ページの本文へ

にいがたWEBリポート

  1. NHK新潟
  2. にいがたWEBリポート
  3. ウクライナ侵攻2年 避難続ける夫婦の思い

ウクライナ侵攻2年 避難続ける夫婦の思い

ふるさとの家族を思いながら
  • 2024年03月08日

 

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の開始から2年となりました。戦闘が終わる見通しは立たず、欧米からの支援の先行きも不透明になっています。こうしたなか新潟県小千谷市で2年目となる避難生活を続けているのがイリナ・シェフチェンコさんとムタル・サリフさん夫妻です。2人はいま、どのような思いで暮らしているのか取材しました。(新潟放送局 記者 野尻陽菜)

長期化する避難生活 ふるさとを思いながら

ウクライナ出身のイリナ・シェフチェンコさんと、夫でガーナ出身のムタル・サリフさんです。
軍事侵攻を逃れ、2022年5月、新潟県小千谷市に避難してきました。

地元の人たちの支援を受けながら地域の祭りにも参加。
いまも熱心に日本語を勉強しています。

シェフチェンコさん
(難しいのは)普通だったら「行く」だけど、丁寧語だったら「行きます」になったり。

小千谷での生活もまもなく2年。
人々の温かさに支えられ、ここまで来ることができたといいます。

シェフチェンコさん
もともと生活していたのとまったく違う場所で、こんなによくしてもらえるとは想像していませんでした。人々はみな協力的ですし、私たちが快適に暮らせるよう助けてくれています。

両親をウクライナに残している、シェフチェンコさん。
戦闘が終わる兆しが見えないなか気の休まらない日々を送っています。

シェフチェンコさんの両親と

シェフチェンコさん
いまでも攻撃があったと聞くと怖いし、家族にすぐに連絡を取って無事かどうか確かめています。2年間ずっと心配しているし、常に無事を願っています。

新たな一歩 慣れない仕事も懸命に

2023年5月、サリフさんには大きな変化がありました。
家族を支えるためにも小千谷市にある精密機械をつくる会社に就職したのです。

ムタル・サリフさん

サリフさん
工程は多いけど、ふだんはタブレットで確認しながらやっているので。

ウクライナでは研修医としてキャリアを積んでいたサリフさん。

研修医として働くサリフさん

慣れない仕事ですが、会社の期待に応えようと、日本語の専門用語を覚えたり細かい手作業を身につけたりして打ち込んでいます。

会社の同僚とサリフさん

同僚の男性
がんばっていると思いますよ、いつも笑顔で。

軍事侵攻によって夢を諦めざるを得なかったサリフさんですが、いつか再び医療の現場に立つ日を思い描いています。

サリフさん
医学の学位を取るのは本当に大変だったので、この状況は苦しいです。でもいま新しい仕事を得て、うまくできるようがんばろうという希望もあります。日本語を学ぶこともできていて、いつか医療の仕事に生かすことができればと思います。

終わりの見えない戦闘 平和への思い新たに

この2年間、ふるさとを思い続けてきたシェフチェンコさん。ウクライナで起きていることを新潟の人たちに知ってもらいたいと、特別授業や講演を積極的に行っています。

授業をするイリナ・シェフチェンコさん

シェフチェンコさん
これはけがをした女の子がリハビリをしているところです。

長期化するウクライナでの戦闘。少しでも母国の役に立ちたいと、シェフチェンコさんは避難直後から小千谷の人たちとともに戦闘で家族を亡くした子どもたちへの支援を続けています。

一方、シェフチェンコさんは、軍事侵攻が終わったとしてもすぐにウクライナに戻れるとは考えていないといいます。

シェフチェンコさん
戦争状態が終わったとしてもロシア政府があのままだったらウクライナは安全ではありません。新しい生活を日本で築いていく決断をしました。もちろん厳しい決断でした。私はウクライナで生まれて家族もそこにいるので。

出口の見えない状況が続くウクライナ情勢。
イスラエルとハマスの戦闘でも多くの命が失われるなか、2人は平和への思いを新たにしています。

サリフさん
国際社会がこうしたことを許容し続ければ平和はないと思う。みんなが朝、普通に起きることができて、仕事をすることができて、家族と一緒にいられて、無事に家に帰ることができる。それが本当に大事なこと。

シェフチェンコさん
世界で新しい戦争が起きているなかでも、人々はウクライナのことを忘れないと信じている。ウクライナだけでなく世界全体が平和になってくれればいいと思う。今回の戦争で人の命がどれだけ大切か、戦争が世の中の大切なものをすべて破壊してしまうということを感じたし、本当に平和であってほしいと強く思っています。

シェフチェンコさんは日本の運転免許を取得し、毎日、サリフさんを送り迎えしています。
また、春からの就職を目指して、日本語の勉強にいっそう力を入れているということです。
 

  • 野尻陽菜

    新潟放送局 記者

    野尻陽菜

    2020年入局。2022年8月より長岡支局。柏崎市の満蒙開拓団の歴史など、戦争や原子力発電所などをテーマに取材。

ページトップに戻る