参院定数増改正案成立
参院定数増は昭和45年以来

参議院選挙の1票の格差を是正するため、定数を6増やすなどとした、自民党の改正公職選挙法は、午後の衆議院本会議で、自民・公明両党の賛成多数で可決・成立しました。参議院の定数が増えるのは昭和45年の法改正以来で、来年夏の参議院選挙から適用されます。

参議院選挙の1票の格差を是正するため、定数を6増やすなどとした、自民党の公職選挙法改正案は17日、衆議院の特別委員会で可決されたのを受けて、18日午後の衆議院本会議に上程されました。

採決に先立って各党の討論が行われ、自民党は「1票の格差の縮減と人口減少に直面する地域をはじめとする多様な民意の国政への反映を両立させる現在考え得る最良の案だ」と述べ、理解を求めました。

これに対し、立憲民主党は「民主主義の根幹である選挙制度まで、与党の数の力で押し切ることは議会制民主主義の破壊だ」と述べ、反対しました。

このあと、採決が行われた結果、自民・公明両党の賛成多数で、可決・成立しました。

成立した改正公職選挙法は、参議院選挙の1票の格差を是正するため、定数を6増やすとともに、比例代表に、あらかじめ政党が決めた順位にしたがって当選者を決められる「特定枠」を導入するなどとしています。

これによって参議院の定数は、来年夏の参議院選挙と、4年後の選挙で3ずつ増えて、最終的には、選挙区が148、比例代表が100の248になります。

参議院の創設当時の定数は250でしたが、昭和45年に沖縄県の本土復帰に向けて、沖縄選挙区を設け、2増やす法改正が行われたあと、平成12年には、10減らす法改正が行われ、現在の242となっていました。

定数増は埼玉選挙区と比例代表

成立した自民党の改正公職選挙法は、参議院選挙の1票の格差を是正するため、議員1人当たりの有権者が最も多い埼玉選挙区の定数を2増やすとしています。

埼玉選挙区は来年の参議院選挙で、改選される議席が現在の「3」から「4」に増えます。

法律を提出した自民党は、これによって前回2年前の選挙で、最大で3.08倍あった1票の格差は、最大で2.985倍に縮小するとしています。

また、比例代表の定数を4増やしたうえで、あらかじめ政党が決めた順位に従って当選者が決まる「特定枠」を設けることができるようになります。

「特定枠」を使うかどうか、また、使う場合、何人、適用するかについては、各党が自由に決められます。

自民党はこの「特定枠」を活用して、「合区」された鳥取と島根、徳島と高知の4県のうち、選挙区に候補者を擁立できない県からも、確実に議員を出せるようにしたい考えです。

これによって参議院の定数は、来年の参議院選挙と、4年後の選挙で3ずつ、合わせて6増えて、最終的には、選挙区が148、比例代表が100の248になります。

参議院で議席を増やす改正が行われるのは、沖縄が本土復帰に向け選挙区を新設するため定数を2増やした48年前の昭和45年の改正以来です。

なぜ定数増?

自民党は憲法を改正し、「合区」の解消を目指していることから、1票の格差を是正するためにこれ以上「合区」を増やすことはできないとして、選挙区の定数を増やすことにしました。

また、比例代表の定数増については選挙区の定数とのバランスと、「特定枠」の導入による影響を緩和するためと説明していました。

自民党は「特定枠」に合区された4県のうち、選挙区に候補者を擁立できない2県から候補者を立てる方針で、この2人分の定数を増やすことで、比例代表選出の議員への影響を抑え、理解を得たいという狙いがあるものとみられます。

全体で定数が6増えることについて、自民党は参議院は衆議院と量的にも同様の審議を行っているだけでなく、独自に行政監視の機能強化にも取り組んでいて、その役割を果たしていくことによって、国民の理解は得られるなどと主張してきました。

これに対し野党側は、定数を増やし「特定枠」を設けるのは自民党の党利党略だとして一斉に批判してきました。

改正を急いだ背景は

参議院では、おととしの前回の参議院選挙を前に1票の格差を是正するため、「合区」を初めて導入するなどして選挙区の定数を「10増10減」する法改正を行いました。

そして法律の付則には「平成31年の参議院選挙に向けて、選挙制度の抜本的な見直しを検討し、必ず結論を得る」と明記していました。

こうしたことなども踏まえ、前回選挙で最大で3.08倍あった1票の格差について、最高裁判所は憲法に違反しないという判決を出しました。

ただ参議院では、来年の選挙までに格差是正の措置を講じなければ、最高裁が次回選挙の1票の格差を「憲法違反」と判断するおそれがあるとして、去年5月から各党で議論を重ねてきました。

しかし各党の主張の隔たりは大きく、意見集約できない状況が続いていました。

自民党は、制度の変更を周知する期間も考慮すれば、選挙までおよそ1年となる今の国会で法改正を実現する必要があるとして、独自に改正案を提出して審議を急ぐよう主張していました。