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木星に小天体衝突? ”発光現象” 新潟 天体観測愛好家が撮影

確認は過去8例のみ 惑星の成り立ち解明に期待も
  • 2023年09月20日

木星の表面が明るく輝くめずらしい発光現象の撮影に、ことし8月、新潟県内の天体観測の愛好家が成功しました。世界で8例しか確認されておらず宇宙の謎に迫る手がかりになる可能性もあるというこの現象。いったいどのようなものなのか取材しました。
(新潟放送局 記者 阿部智己)

放送した動画はこちら

その動画は偶然に?確認してびっくり

撮影に成功したのは新潟市中央区に住む天体観測の愛好家、関根正道さんです。

天体観測の愛好家 関根正道さん
びっくりしました。非常にはっきり分かる明るさだったので。こんなものが撮れてたのかということで、びっくりしました。ベランダのほうで機材をおいて望遠鏡に取り付けたカメラで写した映像をパソコンで記録するというような形で。

関根さんは、木星表面の模様の変化を記録したいと撮影に挑戦してきました。
夜通し撮影することもあったといいます。


こうしたなか8月29日、木星表面が明るく輝く現象が確認されたという情報がSNS上を駆け巡りました。この日は機械に撮影を任せて寝ていたという関根さん。この情報を知って急いで動画が記録されたファイルを確認しました。

すると。
動画には、木星表面で丸い点が2秒ほど明るく輝く様子が記録されていました。

関根正道さん
まったく期待はしてなくてですね。写っていてもせいぜい木星の表面に点が出るぐらいのものだろうと思って見ていったんですけど、再生していったら、ものすごい明るさのものが写っていたので。

専門家が注目 惑星の成り立ち解明に期待

この映像に注目しているのが太陽系天文学が専門の京都大学の有松亘特定助教です。
木星表面の発光現象が確認されるのはめずらしく、過去に国内外で8例しかないといいます。

 

木星表面に、直径でいうと数メートルから数十メートルぐらいの小天体が衝突する瞬間に発光する現象であるというふうに考えられています。発生頻度が非常にまれなので今回のように、きちんと動画として記録された例というのはほとんどないというふうに考えています。

今回、撮影に成功した発光現象。
この現象を分析すると太陽系の惑星の成り立ちを解明することにつながる可能性があるといいます。
 

有松特定助教によると地球を含めた太陽系の惑星は、およそ46億年前、微惑星と呼ばれる小天体が衝突や合体を繰り返して誕生したとされています。しかし、まだ詳しいことは分かっていません。

惑星の元となった微惑星はいまも太陽系の果て、外縁部と呼ばれる場所に当時の状態を一定程度維持したまま大量に残っているとされています。
有松特定助教は今回木星に衝突したのは外縁部から飛来した微惑星の生き残りではないかと考えています。
 

有松特定助教
今回のせん光を詳細に解析すれば、その微惑星の生き残りみたいなものが、氷の塊だけでできているのか、それともある程度、岩石を含んでいるもなのかとか、もしくは鉄みたいな金属を含んでいるのかについて、ある程度推定することができるので地球を含む惑星がどういった天体によって形づくられてきたのかというのを把握することができるというふうに考えています。

この研究を進める上で貴重なデータとなるのが全国のアマチュア天文家が撮影した画像です。

有松特定助教は関根さんを含む全国のアマチュア天文家9人から発光現象をとらえた動画のデータ提供を受け分析。今回はこれまでに確認された中で最も明るく、直径30メートルかそれ以上の大きさの小天体が木星に衝突したと推定しています。衝突のエネルギーも大きかったことがわかってきました。

最先端の天文学では巨大な望遠鏡や探査機による成果が注目されますが、有松特定助教はこうしたアマチュアの天文家の観測も重要だと指摘します。

有松特定助教
基本的にプロフェッショナルの天文学者が使う望遠鏡であったりとか観測装置っていうのは1人の研究者が長時間占有できるようなものではないんですね。極めてまれにしか発生しないような現象の観測というのは、熱心に観測されているアマチュアの方々の方が検出できる可能性が高いということになります。アマチュアのみなさんの力を借りながら新しい研究を進めていきたい。 

これからも肩ひじ張らず

身近な天体観測がとらえた貴重な映像が太陽系の成り立ちの解明という最先端の研究の一助に。
関根さんは、喜びながらも、これからも肩ひじを張らずに天体観測を続けていきたいと考えています。

 

関根正道さん
私たちが偶然に取ったデータを使って、そういうことに役立ててもらえるんであれば非常にうれしいなと思います。過度に期待をしないでいままでどおりやっていければなと思ってます。

そして有松特定助教は、木星の表面が光った瞬間の色や明るさから衝突した天体の大きさや固さを分析し天体を構成する物質の研究などを進めていくということです。

太陽系はどのように生まれたのか。
その答えを求めるように、人々はきょうも夜空を見上げます。

  • 阿部智己

    新潟放送局 記者

    阿部智己

    2008年入局 福井局 札幌局 報道局科学文化部を経て新潟局に赴任。原子力取材などを担当

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