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新潟県 「3つの検証」取りまとめ終え発表

柏崎刈羽原発 再稼働をめぐる議論本格化へ
  • 2023年09月14日

東京電力柏崎刈羽原子力発電所について新潟県は、再稼働をめぐる議論の前提と位置づけている、いわゆる「3つの検証」の取りまとめを終えたと発表しました。今回の取りまとめが柏崎刈羽原発の再稼働を議論する中でどのような意味を持つのか。記者解説を交えてお伝えします。
(NHK新潟放送局 取材班)

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新潟県 11年越しの検証取りまとめ

東京電力柏崎刈羽原子力発電所について、新潟県は9月13日、再稼働をめぐる議論の前提と位置づけている、いわゆる「3つの検証」の取りまとめを終えたと発表しました。

新潟県 花角知事
福島第一原発事故に関する3つの検証の総括ということで、とりまとめる作業を進めてきましたがこのたびまとまりました。

東京電力福島第一原発の事故を受け新潟県は2012年から事故の検証を独自に始め、
2017年からは柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる議論の前提として福島第一原発で事故が起きた際の
健康・生活への影響や、避難に関する検証を加えた、いわゆる「3つの検証」を行ってきました。

この取りまとめについて令和5年5月、事実上休止していた有識者委員会に代わり県が取りまとめを行うことを明らかにし、花角知事は13日の会見で取りまとめが終わったと発表しました。

それによりますと、今回の取りまとめでは「3つの検証」で提出された報告書の課題などを整理した結果、矛盾やそごはなかったとしています。

また、この中では柏崎刈羽原発の再稼働を巡る是非について言及していません。

花角知事は会見で「柏崎刈羽原発に関する議論を進めていく」と述べ、検証の取りまとめを今後の再稼働をめぐる議論の材料としていくとしていて、今後、議論が本格化していくことになります。

花角知事
これで県独自の検証は1つの区切りがついて今後は県として柏崎刈羽原発に関する議論を進めていくことになる。検証の総括については説明会などを開催し広く県民の皆さまに情報提供、共有をしていきたい。

再稼働を議論する中で、どのような意味が?

今回の取りまとめは柏崎刈羽原発の再稼働を議論する中で、どのような意味を持つのでしょうか。
NHK新潟放送局、阿部智己記者の解説です。

 

阿部記者
福島第一原発の事故を受けた県の独自の検証が大きな節目を迎えたということになります。
県は原発事故のあと、事故原因などを中心とした独自の検証を2012年から始めました。
この検証は2017年からは住民の避難や健康・生活への影響の検証を加えいわゆる「3つの検証」に発展しました。
長期にわたり検証が続いてきたわけですが、県は一貫してこの検証を柏崎刈羽原発の「再稼働の議論の前提」と位置づけてきました。このため今回の取りまとめで検証は区切りを迎え、今後、再稼働をめぐる議論が本格化する下地ができたということになります。


取りまとめられた報告書の内容は?

報告書では3つの委員会で取り上げた課題や教訓を整理した上で、関連性があるものについて
▼「情報伝達」▼「住民への周知・普及啓発」▼「安定ヨウ素剤」など大きく9つの項目ごとにまとめられています。その上で、指摘された課題を整理し対策を示す形でまとめられていて、こうした課題や指摘の間に矛盾やそごはなかったとしています。

県が取りまとめることに問題はなかった?

その点については紆余曲折がありました。当初は有識者からなる「検証総括委員会」が
「3つの検証」を総括し、取りまとめるとしていました。しかし当時の委員長の池内了 名古屋大学名誉教授と運営方針をめぐって折り合いがつかず、県がみずから取りまとめると方針を転換しました。池内前委員長は、県の取りまとめを受けてオンラインで会見を開き「福島事故の教訓を受けて柏崎刈羽にどう生かすかということを述べないと本当の検証にならない。それが後回しになっている」と指摘しました。

また原発が立地する柏崎市の桜井市長は「総括を巡る混乱も3つの検証に関する不審をさらに大きなものとし、極めて遺憾だった」などというコメントを発表しています。
県は、今後、県民に説明する場を設ける方針を示しているので、こうしたいきさつについても納得できる説明をすることが求められると思います。

今後の議論の見通しは?

再稼働に向けた議論を本格化する下地はできたと言えますが、すぐにこうした議論が進むということにはならない見込みです。その理由として柏崎刈羽原発ではテロ対策上の重大な不備が相次いで明らかになり、原子力規制委員会から事実上運転を禁止する命令を出されていることがあります。規制委員会は東京電力の改善状況を検査するとともに、原発を運転する資格があるのか「適格性」についても現地検査などを行って確認しています。

この点について花角知事は13日の会見で次のように述べました。

花角知事
当然、国の検査は行われている最中ですし、少なくとも技術的能力、的確に遂行するに足りる技術的能力があるのかということの再評価を求めていますので、その結果はやっぱりいただかないと結論には行かないと思います。

阿部記者
柏崎刈羽原発をめぐって当面は、規制委員会の検査と命令が解除されるかが焦点になります。
この結論が出て命令を解除すると判断された場合、再稼働の是非を問う県の議論が本格化することになります。県は規制委員会の検査結果などを含め説明会や公聴会などを開いて県民の意見を聞き、再稼働について県として判断する考えを示しています。いずれにせよ、まずは長い時間をかけた検証の内容を県民にしっかり伝え、県民が再稼働の是非について意見を持てる環境をしっかり作っていくことが求められると思います。

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