相次ぐトラブル マイナンバーカードめぐり衆議院で閉会中審査

トラブルが相次ぐマイナンバーカード。

こうした事態を受けて5日、衆議院で閉会中審査が行われ、河野デジタル大臣は国民の信頼確保のためスピード感を持って総点検を進める考えを示しました。

健康保険証との一体化など審議のポイントや、これまでのトラブルについて詳しくお伝えします。

【一連のトラブル受け 各党が質疑】

衆議院では5日、マイナンバーカードの一連のトラブルを受けてデジタル政策などを審議する特別委員会で各党の質疑が行われました。

総点検について

自民党の井原巧氏は、政府がことし秋までをめどに行うとしている総点検について「エラーを点検して改善を図り、その過程を国民に『見える化』することが非常に有用だ。どのような情報を対象に点検に取り組むのか」と質問しました。

河野デジタル大臣は「まずは7月中に各制度の現場でマイナンバーのひも付け作業の実態を把握するための調査を行い、8月上旬に中間報告ができるよう進めていく。マイナンバーに対する国民の信頼をしっかりと確保するため、スピード感を持って政府をあげて総点検を進めていきたい」と述べました。

家族名義と見られる口座について

また、河野大臣は、マイナンバーの公金受取口座に子どもの親など家族名義とみられる口座が登録されていたケースがおよそ13万件確認されたことをめぐり、本人名義の必要があるという説明が不足していたと指摘されたのに対し、「大変申し訳ない。明らかに想像力の欠如と説明不足だったと思う」と述べ、陳謝しました。

名称変更について

一方、河野大臣は、個人的な見解として将来的にマイナンバーカードの名称を変更することが望ましいとした自身の発言をめぐり、閣内不一致ではないかと問われたのに対し、「現時点でそうしたことは考えていないということで何ら不一致ではない」と述べました。

自治体への支援について

松本総務大臣は、総点検に伴う人件費などについて自治体への支援を検討しているか問われたのに対し、「点検作業などにかかる自治体の事務負担がどの程度になるかをよく見極めた上で必要に応じて国としての支援策も検討することになる」と述べました。

健康保険証との一体化について

立憲民主党の長妻政務調査会長は、来年秋に今の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化させる政府の方針について「来年秋の廃止ありきでお尻が決まっているから、プレッシャーがかかって確認がおろそかになっているのではないか。原因の一端に来年の秋ありきの方針があるという自覚はあるか」とただしました。

加藤厚生労働大臣は「さまざまな不安を国民に抱かせる事案が発生していることは真摯に受け止め、反省しなくてはならないが、メリットのある医療を国民に享受していただくのは私たちの責務だ。そのために信頼の基盤を作るとともにメリットを周知し、しっかり努力をしていかなくてはならない」と述べました。

また、加藤大臣は、マイナンバーカードと一体化した保険証を取得していない人が、保険証の廃止後も必要な保険診療を受けられるよう発行する「資格確認書」について「プッシュ型も含めて漏れのない形で、医療保険を活用してもらえる制度をしっかり構築していきたい」と述べ、本人からの申請を待たずに交付することも検討していく考えを示しました。

【これまでのトラブル】

マイナンバーをめぐるトラブルが最初に明らかになったのは、ことし3月です。

横浜市内のコンビニエンスストアで、マイナンバーカードを使う証明書交付サービスを利用した際に、他人の住民票の写しが発行された事例が5件発生しました。

その後も、同様のケースが相次いだため、河野デジタル大臣はシステムの一時停止を運営会社に要請しました。

運営会社は先月17日に点検が終了したとしていましたが、28日に再び他人の証明書が発行されるトラブルが発生していたことが分かり、再度システムを止めて点検しています。

また、マイナンバーカードと一体化された健康保険証をめぐって、他人の情報が登録されていたケースが7372件確認されています。(7月4日時点)

厚生労働省が調査したところ、全国3411の健康保険の組合のうち、情報を手順どおりに確認していなかったなど再点検が必要な組合がおよそ4割に上っていたことも分かりました。

このほかにも、公金受取口座に他人の口座が登録されていたケースが940件あり、本人ではない家族名義とみられる口座が登録されていたケースがおよそ13万件確認されています。(7月4日時点)

また、地方公務員の年金などを運営する「地方職員共済組合」に加入している人が、専用サイト「マイナポータル」で年金情報を閲覧されたトラブルが1件確認されています。(7月4日時点)

さらに、マイナンバーカードの取得などでポイントがつく「マイナポイント」を申請する際、他人のクレジットカードなどにひも付けられてしまい、他人にポイントが付与されるか、付与される可能性があったケースが172件、
静岡県で他人の障害者手帳の情報がマイナンバーに登録されていたケースが、少なくとも62件確認されています。(7月4日時点)

このほか各地の自治体で誤って他人のカードが交付されたり、他人の顔写真が添付されたりするトラブルも報告されています。

日本医師会「今の保険証の猶予期間の延長含め検討を」

マイナンバーカードの相次ぐトラブルを受けて、日本医師会は5日、記者会見で見解を発表しました。

長島公之 常任理事は「患者にも医療現場にも不安と混乱が生じており、これらの払拭はまさに喫緊の課題だ」と述べました。

その上で「今の保険証が廃止された後も『資格確認書』が必要とされる全員に確実かつ迅速に交付される必要がある」と述べ、来年秋までに一体化した保険証を取得していない人も含め、必要な保険医療を受けられる環境整備を確実に行うよう政府に求めました。

そして、環境整備が間に合わない場合には今の保険証が使える再来年秋までの最長1年間の猶予期間の延長を含めた対応を検討するよう求めました。