神科病院内の虐待
病院半数が自治体に通報せず

神戸市の精神科病院で起きた、看護師らによる虐待事件を受け、厚生労働省が行った全国調査で、虐待が起きた病院が自治体に通報したケースは、全体の半分以下にとどまっていることがわかりました。専門家は虐待の実態が見えない原因になっているとして、通報の義務化などが必要だと指摘しています。

神戸市の精神科病院で、おととしから去年にかけ看護師らが入院患者を虐待した事件を受けて、厚生労働省はことし4月、監督権限をもつ都道府県と政令指定都市を対象に初めての調査を行いました。

それによりますと、昨年度までの5年間に自治体が把握した、精神科病院内での虐待の疑いがある事案は、合わせて89件で、このうち「暴行」が全体の6割以上にあたる57件、「暴言」が14件、「わいせつ行為」が7件などとなっています。

虐待を把握したきっかけを聞いたところ、「医療サイドからの通報」は、全体の49%と半分以下にとどまり、そのほかは患者や家族、それに匿名の人からの通報などで発覚していました。

「障害者虐待防止法」は、福祉施設や会社などには自治体への通報を義務づけていますが、病院や学校、保育施設には通報義務がありません。

精神医療の問題に詳しい、杏林大学の長谷川利夫教授は、「虐待事案がなかなか外に出にくい背景となっており、今回の調査も氷山の一角だ。これを機に法改正し、病院にも通報義務を与えることが重要だ」と指摘しています。