新潟 佐渡 「黒いダイヤ」に異変
- 2023年09月12日
東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水の放出が始まり中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことを受け、佐渡市のナマコ養殖業者では影響が深刻化しています。現場を取材しました。(新潟放送局 大山文兄、豊田光司)
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佐渡の「黒いダイヤ」 期待高まったやさきに
福島第一原子力発電所にたまる処理水の海洋放出が始まったことを受け、
中国は日本産の水産物の輸入を全面的に停止する措置をとっています。
県内の水産物の輸出への影響も深刻になっています。
こちらは佐渡市でおよそ2億匹のナマコを養殖する「浦島三和」です。
この会社ではナマコの卵を人工的にふ化させるプロジェクトを続け、2022年、中国の技術者と連携して養殖にこぎつけました。地元の漁業関係者によれば、これまでは北海道から稚ナマコを運んでいたため輸送コストがかさんでいたということで、佐渡での養殖開始に期待が高まっていました。
ナマコは「黒いダイヤ」とも呼ばれ、とりわけ乾燥させたものが中国で人気の食材ですが、
いまこの会社では養殖するほぼすべてを輸出していた中国と全く取り引きができない状態が
続いています。
須藤由彦社長
痛手です。売り先がないと商売しても佐渡で生産しても意味がない。
事態打開の糸口探るも
会社では技術者を招いたり、設備を増やしたりして養殖量の拡大や品質の向上などに取り組んできましたが、先行きが見通せないなかで人件費や光熱費などコストがかさむことから事業規模縮小の判断をせざるを得ませんでした。
取材に訪れた時、敷地内には水が張られていないいけすが並んでいました。
いけすを前に須藤さんは沈痛な面持ちで語りました。
須藤由彦社長
水を張っていくとエサやって掃除してと仕事が増えるので意味がまったくない。
止まっているではなく止めないといけないという状況。
「ダイヤの原石」 卵や稚ナマコの間引きも
こうしたなか、いままで大切に世話をしてきた卵や人工授精させた稚ナマコも減らさざるをえない状況になっています。
ここまで育てた「ダイヤの原石」をみずから間引かざるを得ない状況に、須藤さんは胸を痛めています。
須藤由彦社長
断腸の思いですよ、なかなか大変な生き物で水温管理からエサまで全部やっていますが処分していくのはもったいないことです。
須藤由彦社長
今までナマコを『高く買ってくれ』とか『量を買ってくれ』とかなんとかできていたが今回みたいに禁輸になるとできなくて、路頭に迷うとはこのことかなと思う。今後1週間、2週間後にどうなっているかなかなか分からない。慎重に考えていかないといけないと思っている。
中国が輸入停止の措置を転換するのはいつになるのか。
見通しが立ちづらいなか、この会社では新たなビジネスとして今後、
国内で人気のあるアワビの養殖ができないか模索していくということです。