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能登半島地震 新潟 津波からの車避難

  • 2024年03月04日

能登半島地震では県内の沿岸部に津波が押し寄せ、各地で津波から避難しようと高台などを目指す車で渋滞が発生しました。津波避難の際には、原則、徒歩となっていますが、今回の地震では地域の事情によって車での避難を選択した人たちもいます。今後の大地震に備えた津波避難のあり方が問われています。(新潟局 記者 阪本周悠・鈴椋子)

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車の避難 想定の地区でも渋滞

新潟市北区の松浜地区です。海や川に囲まれていて、津波が最短30分未満で到達するとされるエリアもあります。

この地区の自治振興会の会長を務める神田征男さんです。
坂道が多いため、この地区では車での避難を検討する人もいると言います。

松浜自治振興会 神田征男 会長
松浜地区は起伏ある地域。車で逃げた方が早いだろうと考える方が多いです。

3年ほど前には車での避難訓練を実施。地区の中心部から車で10分ほどの広い駐車場のある大学へ行くことにしていました。

しかし、地震当日は多くの車が大学ではなく、近くの高台へ向かい渋滞が発生しました。
どのようにすれば車を使って円滑な避難ができるのか。神田さんは頭を悩ませています。

松浜自治振興会 神田征男 会長
逃げる人によって、「俺はこれで逃げるわ」、「俺はここまで車」、例えばお隣さんが車で逃げたから車で逃げようとかいう形になったり。近いところに逃げようとするわけですから、それからいくと、渋滞が起きるのは当たり前じゃないかなと思います。悩みの種ですね。

ひとつの高台に住民が集中 糸魚川市

渋滞は糸魚川市の中心部でも発生しました。

市内で民泊施設を営んでいる町澤敬子さん。
当時、揺れが大きかったことから津波がすぐに来ると考え、避難をはじめました。

糸魚川市内で民泊施設営む 町澤敬子さん
お客さんがここに立たれて受付をしているときにグラグラと揺れました。揺れが大きかったですし、この宿は海がすぐそこなので、もし津波が来たら絶対安全ではないと思いました。

宿泊客に高台へ避難するよう案内したあと、自身も避難を始めたという町澤さん。

民泊施設は海から150メートルほどの場所にあり、直線距離で2キロあまり離れた高台の「美山公園」を目指しました。ふだんは車で10分とかからない距離です。

しかし町澤さんは家を出てすぐに渋滞に巻き込まれたと言います。

糸魚川市内で民泊施設営む 町澤敬子さん
山のところまで行きたいのが道に車が殺到していてのろのろとしていた。1m進み、またしばらくしたらまた1,2m少し進みといった状態でした。

この日は1時間以上かけてもたどり着くことができませんでした。
市の中心部には複数の避難場所がありますが、町澤さんによりますと、多くの人が避難するために
「美山公園」に集中したということです。

糸魚川市内で民泊施設営む 町澤敬子さん
当時は「美山公園」しか避難場所として頭になかったです。本当は避難出来るところがあったんですけど、私も含め、そこまでみなさん認識していなかったと思う。ほかの発想を柔軟にもうちょっと考えないといけないと思いました。

ハザードマップ 十分活用されず

高台へ避難する車による渋滞が起きた今回の地震。糸魚川市ではハザードマップを作成し、歩いて行くことができる高い場所や避難経路を示していましたが、今回の地震では十分に活用されなかったとしています。

糸魚川市消防本部 竹田健一 消防長
当時は、「より高い所へ」というより、車を使って「より遠くへ」という心理が働いたのではないかなと思います。車での避難の場合には今回のような大渋滞、あるいは駐車スペースがないといったような課題が出たと捉えています

市では徒歩による避難を原則としたハザードマップの周知に改めて取り組んでいくことにしています。

糸魚川市消防本部 竹田健一 消防長
今後、地区の防災のリーダーを集めて研修というのを実施させていただくのですが、まずはそこで、津波からの避難に対する市の考えというのをお伝え出来ればなと

専門家「地区ごとに避難方法検討を」

津波からの避難に詳しい専門家は、高齢者や体の不自由な人などにとっては車による避難も必要になると話しています。

早稲田大学 柴山知也 教授
なるべく早く高いところに、徒歩で逃げていただくというのが原則なんですが、それでは逃げ切れない方っていうのはやっぱり出てきてしまうんですね。そういう方に対しては、自動車を使って有効な避難の手段を提供していくことも必要です。

そのうえで、地区ごとに、車を使う世帯や避難時の車の経路などについて考えておくことが必要だと話しています。

早稲田大学 柴山知也 教授
自動車が使ってもいい道、自動車が使ってはいけない道だとか、あらかじめ地域ごとに、逃げる道をどういう順番で誰が行くのかということを指定しておくということが有効だということはわかっています。全国的に自分の地域はどうするかというのを早急に考えてほしいと思います。

専門家は、地区ごとに土地の高さといった地形の特徴や、避難できる建物の数などが違うことから、津波避難にあたっては徒歩が原則であるものの、車を使うことも含めて個別に避難方法を考える必要があると話していました。

日本海側で起きる津波は、震源から沿岸までの距離が近いため、地震の発生したあと津波が到達するまでに避難出来る時間が限られることも指摘されています。今回の地震を踏まえ、避難のあり方をどのようにするべきか、問われています。

  •  阪本周悠

    新潟放送局 記者

     阪本周悠

    2021年入局。
    主に上越地域を担当。農業や伝統文化などを取材。 

  • 鈴椋子

    新潟放送局 記者

    鈴椋子

    2020年入局。大阪局での勤務を経て、ことしから新潟局。県警キャップとして事件・事故、司法などを取材。

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