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『福田村事件』新潟市でも上映開始 監督が込めた思い

  • 2023年09月13日

ことしで関東大震災から100年です。関東大震災の直後、現在の千葉県野田市、当時の福田村では行商に訪れていた一行が地元の自警団から暴行を受け、9人が殺害された事件が起きました。この事件を題材にした映画『福田村事件』の上映が今月9日から新潟市の映画館でも始まりました。この映画の監督は、中学・高校時代を新潟県内で過ごした森達也さん。森監督や出演した俳優に映画に込めた思いなどを聞きました。(新潟放送局 記者 豊田光司)

新潟県内でも上映始まる

新潟市内の映画館で上映が始まった『福田村事件』。

映画の題材となったのは関東大震災の前後の現在の千葉県野田市、当時の福田村。香川県から訪れていた薬の行商の一行が、当時迫害を受けていた朝鮮人と疑われたことなどをきっかけに地元の自警団から暴行を受け、9人が殺害された事件です。デマに翻弄され、不安が高まっていく登場人物たちの姿から情報の持つ力や集団心理の危うさなどを描いています。

映画を見た人
「こんな事件があったことも知らなくて怖かった。状況によって人の心っていろんなふうに変わってしまうんだなと思って」

映画を見た人
「善良な人たちが情報に操作されて驚きました」

映画を見た人
「集団心理といいますか、現在のSNSにも通じるものがあって心に響きました」

森達也監督と木竜麻生さん

初回の上映のあと、会場では舞台あいさつが行われました。登壇したのは森達也監督と新発田市出身の俳優、木竜麻生さんです。この日はふだんよりも席数を増やして80人の観客がいました。
森監督は、今月1日の公開のあと、多くの反響があり驚いていると、率直な手応えを話しました。

森達也監督
「自分たちの負の歴史から目をそらす傾向がどんどん強くなってしまっている。それに対して何か違うぞと思っている人は僕が思っていたよりもたくさんいたんだなと」

映画に込めた思い

このあと、2人にさらに詳しく話を聞きました。森監督は、事件には今の時代にも通じる問題があり、これまであまり語られてこなかったこの事件や、その背景に目を向けてほしいと考えています。

森達也監督
「人は不安や恐怖を燃料にして集団になってまとまった時に1人じゃできない事をやってしまう。それがよい方向に行く場合もあるが、悪い方向に行った時にとてつもない残虐な事をしてしまう。それは歴史が証明しているしいくらでもあります。ところがそういう歴史から目を背けると成長できなくなると思う」

一方、木竜さんは映画のテーマのひとつである「情報の信ぴょう性」について話しました。
映画のなかで木竜さんが演じたのは新聞記者。差別をあおるような表現に書き直すよう上司から指示され、抵抗する場面があります。

事実を書きたいだけです。
朝鮮人にはいい人もいれば悪い人もいいます。それは日本人も同じです。

こちらは木竜さんのせりふです。この場面を通じて木竜さん自身も真実を見極めるには、多くの人と意見を交わすことが大切だと感じたといいます。

木竜麻生さん
「誰かと意見を交わすこと、そういう事からでいいので難しいと頭でっかちになるのではなく、できる事からでいいから人と交わっていくこと、閉鎖的になりすぎないことを考えました」

最後に森監督にこの映画で伝えたいことを聞きました。

森達也監督
「100年前の事件ですけど、絶対に今につながっているはずです。おそらく見てもらえれば納得してもらえると思う。現代劇を見るつもりで見てもらえればいい」

  • 豊田光司

    新潟放送局 記者

    豊田光司

    2017年入局。大阪局を経て2020年から新潟局に。文化などを担当。私も映画を見ましたが、そこには悲劇が描かれていました。そこから目を背けてはいけないという監督のことばが、今回の取材で心に響きました。

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