 ミサイル防衛の在り方について

自民党の宮沢博行氏は午前の質疑で、ミサイル防衛の在り方について「いわゆる『敵基地攻撃能力』の議論が始まった。国民の生命、財産、自由、そして領土、領海、領空を断固として守っていかなければならない」と述べ、政府の基本的な考えを問いました。

岸田総理大臣は「極超音速滑空兵器や変則軌道で飛しょうするミサイルなど、急速なスピードで技術が進化しており迎撃が困難になってきている。迎撃能力を高める不断の努力は重要であり、しっかり高めていかなければならない。いわゆる『敵基地攻撃能力』を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を進めていきたい」と述べました。
一方、岸田総理大臣は、新年度・令和4年度予算案の総務省が所管する関係資料に13のミスがあったことについて「大変遺憾なことで、心からおわびを申し上げる」と陳謝し、再発の防止を徹底する考えを示しました。

また、24日の質疑では、国土交通省が国の統計の中でも特に重要な「基幹統計」のデータを書き換えていた問題で、政府が去年12月の臨時国会で「令和2年1月から数字の改善を行った」と答弁したことも取り上げられました。

この答弁について、斉藤国土交通大臣は、一部の都道府県でデータの書き換えが続いていた可能性があったなどとして、「事実を正確に反映した表現とは言い難い部分があった」と釈明しました。

岸田総理大臣は「問題発覚後に、国土交通省内部で不適切な事後対応の問題があったことが明らかになった。極めて遺憾だ」と述べました。

衆議院予算委員会は25日も開かれ、立憲民主党など野党が質問を行います