ット上のひぼう中傷対策
裁判手続きなど中間報告案に

ネット上でひぼうや中傷を受けた人が、匿名で投稿した人物の情報開示を請求できる仕組みについて、総務省の有識者会議は、より短い時間で情報開示が進む、新しい裁判手続きを検討することなどを中間報告の案に盛り込みました。

総務省の有識者会議は、ネット上でひぼうや中傷を受けた人が、匿名で投稿した人物の情報開示をSNS事業者などに請求できる「プロバイダ責任制限法」の仕組みの見直しを進めています。

10日の会議では中間報告の案を議論し、今の仕組みではSNS事業者などを相手取って複数の裁判を起こすことが多く、手続きに1年程度かかる場合もあることから、より短い時間で情報開示が進む、新しい裁判手続きの検討を盛り込みました。

被害者からの申し立てを基に裁判所が情報開示が適当かどうか判断することを想定していて、法改正も含めた検討を進めるとしています。

また、投稿者が特定しやすくなるよう、現在、開示対象になっている、ネット上の住所にあたるIPアドレスなどに加えて、電話番号を開示することも盛り込みました。

ことし5月、民放の番組に出演していたプロレスラーの女性が、SNSでのひぼうや中傷が相次ぐ中で亡くなったことをきっかけに、仕組みの見直しを求める声が強まりました。

会議では新しい手続きで、表現の自由や通信の秘密が損なわれないようにするべきだという意見が相次いだことから、今後、慎重に検討を続け、ことし11月に最終報告をまとめる方針です。

IT事業者も専用相談窓口開設

ネット上でのひぼうや中傷が社会的な問題になる中、IT事業者も対策を強化しています。

ヤフーなどのIT企業でつくる「セーファーインターネット協会」は、先月、SNSでのひぼうや中傷に悩む人から相談を受け付ける専用の窓口を開設しました。

相談は協会のウェブサイトで受け付けていて、これまでにおよそ200件の相談が寄せられているということです。

容姿や人格を否定する投稿や、「死ね」などの書き込みを削除してほしいといったものがあるということです。

団体は、投稿の内容について、被害者個人が特定されているかや、社会的な評価が低下させられているかなど、ガイドラインに沿って削除の必要性を判断したうえで、被害者に代わってSNSなどの事業者に削除要請を行っています。

「セーファーインターネット協会」の吉田奨専務理事は「ひぼう・中傷の投稿は事業者が禁止しているほか、AIなどを使って削除している。しかし、被害にあった人からは削除を要請する窓口が分かりづらいといった課題もあるため、団体でバックアップしていきたい」と話していました。

専門家「表現の自由と両立を」

今回の中間報告の案について、SNS上でのひぼうや中傷の問題に詳しく、有識者会議のメンバーでもある清水陽平弁護士は「被害を受けた人は誰が中傷したか分からない中で、疑心暗鬼になって、外出することも怖いという精神状態になる人も多いが、情報が開示されるまでに1年かかるのは負担が大きい。その期間が短くなるのであれば被害者の名誉回復という点で一歩前進だと思う」と指摘します。

一方で、現時点では新しい手続きの具体的な内容が決まっていないことから、清水弁護士は「逆に問題のない投稿をしている人が萎縮することが起きないよう、表現の自由を制限しないためのバランスを取ることが必要だ」と述べて、慎重な検討が必要だと指摘しました。